レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Native Dancer / Wayne Shorter【US盤】

前回の「レコード評議会」はミルトン・ナシメントの「ミルトン」だったのだが、そうなるとこれを採り上げない訳にはいかない。

 

 

Wayne Shorter Featuring Milton Nascimento

Native Dancer

US盤(1975年)

Columbia

PC 33418

Side1:PAL-33418-2A  Why

Side2:PAL-33418-2A  Why


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Side1

 1. Ponta De Areia  

 2. Beauty And The Beast

 3. Tarde

 4. Miracle Of The Fishes

Side2

 1. Diana

 2. From The Lonely Afternoons

 3. Ana Maria

 4. Lilia

 5. Joanna's Theme

 

 

ウェイン・ショーターの代表作で、傑作と名高い「ネイティブ・ダンサー」。

 

 

ウェイン・ショーターは、ハード・バップ、モード・ジャズ、クロスオーバー、フュージョン…と幅広いフィールドで、それぞれ超一流の活躍を見せた、非常に多才なミュージシャンだ。

 

1959年、アート・ブレイキージャズ・メッセンジャーズに参加。

1964年、マイルス・デイヴィスクインテットに参加。

両グループの活動と並行してソロでも活動。

 

1970年、ジョー・ザヴィヌル等とウェザー・リポートを結成(1986年まで活動)、ジャズ・フュージョン界を席巻。

その後もソロ、他のミュージシャンとの共演など幅広く活動ジョニ・ミッチェルローリング・ストーンズなど、ロック系との共演も行っており、中でもスティーリー・ダンの「Aja」でのプレイは名演と評価が高い)

 

 

そんなウェイン・ショーターウェザー・リポート活動中に(「Mysterious Traveller」と「Tale Spinnin'」の間)ミルトン・ナシメントをフィーチャリング・ゲストに迎えて制作し、1975年にリリースしたソロ・アルバムが「ネイティブ・ダンサー」だ。

 

 

Side1の1, 3, 4、Side2の2, 4はミルトン・ナシメントによる曲で、彼のボイスも入っている。

透明感浮遊感躍動感を併せ持つ「ブラジルの声」が相変わらず素晴らしい。

 

そしてウェイン・ショーターのサックス(テナーとソプラノ)

どこに向かうのか分からない独特なメロディで、浮遊感というか、飛翔感というか、不思議感のあるメロディなのだが、これが素晴らしい。

掴みどころのないメロディ・ラインに、 最初に聴いた時はその良さが分からなかったが、気付くとクセになっていた。

 

他のメンバーについては、ブラジルからはワグネル・チゾ(ピアノ)ホベルチーニョ・シルヴァ(ドラム)アイアート・モレイラ(パーカッション)等が参加。

アメリカからはハービー・ハンコック(ピアノ)ジェイ・グレイドン(ギター)等が参加している。

 

 

ミルトン・ナシメントの曲とボイス、ウェイン・ショーターのサックス、参加メンバーも重なっており、「ミルトン」とは兄弟・姉妹の様なアルバムだ。

ネイティブ・ダンサー」(1975年、Columbia)が素晴らしかったことから「ミルトン」(1976年、A&M)が制作されたのだろう。

 

ウェイン・ショーターミルトン・ナシメントが共演している曲は「ネイティブ・ダンサー」と「ミルトン」を入れ替えてもさほどの違和感は無いだろう。

 

だが、やはりリーダーが違えば、当然ながら色合い・風合いは微妙に違っており、「ミルトン」の方がブラジル色が強く、「ネイティブ・ダンサー」の方がジャズ・フュージョン色が強い。

言い換えれば、「ミルトン」は洗練されていつつもブラジルならではの土着性を強く感じる一方で、「ネイティブ・ダンサー」はジャズ寄りでより洗練された印象を受ける。

 

また、両者が共演していない曲は色合い・風合いが相通ずるものもあるが、当然のことながらその違いがはっきりしているものもある。

 

重なるところもあるが、重ならないところもある訳で、レコード屋の棚で「ネイティブ・ダンサー」と「ミルトン」がブラジルのコーナーに並んで置いてあっても違和感は無いが、ジャズ・フュージョンのコーナーに並んでいたら違和感を感じるだろう。

まあ、そんな感じだ。

 

 

と、まとまり無くあれやこれや書いたが、要するに言いたいことは「ネイティブ・ダンサー」も「ミルトン」もブラジルジャズ躍動洗練が絶妙に混ざり合っていて、本当に素晴らしい音楽だ、ということ。

 

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夏に似合う音楽でもあるので、未聴の方は一度聴いてみては如何でしょう?

 

 

最後に、そもそもウェイン・ショーターミルトン・ナシメントが何故出会ったのか、について…

 

ウェイン・ショーターの妻はブラジル人で、予ねてからミルトン・ナシメントに会うことを勧めていたという。

そんな折、1972年にウェザー・リポートがブラジルで公演を行うこととなり、2人は出会う。

そして1975年に「ネイティブ・ダンサー」をリリースするに至った。

 

この2人が出会うきっかけを作ったウェイン・ショーターの妻の名はアナ・マリアAna Maria

アルバムSide2の3曲目にその名をタイトルとした曲が収録されている。