ザ・フーのシングル盤シリーズ、これまでに10回採り上げてきたが、 あと少し持っている。
ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。
5.15
UK盤(1973年)
Track Record
2094 115
SideA:2994 115 A//1 13 1
SideB:2094 115 B▽*2 13 2
A. 5.15
B. Water
1973年アルバム「四重人格(Quadrophenia)」からのシングルカット"5:15 (5時15分)"。
アルバムのリリースが、米国は10月27日、英国は11月2日なのに対して、このシングル盤は英国で10月5日にリリースされている。いわゆる先行シングルというやつだ。
英国と欧州各国でリリースされているが、米国ではリリースされていない。
英国シングルチャート20位とまずまずのヒット。
「四重人格」は「トミー」に続くロック・オペラで、1960年代中期のロンドンとブライトンを舞台に解離性同一症(かつては多重人格障害と呼ばれた)に悩むモッズ青年ジミーの心の葛藤を描いたもの。
歌詞は四人の人格を持つジミーの独白というかたちを取っている。
なお、このアルバムを原作として作られた映画が「さらば青春の光(Quadrophenia)」。
で、"5:15 (5時15分)"はピアノとブラスも入っている勢いのあるロック・ナンバー。
ピアノはスタジオ・ミュージシャンのChris Stainton、ブラスはジョンによる演奏で、曲に厚みをもたらしている。
歌の内容はこのようなものだ。
思い通りに行かないことばかりの中、愛用のスクーターを壊してしまったジミーは早朝5時15分の列車に乗る。
ロンドンからブライトンに向かう列車の中でドラッグをやって正気を失い、頭の中を駆け巡る様々な情景や思いが支離滅裂に歌われる。
Out of my brain on the five fifteen
Out of my brain on a train
そしてB面は1970年頃から既にライヴでも演奏されていた"Water"。
アルバム「フーズ・ネクスト」セッション時(「ライフハウス」セッション時)に録音されたものらしい。
グリン・ジョンズが共同プロデューサーとして名を連ねていることからもそれが分かる(Associate Producer : Glyn Johns とセンターレーベルにある)。
ブルース・ロックといった趣きの曲で、ロジャーのボーカルが完全に主役を張っている。
さてこのシングル盤、またしてもステレオとモノラルが片面ずつ収められている。
しかもA面"5:15 (5時15分)"がモノラル、B面"Water"がステレオと来た。
1973年にモノラル、しかもA面をモノラルにするのか?と軽く驚いた。
アルバムに先行してリリースするに際してモノラルでのミックスダウンしか出来ていなかった(ステレオでのミックスダウンが間に合わなかった)のだろうか?
それともステレオミックスをわざわざモノラル化したのだろうか?(アルバム「イエロー・サブマリン」の様に)
それでは音はどうか言うと、ステレオのB面"Water"は「おっ!」と思うほど音が新鮮で響きが良い。
CDで聴いていた時は正直なところ少々退屈に感じていたこの曲が、かなり良い曲に聴こえてくる(良い音だと、時折この様なことが起こる)。
そして肝心のモノラルのA面"5:15 (5時15分)"についてだが、こいつが「うーん?」。
何だか音がもっさりしている?
改めてクリーニングしても、相変わらずもっさりしている?
横着してステレオ針のままだからダメなのか?と、モノラル針に切り替えても、やっぱりもっさりしている?
何というか、音に覇気がないのだ。
マスタリングがイマイチだったのだろうか?
ということで、A面"5:15 (5時15分)"は少々残念な音だったが、B面"Water"はアルバム未収録だし、音も良いので、まあ良しとしよう。
1段目左から:イタリア盤、ドイツ盤、オランダ盤
2段目左から:ベルギー盤、ポルトガル盤、フランス盤
欧州盤の中にはA面"5:15 (5時15分)"もステレオのものがありそうである…
5時15分は「5:15」と表記するのが普通だと思っていたが、欧州では「5.15」がスタンダードなのか…