今回の「レコード評議会」も「B-SELSで買ったレコード」シリーズ:シーズン12となります。
前回はあまりにも長くなってしまったので、今回は軽いタッチで行こうと思います。
ということで、今回はこのシングル盤。
US盤(Jacksonville Pressing)(1970年)ステレオ
Apple Records / ABKCO
2832
SideA:S-45-47181 Z6 2832 #2 Bell Sound sf 0 Phil + Ronnie
SideB:S-45-47182 Z6 2832 Bell Sound sf Phil + Ronnie 0




シングル"The Long And Winding Road"のUS盤。
カップリングは"For You Blue"。
アルバム「レット・イット・ビー」からのシングルカットで、アメリカなどではリリースされているが、イギリスではされていない。
ご店主によるポップにはこう書かれている。
US Orig. PS付 良盤 ‼︎
BELL SOUND
PS付はレア! PSややいたみあるも悪くない状態
盤質良好! 音も良いです
Bell Sound か…
これは良い音がしそうだ。
私「こちら試聴お願いします」
ご店主「おぉ、Bell Soundですね」
私「Bell Soundと言えば、レット・イット・ビー(LP)のUS盤もそうですが、なかなか良い音がしますよね」
ご店主「私も好きな音です」
私「このシングル盤も期待できますね」
ということで、A面、B面と試聴。
私「"The Long And Winding Road"は豪華な響きで、良いですね」
ご店主「華やかな音ですよね」
私「"For You Blue"も音が生き生きとしていて、こちらも良いですね。Bell Sound、期待通りの音です」
ご店主「それは良かったです」
私「ところでこの盤、盤質がなかなか綺麗ですよね。USシングル盤なのに(笑)」
ご店主「あはは、US盤で綺麗な盤はホント少ないですからね」
私「レコードの、特にシングル盤の扱いがアメリカは雑といった印象があるんですよね(笑)。偏見かも知れませんが」
ご店主「あはは、実際そうだと思いますよ」
私「とある中古レコ屋で、ズタボロのシングル盤がスリーヴも付いていない剥き出しの状態で並んでいるのを見たことがあるんですけど、そんな扱いの印象です(笑)」
ご店主「昔は良い音で聴くとかいう考えは無くて、ほとんどの人はポータブル・プレイヤーみたいなものでただ曲が聴ければ良いという感じだったのでしょうねぇ。レコードもぞんざいな扱いが多いです(笑)」
私「あはは、そうなんでしょうね。これは盤質も良いですし、期待通りのBell Soundですし、買います」
ご店主「毎度ありがとうございます」
ということで、家に帰ってからLP「レット・イット・ビー」US盤と聴き比べてみた。
まずデッドワックスを見ると、シングル盤・LP盤とも "Bell Sound" "sf" "Phil+Ronnie" といった刻印がある。
"Bell Sound"とはアメリカのマスタリング・スタジオであるBell Sound Studiosのこと。
"sf"はBell Sound StudiosやAtlantic Studiosで仕事をしていたマスタリングやカッティングのエンジニアであるSam Feldmanのこと。
"Phil+Ronnie"は、このアルバムのリプロデュースを手掛けたフィル・スペクターとその妻ロニー・スペクター(ロネッツのリードシンガー)を指しているのだろう。
つまり、シングル盤・LP盤とも、同じエンジニアのカッティングによるBell Sound盤ということだ。
で、その音はというと…
ストリングス、ブラス、女性コーラスが空間に広がり、身体を包み込む。
33回転のLP盤も、45回転のシングル盤もBell Soundらしい華やかな音だ。
が、シングル盤の方がLP盤に比べて「45回転 / 33回転 = 1.36倍」華やかな印象だ。
For You Blue
生き生きとした音で、小気味良いリズムが気持ち良い。ラップ・スティール・ギターとピアノ(悪いホンキートンク・ピアノのような音)のアレンジも秀逸。
こちらも45回転ならではを感じることが出来る。
ということで、Bell Soundを45回転ならではの音で楽しめるのが、このシングル盤なのである。
ピクチャースリーヴも白と黒の対比や写真の配置など、アルバム「レット・イット・ビー」を意識したもので、なかなか良いデザインだ。


と満足しつつ、聴きながらこんなことを思った…
このシングル盤"The Long And Winding Road"はアメリカで1970年5月11日にリリースされている。
またアルバム「レット・イット・ビー:Let It Be」はイギリスで5月8日、アメリカでは5月18日にリリースされている。
「ポールの脱退宣言」(1970年4月10日の大衆紙デイリー・ミラーでの報道)、つまり「ビートルズ解散」から1ヶ月後のタイミングだ。
"The Long And Winding Road"(長く曲がりくねった道)を聴きながらファンはどの様に感じたのだろう?
「Let It Be」(なすがままに)というタイトルに何を思ったのだろう?
と、湿っぽく終わるのも何だかな…ということで、こんな盤も持っているので、ついでに紹介しておこう。
フランス盤(1970年)モノラル
Apple Records / Pathé Marconi
2C 006-04514 M
SideA:M3 273792 04514 MA 21
SideB:M3 273793 04514 MB 21




フランス盤。
ピクチャースリーヴはフランス盤らしからぬ何とも素っ気ないデザインだ。
メンバーの写真も無ければ、文字のデザインが凝っている訳でも無い。
「ビートルズ解散」ということで、デザイナーが投げやりになってしまったのだろうか?
では、肝心の音の方はどうかと言えば、モノラル、しかもステレオをモノラルに変換した偽モノである。
ただ、この頃はステレオミックスしか作っておらず、モノラルミックスは無いのだから、偽モノという言い方は不適切かも知れないが…
まぁ、音が良ければそれで良い訳で、ではどうなのかというと、音圧も確りと感じられるし、キレの良い音でなかなか悪く無い。
と言うか、偽モノ呼ばわりしておきながら何なのだが、モノラルというところがなかなか良い。
特に"The Long And Winding Road"は、その印象がステレオとモノラルとでは全く違う。
ステレオでは空間を包み込むストリングス、ブラス、女性コーラスがまるで主役の様だ(それはそれでアリではあるが)。
一方で、モノラルではそこまで豪華な感じがしない。音が真ん中が故に、ストリングスなどは後ろでボーカルを支える様に鳴っており、あくまでも主役はポールのボーカルである。
ということで、偽モノながら、通常のステレオとはまた違った雰囲気が楽しめるのが、このシングル盤なのである。
最後に小ネタを…
小ネタ①:"For You Blue"の冒頭
LP盤には曲の冒頭にジョンによる"Queen Says 'No' to Pot-Smoking FBI Members"(マリファナを吸うFBI職員なんてダメよって女王陛下が言っているんだって)というセリフが収録されているが、USとフランスのシングル盤には収録されていない(収録されているものもあるそうだ)。
小ネタ②:"The Long And Winding Road"と"For You Blue"の収録時間表記
LP US盤
シングル US盤


シングル フランス盤


3分40秒:LP US盤
3分40秒:シングル US盤
3分33秒:シングル フランス盤
まさか曲のピッチが違うのかと思ったが、その様なことは無い。実測したところ、シングル フランス盤の3分33秒が近い。
For You Blue
2分33秒:LP US盤
2分25秒:シングル US盤(Intro. :12 Total 2:25)
2分27秒:シングル フランス盤
こちらもピッチに違いは無い。実測したところ、シングル US盤の2分25秒が近い。
なお、LP US盤は"Queen Says 'No' ..."のセリフを含めての時間なのだろうが、それでも2分33秒との表記は長すぎる(セリフ部分は2秒程度)。
ちなみに、シングル US盤には"Intro. :12 Total 2:25"と表記されている。但しイントロ部分(演奏開始から歌が入るまで)は10秒程度であり、12秒との表記は長すぎる。
まぁ、どうでも良い小ネタである。
軽いタッチで書くつもりが、結局長くなってしまった…
(追記)
B-SELSの日記に紹介されました。お褒めの言葉をいただき、恐縮しております。今後も精進してまいります。