レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Rubber Soul / The Beatles【UK盤(モノラル/マト5)】

今回も 魔窟から足抜けが出来ず…

いや、 桃源郷に浸っていたいのか…

 

ということで、今回の「レコード評議会」も…

 

 

The Beatles

Rubber Soul

UK盤(1965年 / 1966年? )モノラル

Parlophone

PMC 1267

SideA:XEX 579-5  1  HP

SideB:XEX 580-5  1  MM


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ラバー・ソウルUKモノラル盤

 

B-SELSで買ったスペインモノラル盤、それを受けてオランダモノラル盤 / マト1ラウドカットを採り上げて来たので、今回はUKモノラル盤という訳だ。

 

で、このUK盤だが、マト1ラウドカットでも無く、マト4通常盤でも無い。

マト5である。

 

 

ここで「ラバー・ソウルUKモノラル盤マトリクスを整理すると…

 

マト1

1965年11月17日、最初のカッティングによるものがマト1。これがファーストプレスとなる。音圧が高くて迫力があるとしてラウドカットと呼ばれる。

 

マト4

11月19日、プレス工場からクレーム(ラウドにカッティングし過ぎて針跳びの恐れがある)があり、カッティングをやり直し。この時のリカットによるものがマト4(マト2と3はボツとなったため存在しない)。これがセカンドプレスとなる。いわゆる通常盤

 

マト5

その次のリカットによるものがマト5。つまりこれがサードプレスとなる。

 

ということなのだが、マト5は情報が少ない。リカットの時期・理由ともに詳細不明である。

 

当初リリースより何年も経ってから再発する際にリカットすることはままある。メタルマスターやメタルマザーが経年劣化してしまったため、廃棄されてしまったため、といったことが理由であろう。

だがこのマト5は、Discogsなどを見る限り1965年、少なくとも1966年にはマーケットに出ていた様だ。

 

 

そんなマト5なのだが、どんな音なのか?と言うと…

 

これが、はっきり言って素晴らしい。

A面 1/HP、B面 1/MMと、マザー1、スタンパー2桁(HP=76、MM=44)ということもあるのだろうが、音が素晴らしく良い。

 

全曲にわたってクリアですっきりとした音像だ。

その一方、マト1ラウドカットには及ばないものの、適度にして充分な音圧。ベースもくっきりとした音像でブンブンと鳴る。

 

つまり非常にバランスの取れた音であり、マト5は「ラバー・ソウルモノラル盤完成形なのでは?と思ってしまう。それほどに素晴らしい音なのである。

 

 

先に、マト5は情報が少ない、と書いたが、ほとんど唯一とも言える情報として、B-SELSの日記にこの様なことが記されている。

 

2024年12月1日の日記

「RUBBER SOUL」のUKモノラルはマト1かマト4が主流で、マト5は結構なレア盤です

 

音質的には素晴らしいものがあります

 

2025年1月21日の日記

マト5は本当に高音質ですね

 

2025年3月8日の日記

レアなマト5は手に入れるだけで難しい

 

マト5の音は、ステレオのクリアさとモノラルの迫力を兼ね備えたような、美しく力強い音

 

やっぱり、この「ラバー・ソウルUKモノラルマト5は素晴らしい音なのだ。

B-SELSのご店主が言うのだから、これはもう間違いない。

美しく力強い音、正にその通りと思う。

 

 

"Drive My Car"の疾走感、"Norwegian Wood"の叙情感、"You Won't See Me"のドライブ感、"Nowhere Man"のハーモニー感…

そして"Michelle"も歪まない。

 

マト5、個人的にはマト1ラウドカットよりも好みの音である。

 

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ところで、マト5は何故そして何時リカットが行われたのだろうか?

また、B-SELSご店主が言う様にマト5は何故レア盤なのだろうか?

 

 

マーク・ルーイスンによる「ザ・ビートルズ・レコーディング・セッションズ」にこの様な記載がある。

 

11月16日、ジョージ・マーティンはLPの曲順を決め、アビイ・ロードに電話でそれを伝える。ディスク・カッターのハリー・モスは、11月17日にモノLP、23日にステレオLPをカッティングモノのほうは、EMIのプレス工場からクレームがついたため、19日に作り直した)。このラッカー盤がただちに工場へ送られ、ジャケットの印刷も至急で行われた結果、ビートルズのニューLPは12月3日に発売の運びとなった。

 

この11月19日のリカットの件から、こんなことだったのだろうか?と勝手に推測してみた。

 

 

推測その1

11月19日、カッティング・エンジニアのハリー・モスはリカットに取り組んだ。マト2とマト3のボツを経て、マト4をOKとした。

12月3日のリリースまで日が無いため、このマト4は急ぎプレス工場に送られた。

 

12月3日、イギリスでアルバムがリリース。大量のマト4通常盤と一部マト1=ラウドカットが混在するかたちで流通した。

 

マト1マト4の両方を聴いたポールが「Michelleが歪まない様にしつつ、もっとベースを効かせられないか」と言ってきた

そこでハリー・モス12月初旬に改めてリカットを行い、これがマト5となった

マト5はプレス工場に送られた。

 

ところが、工場では既にマト4によるマザーおよびスタンパーが大量に作られ、どんどんプレスされていた。

これらを無駄に出来なかったため、マト5の盤はあまり作られず、結果レア盤となった

 

 

推測その2

11月19日、カッティング・エンジニアのハリー・モスリカットに取り組んだ。マト2とマト3のボツを経て、マト4を一旦OKとした。

12月3日のリリースまで日が無いため、このマト4は急ぎプレス工場に送られた。

 

だが、ハリー・モスマト4をOKとして良かったのか?と悩んだ。ベースの音にこだわるポールが「Michelleが歪まない様にしつつ、もっとベースを効かせられないか」と言ってくるのではないか、と。

そこでハリー・モス11月19日にさらにリカットを行い、これがマト5となった

美しくもベースが効いた力強い音で、会心の出来だった。ハリー・モスはこのマト5を最終OKとした

マト5はプレス工場に送られた。

 

ところが、時既に遅し。工場では既にマト4によるマザーおよびスタンパーが大量に作られ、どんどんプレスされていた。

 

12月3日、イギリスでアルバムがリリース。大量のマト4=通常盤と一部マト1=ラウドカットが混在するかたちで流通した。

 

既に大量に作られていたマト4のマザーやスタンパーを無駄に出来なかったため、マト5の盤はあまり作られず、結果レア盤となった

 

 

まぁ、勝手な推測である。

 

 

と、ここで、この記事を公開した後に新たな説が浮上した。


いつものようにB-SELSのHPをチェックしていると2025年5月6日の日記に「レコード評議会」が紹介されていた(←ご店主ありがとうございます。恐縮です)

その内容を拝見すると「UKモノラル・マト5/5 最近ではヘーゼル・ヤーウッド・カットと呼ばれているそうだ」と書かれている。


ん?ヘーゼル・ヤーウッドHazel Yarwood)って誰?


そこでネットであれこれ検索してみると、1923年生まれのクラシックを中心に活躍していた女性マスタリング・カッティング・エンジニアとのこと。


で、マト5をカッティングしたのは彼女である、との書き込みが少なからずある。


さらには、マト5がリリースされたのは1966年であるマト4も彼女の手によるものである、といった書き込みもある。

 


ザ・ビートルズ・レコーディング・セッションズ」にはハリー・モスのことしか書かれていない。マーク・ルーイスンもヘーゼル・ヤーウッドのことは分からなかったということなのか…

後のビートルズ研究で判明したということなのか…

 

ふむぅ…  となると、こんな感じだったということか?


マト1:1965年11月17日にハリー・モスがカッティング、12月3日にリリース

マト4:11月19日にヘーゼル・ヤーウッドがカッティング、12月3日にリリース

マト5:11月19日または12月頃にヘーゼル・ヤーウッドがカッティング、1966年に入ってからリリース


うむぅ…  ヘーゼル・ヤーウッドは11月19日と12月の二度にわたってカッティングをするだろうか?

 

 

ということで、こうだったのではないだろうか?と推測してみた。

 

 

推測その3

ハリー・モスによるマト1にプレス工場からクレームが入ったため、リカットに際してベテランのヘーゼル・ヤーウッド(当時42歳)に白羽の矢が立った。クラシックで磨いたその腕なら、綺麗な音でカッティングをしてくれるだろう、と。


11月19日、ヘーゼル・ヤーウッドはリカットに取り組んだ。ロックのカッティングには不慣れだったこともあり、マト2とマト3は上手くいかずボツとなった。マト4で漸く上手くいった。

12月3日のリリースまで日が無いため、このマト4は急ぎプレス工場に送られた。

 

だが、ヘーゼル・ヤーウッドマト4をOKとして良かったのか?と悩んだ。ポールはベースの音にこだわるとも聞くし、もっとベースが効いている方が良いのではないか、後で色々と言われやしないか、と。

そこでヘーゼル・ヤーウッド11月19日にさらにリカットを行い、これがマト5となった

美しくもベースが効いた力強い音で、会心の出来だった。ヘーゼル・ヤーウッドはこのマト5を最終OKとした。

マト5はプレス工場に送られた。

 

ところが、時既に遅し。工場では既にマト4によるマザーおよびスタンパーが大量に作られ、どんどんプレスされていた。

 

12月3日、イギリスでアルバムがリリース。大量のマト4通常盤と一部マト1ラウドカットが混在するかたちで流通した。

 

既に大量に作られていたマト4のマザーやスタンパーを無駄に出来なかったため、マト5の盤はあまり作られず、店頭に並んだのも1996年に入ってからとなり、結果レア盤となった

 


どうだろう?

なんだかそれっぽい感じではないだろうか?

 

まぁ、勝手な推測である。

 

 

 

最後に「RUBBER SOUL」のロゴについて、国によって色が違うのだな、と。

 

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左上:UK盤

左下:US盤 【US盤(モノラル)】

右上:スペイン盤 【スペイン盤(モノラル)】

右下:オランダ盤 【オランダ盤(モノラル/ラウドカット)】

 

何故なんだろう?

 

 

 

(追記)

マト4マト5について、あぁ、そういうことだったのか、ということがが判明した。

それは上記の推測とはかなり違っていた。

 

 

ということで、マト4・マト5についての実際の経緯はこちらをご覧ください。

 ☟

Rubber Soul / The Beatles【イスラエル盤(モノラル/マト4)】