先日のライヴ(リー・リトナー&デイヴ・グルーシンによる、イヴァン・リンスをフィーチャーしたライヴ)をきっかけにブラジル熱が上がってきた。
ということで、今回の「レコード評議会」は、ブラジリアン・フュージョンの名盤とされるこれを採り上げる。
Azymuth
Light As A Feather
US盤(1979年)
Milestone
M-9089
SideA:IS M9089A - IC ―..― FS72779DT AMPCRPSMCPPIT&TH#I
SideB:IS M9089B - IA ―..― FS41279DT TMPCRPSM#I
SideA
1. Partido Alto
2. Avenida Das Mangueiras
3. Light As A Feather
4. Fly Over The Horizon〔Vôo Sobre O Horizonte〕
5. Amazonia
SideB
1. Jazz Carnival
2. Young Embrace〔Um Abraço Da Mocidade〕
3. Dona Olimpia
4.This Exists〔Existe Isto〕
アジムスの1979年アルバム「ライト・アズ・ア・フェザー」。
アジムスとは、ブラジルのフュージョン・バンド。
メンバーはジャケット裏面の写真の3人。左から…
ジョゼ・ホベルト・ベルトラミ:キーボード
José Roberto Bertrami
アレックス・マリェイロス:ベース
Alex Malheiros
イヴァン・コンチ〔ニックネーム:ママオン〕:ドラム
Ivan Conte〔Mamão〕
1973年にリオデジャネイロにて結成。結成当時のスペル表記は Azimuth 。
1975年に1st アルバム「Azimuth」をリリース。
1977年にスペル表記を Azymuth に変更。2nd アルバム「Águia Não Come Mosca(邦題:涼風)」をリリース。
1979年に米国のレーベル Milestone と契約し、3rd アルバム「Light As A Feather」をワールドワイドにリリース。収録曲"Jazz Carnival"がUKシングル・チャート19位とヒット。
1980年に4th アルバム「Outubro」、以降も安定して作品をリリース。
2012年にジョゼ・ホベルト・ベルトラミ、2023年にイヴァン・コンチが亡くなり、オリジナル・メンバーはアレックス・マリェイロスのみとなるが、後任メンバーを迎え入れ、現在も活動を継続している。
で、このアルバム「Light As A Feather」の内容だが…
まずは何と言っても、アジムスと言えばこの曲というほど有名な"Fly Over The Horizon"。
2ndアルバムの収録曲"Vôo Sobre O Horizonte(Fly Over The Horizon)"のリメイクなのだが、ワールドワイドにリリースされたこちらのバージョンの方が有名だろう。
「クロスオーバーイレブン」のオープニング曲だったことから、聴いたら「この曲か〜」とお分かりになる方も多いと思う。
ゆったりとしたテンポに浮遊感のあるシンセサイザーとローズ・ピアノが響く。
悠然たる時の流れを感じさせる名曲だ。
「クロスオーバーイレブン」とは1978年11月から2001年3月までの20年以上にわたる深夜FMラジオ番組。
1981年4月以降でこの曲(3rdアルバム収録バージョン)がオープニング曲として使われている(1978年11月から1980年3月までは2ndアルバム収録バージョンが使われている)。
この曲が流れると以下のナレーションが聞こえてくる。
街も深い眠りに入り 今日もまた 一日が終わろうとしています
昼の明かりも闇に消え 夜の息遣いだけが聞こえてくるようです
それぞれの想いをのせて過ぎていく このひととき
今日一日のエピローグ クロスオーバーイレブン
この曲を聴くと、深夜の静寂、夜のしじま、という言葉が浮かぶのは「クロスオーバーイレブン」の影響なのだろうか…
"Fly Over The Horizon"は"地平線上を飛ぶ"といった意味なのだが…
そしてアルバムのタイトル・ナンバーである"Light As A Feather"。
原曲はチック・コリアのリターン・トゥー・フォーエバー(Return to Forever)が1973年にリリースしたアルバム「ライト・アズ・ア・フェザー」のタイトル・ナンバーだ。
ジョゼ・ホベルト・ベルトラミがチック・コリアのファンだったことに加え、この曲を採り上げてアルバム・タイトルに据えることで、ジャズ・フュージョン・ファンへのアプローチを狙ったのだろう。
原曲は女性ボーカル(フローラ・プリム)入りだが、ここではインスト。
ゆったりとしたテンポでシンセサイザーがメロディラインをなぞる。中間のアドリブ部分ではローズ・ピアノが良い感じだ。
ヒットした"Jazz Carnival"(UKシングル・チャート19位)はディスコ・ビート。1979年ということで、ほとんど80年代のノリが時代にマッチしたのだろう。
このアルバムはブラジリアン・メロウ・フュージョンとか、スペイシーなサウンドとか言われるが、グルーヴィな曲も多い。メロウ・グルーヴなどといった呼び方もされていれる。
シンセサイザーやローズ・ピアノに注目が集まりがちだが、ハーモニクスも織り交ぜながら多様な音使いのベース、ブラジルならではの多彩なリズムと手数の多いドラムがあってこそ、このアルバムをブラジリアン・フュージョンの名盤たらしめている。
ところで、手持ちのこの盤、音が素晴らしく良い。
シンセサイザー、ローズ・ピアノ、ベース、ドラム、パーカッション、それぞれの音がとても明瞭で、音が目の前で動いているかの様だ。
特に素晴らしいのがシンセサイザー。シルクのベルベットの様な音がスピーカーから流れ出て来る。
他ではなかなか味わえない、極上のサウンドだ。
ということで、時折聴いては「良い音だ…」と浸っている愛聴盤である。
(おまけ情報)
当時の日本盤のオビにはこの様に書かれている。
さわやかさが突き抜ける!
スパイロ・ジャイラに通ずるラテン・フレイバーの横溢する素敵なフュージョン・サウンドを身上とする話題のグループ "アジムス"
ジャズ・カーニバル/アジムス
当時の邦題は、ヒットした曲「ジャズ・カーニバル」にしていたのか…
"さわやかさが突き抜ける"に時代を感じる…