レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Daquilo Que Eu Sei / Ivan Lins【ポルトガル盤】

イヴァン・リンスが続いているが、聴くほどにその素晴らしい音楽に魅了されてしまう。

 

 

音楽の3要素は、メロディ、ハーモニー、リズムだが、私はハーモニーとリズムに意識を向けて聴いていることが多い。

例えば、 音の響きが素晴らしいな、音の重ね方が面白いな、楽器の使い方が上手いな、ノリが良いな、アーティキュレーションが絶妙だな、などと思いながら(感じながら)聴いている。

 

そして、演奏するミュージシャンの特性、そのミュージシャンならではの音に焦点を当てて聴いていることも多い。

例えば、ジョン・レノンならではのボーカル、キース・ムーンならではのドラム、チャック・レイニーならではのベース、ウェス・モンゴメリーならではのギター、など…

 

 

なのだが、イヴァン・リンスの曲については、メロディに耳が行く。

もちろん音楽はメロディだけで成立する訳では無く、ハーモニー、リズムとも一体不可分なのだが、とにかくメロディの素晴らしさに耳が行ってしまう。

 

そして、その素晴らしさはイヴァン・リンスのボーカルで無くても、他のミュージシャンがカバーした曲でも感じることが出来る。言い換えれば、演奏するミュージシャンの特性がどうであれ、その素晴らしさを感じることが出来る。

 

つまり、曲そのもの、メロディそのものが素晴らしいということだ。

 

稀代のメロディメイカ天性のメロディメイカと言われるが、彼のメロディは本当に天からの授かりものだと思う。

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」もイヴァン・リンス

 

 

Ivan Lins

Daquilo Que Eu Sei

ポルトガル盤(1981年)

Philips

6328 341

SideA:6328341A  AFS  "Philips"

SideB:6328341B  AFS  "Philips"


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SideA

 1. Daquilo Que Eu Sei

 2. Lua Cirandeira

 3. Ave

 4. Lembrança

 5. Brás De Pina

SideB

 1. Amor

 2. Dá Licença

 3. Quem Me Dera

 4. Canavial

 5. O Pano De Fundo

 

 

イヴァン・リンスの「Daquilo Que Eu Sei」。

 

EMIからPhilipsに移籍後、最初のアルバムだ。

 

前作「Novo Tempo」と同じく、ヴィトル・マルティンスが作詞、ジルソン・ペランゼッタがキーボード、アレンジ、プロデューサーを担っている。

 

このアルバムも1981年当時、ブラジルとポルトガルでしかリリースされていない。

しかもDiscogsを見る限り、CD化はブラジルのみ、それ以外の国ではされていないようだ。

 

 

そんなアルバムなのだが、手元にあるこの盤はブラジル盤では無く、ポルトガル盤だ。

 

 

イヴァン・リンスの音楽がどの様に聴かれてきたのかについては、 ブラジルにおいては軍事独裁政権から民主化に向かう文脈の中で捉えることが出来るだろう(詳しくは前回までの記事をご覧ください)

 

だが、ポルトガルにおいては政治的な背景まで踏まえて聴かれていたとは考え難い。おそらく純粋に音楽としてのみ聴かれていたのではないか、と思われる。

 

 

ということで、歌詞の背景などを抜きに、純粋に音楽のみで聴いて気に入った曲を簡単に紹介しておくと…

 

 

A1. Daquilo Que Eu Sei - From What I Know

イヴァン・リンスの中でも十指に入る美しいメロディ。

アルバムのタイトル・ナンバーとするだけあって、自信作なのだろう。

アレンジも素晴らしく、アコーディオンの音色と相まってサウダージ感が溢れる名曲。

 

A2. Lua Cirandeira - Cirandeira Moon

シランデイラとはアマゾンの熱帯雨林にある町なので、そこから見た月を歌った曲?

タイトルからしっとりとした曲かと思いきや、楽しげで陽気なサンバ調の曲。

イヴァン・リンスはやっぱりブラジル人なのだな、と。

 

A4. Lembrança - Memory

この曲も十指に入る美しいメロディ。

静謐なエレピの音に美しいボーカルが乗る。ソプラノサックスが重なる。最後にベースとドラムが重なる。

夜のしじまを感じさせる名曲中の名曲。

イヴァン・リンスとともにジルソン・ペランゼッタも作曲に関わっている。

 

この曲は"Love Dance"というタイトルの英語バージョンもあるが、ジャズ系のミュージシャンにカバーされていることもあり、こちらの方が有名だ。

イヴァン・リンス自身も1989年にアメリカ向けにリリースしたアルバム「Love Dance」でセルフカバーしている。

 

カバー等:

▶︎ ジョージ・ベンソンが「Give Me the Night」(1980年)でカバー。

▶︎ サラ・ヴォーンが「Crazy and Mixed Up:枯葉」(1982年)でカバー。

▶︎ ヴァネッサ・ウィリアムスが「A Love Affair:The Music Of Ivan Lins」(2000年、ジェイソン・マイルスがプロデュースのイヴァン・リンス作品集)でカバー。

 

A5. Brás De Pina

ブラース・デ・ピナとはリオデジャネイロ市のノースゾーンにある地区

最初と最後はボイスが入っているが、曲の中間部分はインストで、アメリカのウェストコーストっぽいフュージョン

 

B1. Amor - Love

懐かしい様な、切ない様な、甘酸っぱい様なメロディ。

後半は妻のルシーニャ・リンス(Lucia Lins)がボーカルを取っている。

 

B3. Quem Me Dera - I Wish

前半は優しいメロディの美しい曲。

途中からはブレッカー・ブラザーズっぽいブラスが入ったファンキーな曲。

クレジットにランディとマイケルを探してしまったが、参加していなかった。

 

B5. O Pano De Fundo - Background

ラスカルズの代表曲"Groovin'(グルーヴィン)"のブラジル版と言うか、ボッサ・バージョンといった感じのチルナンバー。

 

 

こうしてみると、色々なタイプの曲が並び、バラエティに富んだアルバムだ。

また、エレピやシンセの使用が目立ち、ところどころで80年代っぽい音がする。

 

EMI時代に比べて肩の力が抜けた感じで、全体的に明るいイメージのアルバムとなっている。

 

 

ところで、このジャケットのデザインだが、Philips移籍に合わせてイメージ・チェンジを図ったのか、今までと随分違ったものとなっている。

 


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今まではブラジル軍事独裁政権の下、抵抗する姿勢を内に秘めた様な、緊張感のあるデザインだったと思う。

 

ところが、本アルバムは随分と肩の力が抜けている。

 

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と言うか、手抜きとまでは言わないが、もう少し何とかならなかったのか?という気もする…

 

そんなジャケットのせいなのか、一般的にこのアルバムは存在感が薄いようだ。

 

だが、EMI時代に劣らず、美しいメロディ、名曲が収録された、 もっと評価されて然るべき素晴らしいアルバムだと思う。

 

ジャケットが良ければ、もっと評価されたのでは?と思う…

 

 

 

(おまけ)

アルバムのジャケットやインナースリーヴを見ていて気が付いたのだが、イヴァン・リンスヤマハのピアノを使ってた。

 

「A Noite」のインナースリーヴより

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「Novo Tempo」のジャケットより
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「Daquilo Que Eu Sei」のインナースリーヴより
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電子ピアノのことなのだろうか?

いずれにしても、YAMAHAという特定のブランド名が明記されているところが面白いな、と。

それほどに気に入っていたのかな?