「レコード評議会」の議題を選ぶに際しては、前回からの繋がりを心掛けている。
まあ、心掛けてはいるものの、そうならないことも多いが…
ということで、前回のトニーニョ・オルタからの流れで、ブラジルものにしようと思う。
夏でもあることだし…
Milton Nascimento
Milton
US盤(1976年)
A&M Records
SP-4611
Side1:A&M SP4959(RE-1)-M1 (MR) Δ 21925 Tene Ncut
Side2:A&M SP4960(RE-1)-M1 (MR) Δ 21925-X Tene Ncut
Side1
1. Raça (Hasa) - Race
2. Fairy Tale Song - Cadê
3. Francisco
4. Nothing Will Be As It Was - Nada Será Como Antes
5. Cravo E Canela - Clove And Cinnamon
Side2
1. The Call - Chamada
2. One Coin - Tostão
3. Saídas E Bandeiras - Exits And Flags
4. Os Povos - The People
ミルトン・ナシメントのセルフタイトル・アルバム。
彼の代表作とも言われるアルバムだ。
ミルトン・ナシメントはMPB(Música Popular Brasileira, エム・ペー・ベー)の代表的ミュージシャンで、ブラジル音楽を世界に広めた一人でもある。
彼の経歴を簡単に紹介すると…
1942年、リオデジャネイロで生まれ、幼い頃ミナス・ジェライス州に移住。
1966年、彼が作曲した"Canção do Sal (塩の歌) "がエリス・レジーナの歌で大ヒット。
1967年、ファースト・アルバム「Travessia」をCodil(インディー・レーベル)からリリース。
1969年、アルバム「Courage」をA&Mからリリースし、メジャー・デビュー。
1972年、ミナス・ジェライス州出身の同郷仲間、ロー・ボルジェスやトニーニョ・オルタ等とアルバム「Clube Da Esquina(街角クラブ)」をリリース。
1974年、ウェイン・ショーターのアルバム「Native Dancer」にフィーチャリング・ゲストとして参加。
1976年、アルバム「Milton」をリリース。
以降もコンスタントに作品をリリース。
1998年には、アルバム「Nascimento」でグラミー賞のワールドミュージック部門を獲得。
彼の作る曲、メロディも素晴らしいが、特別なのはファルセットも使ったその声。
透明感、浮遊感、躍動感を併せ持つその声から「ブラジルの声」とも呼ばれている。
で、このアルバム「ミルトン」なのだが、さすが代表作と言われるだけあって、素晴らしい内容だ。
アメリカのレコード・レーベルA&Mからのリリースであるためか、ポルトガル語以外に英語で歌われる曲もあるが、ミルトン・ナシメントの声であれば全てがブラジル色に染まってしまう。
透明感、浮遊感、躍動感を併せ持つその声がアルバムに満ち溢れている。
そして、その声を支える演奏も素晴らしい。
ブラジルからは前回記事で採り上げたトニーニョ・オルタやホベルチーニョ・シルヴァ(ドラム)等が参加。
アメリカからはハービー・ハンコック(ピアノ)とウェイン・ショーター(サックス)といったジャズ・ミュージシャンが参加している。
特にウェイン・ショーターは半分以上の曲で演奏しており、彼のソプラノ・サックスから流れ出る独特なメロディ・ラインはアルバムの中でも大きな存在感を放っている。
全ての曲が素晴らしいのだが、個人的に最も気に入っているのが"Saídas E Bandeiras - Exits And Flags"。
ブラジリアン・パーカッションに加えて、トロンボーンも入ったアレンジ、それに乗って奏でられるミルトン・ナシメントの声、ウェイン・ショーターのソプラノ・サックス。
ブラジルとジャズ、躍動と洗練が絶妙に混ざり合っていて、本当に素晴らしい音楽だ。
やっぱり夏にはブラジルものが似合う。
ということで、次回もブラジルものにしよう。