レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Doctor Jimmy / The Real Me / The Who【フランス盤】

ザ・フーシングル盤シリーズ、いよいよ最後に近づいてきた。

 

ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。

 

 

The Who

Doctor Jimmy / The Real Me

フランス盤(1974年)

Track Record

2094 118

Side1:B TRC POL 2094118 1 CIDIS

Side2:B TRC POL 2094118 2 CIDIS


f:id:Custerdome:20240505190029j:image

f:id:Custerdome:20240505190031j:image

f:id:Custerdome:20240505190045j:image

f:id:Custerdome:20240505190048j:image

A. Doctor Jimmy

B. The Real Me

 

 

1973年アルバム「四重人格Quadrophenia)」からのシングルカット"ドクター・ジミーリアル・ミー"のフランス盤。

 

 

英国ではこれらの曲はシングルになっていない。

一方、 Discogsによると米国などでは以下のカップリングでリリースされている。

米国、カナダ:A面"リアル・ミー"、B面"ぼくは一人(I'm One)"

ベルギー、オランダ:A面"リアル・ミー"、B面"ドクター・ジミー"

日本:A面"リアル・ミー"、B面"ウォーター(Water)"

 

 

さてフランスではどうなっているかと言うと、A面B面が入れ替わった両方のパターンでリリースされている。

 A面"リアル・ミー"、B面"ドクター・ジミー"

 A面"ドクター・ジミー"、B面"リアル・ミー"

 

 

何故このようなことになったのだろう?

 

私の手元にある盤は、A面"ドクター・ジミー"、B面"リアル・ミー"。

"ドクター・ジミー"がステレオ、"リアル・ミー"がモノラル(←またしてもこのパターン)

 

おそらく、以下の様な経緯だったのではないだろうか?

 

ポリドール・フランス(フランスでの販売会社)の工場でステレオの"ドクター・ジミー"がA面なのだろうと勘違いしてレコードを作ってしまった。

間違いに気付き、モノラルの"リアル・ミー"をA面にし直したが、〈A面"ドクター・ジミー"バージョン〉は既に市場に出てしまっていた。

 

如何でしょう?

 

ということで、〈A面"ドクター・ジミー"バージョン〉は初盤と言うことも出来るし、一種のエラー盤であるとも言えるだろう。

 

 

さて曲の内容だが、それぞれこのような感じだ。

 

"ドクター・ジミー"は、凶暴な人格が現れた時と"Is it me(これは自分なのか?)"と冷静になっている時と入り混じった状態のジミーを描いた歌。

 

"リアル・ミー"は、精神科医に対して"Can you see the real me?(本当の俺が分かるか?)"と訴えるジミーを描いた歌。

 

両曲ともピートの作った曲の中でもレベルの高い曲であり、特に"リアル・ミー"はその疾走感と爆発力からザ・フーの中でも五本の指に入るカッコ良さだ。

 

 

では、この盤の音はどうなのか?

 

"ドクター・ジミー"はと言うと、海辺での嵐の音、シンセサイザー、ブラスが入り、激しさと静けさが入り混じる曲調なのだが、鮮度の高さが感じられるキレのある音で素晴らしいの一言。

 

"リアル・ミー"はと言うと、モノラル(ステレオ・ミックスからモノラル化したものと思われる)なのだが、これが凄まじく良い。鮮度の高い音がど真ん中からストレートに飛び出して来る。

 

ギザギザとエッジの効いたピートのギター、激しく動き回るドライブ感が凄いジョンのベース、全編フィルインの様に激しく叩かれるキースのドラム、ジミーの苦悩が迸る様なシャウトが凄いロジャーのボーカル。疾走感と爆発力が物凄い。

 

そして曲のエンディングは、アルバム(the real me, me, me, me...)とは違って、楽器の演奏途中でフェードアウトするのが面白い。

 

モノラルということで(前回記事の"5:15 (5時15分)"の例もあることだし)、さほど期待をしていなかったのだが、想像を超えて素晴らしい音だ。

 

 

f:id:Custerdome:20240512145412j:image

 

フランス独自のペーパースリーヴもなかなか粋。

 

 

ということで、このフランス・シングル盤は大当たり。

 

 

それにしても、この頃のレコードは各国で曲目が違ったり、独自カッティングだったり、モノラルだったり、ステレオだったり、ジャケットが違ったりとバラバラで面白い。

と言うか、そういうことが許された面白い時代だったな、と。

 

 

 


f:id:Custerdome:20240505222641j:image

f:id:Custerdome:20240505222639j:image

左:ベルギー盤(The Real Me と Doctor Jimmy のカップリング)

右:日本盤(The Real Me と Water のカップリング)

 

 

 

ザ・フーシングル盤シリーズ、いよいよ次回で最終回…