2024年11月17日、リー・リトナー&デイヴ・グルーシンによる、イヴァン・リンスをフィーチャーしたライヴを観にミューザ川崎に行ってきた。
with Brasilian Friends featuring Ivan Lins
ライヴの前半は、リー・リトナーのギター、デイヴ・グルーシンのピアノの他、ベースとドラムを加えた4名による演奏。
そして後半は、イヴァン・リンスも加わった総勢9名による演奏。
リー・リトナー(72歳)もデイヴ・グルーシン(90歳)も足元が少々おぼつかない感じだったが、彼らが奏でるギターやピアノは年齢を感じさせること無く、素晴らしいものだった。
そして何よりもイヴァン・リンス(79歳)。
ライヴの途中、ステージ右側から登場し、以下の3曲を歌った。
Love Dance
Vitoriosa
Harlequin (Arlequim Desconhecido)
79歳ということで、さすがに全盛期の力強さには及ばないもの、変わらぬ甘く美しい声で、本当に素晴らしいものだった。
イヴァン・リンスの歌が3曲だけだったのは正直物足りなかったが、一方でこの3曲だけでも来た甲斐があった。
"Vitoriosa"と"Harlequin (Arlequim Desconhecido)"は予想していたが、"Love Dance"は嬉しい想定外でした。
ということで、今回の「レコード評議会」は…
With Special Guest Ivan Lins
Harlequin
US盤(1985年)
GRP-A-1015 R-154203
SideA:R-154203A-1 1 ΛΙ Β
SideB:R-154203B-1 1 ΛΙ ε
Side A
1. Harlequin (Arlequim Desconhecido)
2. Early A.M. Attitude
3. San Ysidro
4. Before It´s Too Late (Antes Que Seja Tarde)
SideB
1. Cats Of Rio
2. Grid-Lock
3. Silent Message
4. The Bird
イヴァン・リンスをゲストに迎えた、デイヴ・グルーシンとリー・リトナーによる1985年のアルバム「ハーレクイン」。
イヴァン・リンスが2曲で歌っている。
A1. Harlequin (Arlequim Desconhecido)
ライヴでも歌われていた曲。
1980年アルバム「Novo Tempo (ノーヴォ・テンポ)」が初出で、邦題は"名もなき道化役者"。
A4. Before It´s Too Late (Antes Que Seja Tarde)
1979年アルバム「A Noite (ア・ノイチ):ある夜」が初出で、邦題は"今を生きよう"。
いずれの曲も初出バージョンに比べてフュージョン色が強くなっているが、以前に以下の記事に書いた通り、イヴァン・リンスの曲はアレンジを変えてもやっぱり良いものは良い。
セルフカバー、他のミュージシャンによるカバーを問わず、カバー曲が原曲を超える場合は少ない。と言うか、カバー曲はイマイチだなぁ、いうことの方が多い。
楽器の使い方や歌い方、音作りを含めてその曲をその曲たらしめているので、カバー曲は何か違う、イマイチだ…と感じてしまうのだろう。
だが、イヴァン・リンスの曲はそんなことは無い。
原曲と違うアレンジでも、他のミュージシャンが歌っていても、良いものは良い、と思える。
メロディ、コードワーク、ヴォイシングが素晴らしいため、曲そのものの強度が高いのだろう。
ということで、ライヴへ行くにあたって改めて聴いたのだが、その他のインスト曲を含めてなかなか良いアルバムだ。
大ヒットしたのも、評価が高いのも頷ける。
ビルボード・コンテンポラリー・ジャズ・チャート2位
グラミー賞受賞
Best Arrangement on an Instrumental : "Early A.M. Attitude"
グラミー賞ノミネート
Best Instrumental Arrangement Accompanying Vocal : "Harlequin"
Best Pop Instrumental Performance:album
Best Engineered Recording:album
このアルバムによりイヴァン・リンスは広く世界に知られることとなった。
その意味でも、このアルバムの意義は大きいと言えるだろう。
但し、一点だけこのアルバム、と言うよりもこのLPレコードには少し不満がある。
CDではイヴァン・リンスが歌う"Beyond The Storm (Depois Dos Temporais)"が収録されているのだが(全9曲収録)、LPレコードでは時間の関係からか収録されていない。
イヴァン・リンスのアルバムでは無いので選曲に漏れたのも仕方ないのだが、収録して欲しかった…
最後に、1985年の日本盤アナログ・レコード初盤のオビに書かれたコピーを紹介しておく。
リオの碧い風にさそわれて・・・・・・
USAサウンド・シーンのナイス・ガイ2人の初の共作アルバム。
時の人、イバン・リンスの唱 - そのブラジリアン・フレイバーと
アコースティック感覚に、夏のときめき。
80年代のフュージョンやAORにありがちな、クリスタルなコピーである…