2024年11月9日、ルー・ドナルドソンが亡くなった。享年98歳。
新聞にはこの様に載っていた。
ルー・ドナルドソンさん(米ジャズサックス奏者)公式ホームページによると、9日に死去、98歳。
50年代から活躍し、ビバップからハードバップ、ソウルジャズなどへと音楽の幅を広げた。ジャズの名門レーベル「ブルーノート」から、「ブルース・ウォーク」などの名盤をリリース。リーダーアルバムの「アリゲイター・ブーガルー」(67年)が大ヒットした。
ということで、今回の「レコード評議会」は…
Alligator Bogaloo
US盤(1967年)
Blue Note
BST 84263
SideA:BLUENOTE BNST 84263•A• VAN GELDER
SideB:BLUENOTE BNST 84263•B• VAN GELDER
SideA
1. Alligator Bogaloo
2. One Cylinder
3. The Thang
SideB
1. Aw Shucks!
2. Rev. Moses
3. I Want A Little Girl
1967年4月7日に録音、同年8月にブルーノート・レコード(Blue Note Records)からリリースされたアルバムで、表題曲"Alligator Bogaloo"はシングル・カットもされている。
ジャズとしては、シングル、アルバムともに大ヒットとなった。
ビルボード紙の1ページを飾ってもいる。
ブルーノートは、アルフレッド・ライオン(Alfred Lion)が1939年に立ち上げたレコード・レーベルで、プレスティッジ(Prestige)、リバーサイド(Riverside)と並びジャズ3大レーベルと呼ばれる名門レーベル。
で、ブルーノートと言えば…
録音技師はルディ・ヴァン・ゲルダー。
"Recording by Rudy Van Gelder"とジャケット裏面にクレジットされている。
カッティングも同じくルディ・ヴァン・ゲルダー。
"VAN GELDER"とデッドワックスに刻印がある。
ジャケット・デザインはリード・マイルス。
"Cover Photo & Design by Reid Miles" ジャケット裏面にクレジットされている。
なお、ジャケットの写真はペギー・モフィット(Peggy Moffitt)。
1960年代に活躍したファッション・デザイナー、ルディ・ガーンライヒ(Rudi Gernreich)のミューズとも言われる有名なモデル、女優だ。
ブルーノートのジャケットはジャズ・ミュージシャンの写真が多く、この様なデザインは珍しい。
また、表題曲"Alligator Bogaloo"にあるブーガルーとは「1965年から1970年ごろにかけて主にニューヨークで流行したラテン音楽の一種。リズム・アンド・ブルース、ソウルなどの米国のブラック・ミュージックと、キューバ~カリブ系のラテン音楽が混合されたサウンドが特徴である」(Wikipediaより)。
ジャケットにしても、曲のタイトルにしても、流行を採り入れ、ジャズ・ファン向けのみならず、マーケットに広く訴求しようという意図があったのだろう。
演奏者は…
Lou Donaldson:ルー・ドナルドソン ー Alto Sax
もともとハード・バップ系のアルト・サックス奏者(アート・ブレイキーの「バードランドの夜」にも参加)。時代とともにソウル・ジャズ系として活躍。ブルーノートの顔の一人。
Melvin Lastie, Sr.:メルヴィン・ラスティー ー Cornet
ソウル・R&B系のトランペット・コルネット奏者(アレサ・フランクリンのアルバムにも参加)。
George Benson:ジョージ・ベンソン – Guitar
もともとはソウル・ジャズ系のジャズ・ギタリスト。1970年代後半にフュージョン系に転向(1976年「ブリージン」が大ヒット)。
Lonnie Smith:ロニー・スミス – Organ
ソウル・ジャズ系のハモンド・オルガン奏者。ドクター・ロニー・スミス(Dr. Lonnie Smith)とも呼ばれる。1970年代半ばから頭にターバンを巻いていた。
Leo Morris:レオ・モリス – Drums
後にイドリス・ムハンマド(Idris Muhammad)と改名するジャズ・ドラマー。ストレート・アヘッドなものからソウル・ジャズ系、レア・グルーヴ系まで幅広く活躍。
で、内容はと言うと…
この顔触れ通りのソウル・ジャズ。
ミディアム・テンポで粘るリズムの曲が多く、黒くグルーヴィーな演奏だ。
このアルバムは、音使いが斬新、アドリブが凄い、ジャズの革新に寄与した、そういったものでは無い。
だが、グルーヴが気持ち良く、楽しく聴けるアルバムとして、ジャズの裾野を拡げたアルバムであることには違い無い。
ルー・ドナルドソンの代表作として、今でもジャズ本でよく紹介される一枚だ。
ところで、ルー・ドナルドソンには個人的に思い出がある。
1995年11月に新婚旅行でニューヨークに行った際、グリニッジ・ヴィレッジの道端にルー・ドナルドソンがいた。中折れ帽とコートに身を包み、楽器ケースを片手に一人で歩いていた。
あまりにも普通に歩いていたので、本当にルー・ドナルドソンなのか?と疑ったが、その後見に行ったヴィレッジ・ヴァンガード(Village Vanguard)でのライヴにその人は出演していた。
出演していたバンドのメンバーにはロニー・スミスもいた。
ライヴでのルー・ドナルドソンは飄々としていた。
決して満員とは言えない客の入りではあったが、盛り上がる曲では盛り上がり、しっとりとする曲ではしっとりと、自分の演奏を全うしていた。
とても楽しい演奏だった。
観客は皆、満足していた。
素晴らしいライヴだった。