2022年11月に開始した「レコード評議会」だが、最初の頃の記事にこんなことを書いた。
中学生の頃から音楽を聴き始め、学生時代はクラシックとロックとを並行して聴き散らかしていた。
クラシック:ベルリオーズ、リスト、ワーグナー、マーラー、チャイコフスキー、ラヴェル、ストラヴィンスキー、ラフマニノフ、プロコフィエフ、ショスタコーヴィチ、レスピーギ、他
☝︎ これら作曲家の専らオーケストラものを聴いていた。
ロック:ビートルズ、ザ・フー、ストーンズ、クリムゾン、ツェッペリン、パープル、レインボー、ホワイトスネイク、インギー、スタカン、ブロモン、デュラン、スミス、トーキング・ヘッズ、プリンス、他
☝︎ 基本、英国ものを聴いていた。(一部例外を除き、当時は「米国はダサい」と言ってあまり聴かなかった。→その後改心して、今はよく聴いています。)
社会人になってからも、あれこれトライした。(中でもザッパ、特にジャズ・ロック路線は新鮮だった。現代音楽のような音使い、変拍子、時に超テクニカルな演奏。エキセントリックな音楽だが、妙にハマった。)
そう、フランク・ザッパに手を出して、ハマったのだ。
奇才、鬼才、偉才、異才、俊才、天才
奇抜、変態、偉大、異彩、異能、異端
奇人、変人、偉人、怪人、狂人、超人
奇妙、独創、猥雑、雑多、諧謔、反骨
様々な言葉で言い表すことが出来るザッパ。
(「奇」「異」が多いな…)
ザッパの作る音楽は一般的にはロックに分類されているが、中にはジャズ、フュージョン、クラシック、現代音楽、アバンギャルドに分類される様な作品も多い。
また、シリアスで高尚な作品もあれば、コミカルで低俗な作品もある。
様々な要素がごった煮状態、闇鍋状態の作品もある。
要は何でもありなのだ。
ChatGPTに訊くと、この様に説明される。
フランク・ザッパ(Frank Zappa, 1940年12月21日 - 1993年12月4日)はアメリカの音楽家、作曲家、ギタリスト、バンドリーダー、プロデューサーです。彼は多岐にわたる音楽スタイルと風刺的な歌詞で知られています。ザッパは生涯に渡って60以上のアルバムを制作し、その音楽はロック、ジャズ、クラシック、アバンギャルドなど幅広いジャンルに及びました。
初期の経歴
ザッパはカリフォルニア州ボルティモアで生まれ、幼少期をカリフォルニアとフロリダで過ごしました。若い頃から音楽に興味を持ち、特にエドガー・ヴァレーズやイーゴリ・ストラヴィンスキーのような現代音楽の作曲家に影響を受けました。ティーンエイジャーの頃にはブルースやドゥーワップのバンドで活動していました。
The Mothers of Invention
1960年代半ばに結成した「ザ・マザーズ・オブ・インヴェンション(The Mothers of Invention)」での活動によりザッパは一躍注目を集めました。1966年のデビューアルバム『Freak Out!』は当時のロックシーンに大きな衝撃を与えました。このアルバムは実験的な音楽と社会風刺の歌詞が融合した作品で、後のアヴァンギャルドロックに大きな影響を与えました。
ソロ活動とプロデュース活動
ザッパはソロ活動でも多くのアルバムを発表し、その中には「Hot Rats」や「Apostrophe (')」などが含まれます。また、他のアーティストのプロデュースも手掛けており、キャプテン・ビーフハートの「Trout Mask Replica」などが有名です。
音楽スタイルと影響
ザッパの音楽は複雑なリズム構造、変拍子、ポリリズム、そして変則的なメロディラインなどが特徴です。彼はしばしば社会風刺や政治的なテーマを取り上げ、その歌詞にはユーモアと批判が織り交ぜられています。彼の影響を受けたアーティストやバンドは多岐にわたり、プログレッシブロックや実験音楽の分野で特に顕著です。
晩年と死
ザッパは1990年代初頭に前立腺がんと診断され、1993年に52歳で亡くなりました。彼の死後も、彼の音楽とその影響は多くの音楽ファンやミュージシャンに受け継がれ続けています。
そんなザッパなのだが、私が最初に聴いて「これは!」と思ったのが、1969年のソロ名義アルバム「ホット・ラッツ:Hot Rats」だ。
本国のアメリカよりもイギリスで高く評価され、全英9位の大ヒット。メロディ・メーカー(イギリスの音楽専門新聞)の人気投票でアルバム・オブ・ザ・イヤーに選出されている。
1969年と言えば「アビイ・ロード」「レット・イット・ブリード」「トミー」「クリムゾン・キングの宮殿」「レッド・ツェッペリンⅠ」「レッド・ツェッペリンⅡ」といった錚々たるアルバムが並ぶ中でのアルバム・オブ・ザ・イヤー選出であり、その評価の高さが伺える。
全6曲中、ボーカル入りは1曲のみで、それ以外は即興演奏を重視したインスト。
ザッパ(ギター、パーカッション)とイアン・アンダーウッド(Ian Underwood:キーボード、フルート、クラリネット、サックス)は全曲で参加しているが、曲によって参加ミュージシャンは様々だ。
キャプテン・ビーフハート(Captain Beefheart):ボーカルーA2
ロン・セリコ(Ron Selico):ドラムーA1
ジョン・ゲラン(John Guerin):ドラムーA2, B1,3
ポール・ハンフリー(Paul Humphrey):ドラムーA3, B2
シュギー・オーティス(Shuggie Otis):ベースーA1
マックス・ベネット(Max Bennett):ベースーA2,3, B1,2,3
シュガーケイン・ハリス(Sugarcane Harris):バイオリンーA2, B2
ジャン・リュック・ポンティ(Jean-Luc Ponty):バイオリンーB3
ジョン・ゲラン、ポール・ハンフリー、マックス・ベネットといった畑違いの人達も参加しているのが驚きだ。
クレジットされていないが、後にリトル・フィート(Little Feat)を立ち上げるローウェル・ジョージ(Lowell George)もリズムギターで参加しているらしい。
各曲を簡単に説明すると、以下の通り。
A1. Peaches En Regalia
ジャズ・ロック。
分かりやすいメロディと複雑でメカニカルなメロディが目紛しく展開する。
無国籍風?東洋風?中国風?なメロディも顔を出す。
イアン・アンダーウッドのキーボード、フルート、クラリネット、サックスが活躍するカラフルなアレンジが素晴らしい。
屈指の名曲。
A2. Willie The Pimp
ブルース・ロック。
シュガーケイン・ハリスのバイオリンによるリフに乗って、 キャプテン・ビーフハートがダミ声で"ポン引きウィーリー"を歌う。
中間部でのザッパによるうねうねとした長尺ギターソロが秀逸。
A3. Son Of Mr. Green Genes
ジャズ・ロック。
1968年アルバム「アンクル・ミート:Uncle Meat」に収録の"Mr. Green Genes"をインスト化した曲。テンポも上げてある。
イアン・アンダーウッドのサックスなどが活躍するアレンジ、ポール・ハンフリーの多彩なドラム、ザッパの長尺ギターソロが素晴らしい。
B1. Little Umbrellas
現代音楽風プログレ。
不気味な雰囲気のメロディで、現代音楽とロックとジャズを足して3で割った様な音楽。
B2. The Gumbo Variations
ジャズ・ロック。
イアン・アンダーウッドのサックス、シュガーケイン・ハリスのバイオリン、ザッパのギターと長尺ソロが続く13分にも及ぶ大曲。
ポール・ハンフリーのファンキーなドラムが素晴らしい。
B3. It Must Be A Camel
フリージャズ風プログレ。
捉えどころの無いメロディと変拍子で、フリージャズとプログレッシブロックを足して2で割った様な音楽。
ということで、お気に入りのアルバム「ホット・ラッツ」、US盤、UK盤、ポルトガル盤と手元に3枚あるので、聴き比べをしてみた。
Hot Rats
US盤(1969年)
Bizarre Records / Reprise Records
RS 6356
Side1:RS-6356-A(30926)-1
Side2:RS-6356 -30927-2 F (RE-1)
A面:
A1はオーバーダブのためか、ややこもった印象があるが、パーカッションのキレは良い。
A2とA3はすっきり感のある音。
B面:
A面に比べて明らかに音圧が高く、音の鮮度も良い。
伸びやかで力強く、さすが本家US盤の音。
Hot Rats
UK盤(1969年)
Bizarre Records / Reprise Records
RS 6356
Side1:RSLP 6356 A1 ⊂⊃
Side2:RSLP 6356 B1 ⊂⊃
A面:
US盤に比べるとすっきり感のある音。
やや硬質な印象のUK盤だが、曲に合っており、US盤より高評価。
B面:
A面と同様の音。
但し、US盤の方が音圧や鮮度が高い。
Hot Rats
ポルトガル盤(1969年)
Bizarre Records / Reprise Records
REP 44078
Side1:68-15 RSLP 6356 A1 K 44078 A1 =
Side2:68-15 RSLP 6356 B1 K 44078-B1 [
デッドワックスの刻印からA面B面ともUKマザーと分かる。
なお、ジャケットは全てコーティングされている(US盤、UK盤はコーティングされていない)。
A面:
ポルトガルということでプレス枚数が少ないためか、UK盤と比べて響きが良い。
微妙なバックの音だったり倍音がより聴こえる。
B面:
ビニールの材質が良いためか、UK盤と比べて音圧が高く感じる。
US盤にも劣らない音圧で、音の存在感が素晴らしい。
という訳で、順位を付けると…
A面:①ポルトガル盤、②UK盤、③US盤
B面:①US盤、②ポルトガル盤、③UK盤
(ビートルズでも無いのに)こんな聴き比べをしてどうなんだ?と思わないでも無いが、やっぱりレコードの聴き比べは面白いな、と。
それにしても、このジャケットはインパクトがある。
ジャケットに写っている人物はクリスティーン・フルカ(通称はミス・クリスティーン)という女性で、ザッパのグルーピーでもあった女性グループThe GTOsのメンバー。
ハリウッド・ヒルズにある俳優エロール・フリンの別荘のスイミング・プールで赤外線カメラを使って撮られた写真なのだとか。
まるで墓場からゾンビが這い出て来たかの様だ。