レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Revolver / The Beatles【スペイン盤(モノラル)】

今回の「レコード評議会」も「B-SELSで買ったレコード」シリーズ:シーズン12ですが、最終回となります。

 

では、今回採り上げる盤は何なのか、と言いますと…

 

 

 

B-SELSではいつも大音量でレコードがかかっている。

お客さんが試聴している時もあれば、ご店主が新規出品する前の品質確認で聴いている時もある。

 

ひとしきりご店主とのビートルズ談義を楽しんだ後、例によってレコード棚を掘っていると、ご店主が大音量でレコードをかけ始めた。

 

"1,2,3,4,1,2..."のカウントに続き、切れ味鋭いギターが鳴り出す。

「お、このアルバムか、良い音しているな」と思いながらレコード棚を掘る。

 

が、その音に耳が行ってしまう。意識が持っていかれ、手が止まってしまう。

ベースが効いていて、太くて力強い音だ。

何だろう、この盤は? どこの盤だろう?

 

レコードプレイヤーの上で回転している盤を見てみると青いレーベル。これはもしや…

 

「この青いレーベルって、もしかするとスペイン盤ですか?」

ご店主「ええ、そうです」

「ベースが効いていますね。前回買ったラバー・ソウルのスペイン・モノラル盤と同じ傾向の音ですね。この時期のアルバムのスペイン盤はこの音なんですか?」

ご店主「ですね。男性的な音と言いますか、レコード評議会さんが言うところの筋肉質な音です」

「やっぱり良いですね、スペイン盤は」

 

と話をしたりしながら、引き続きレコード棚を掘る。

 

が、やっぱり手が止まってしまう。聞き流せない。

結局、レコード棚の前に立ったまま、A面もB面も確りと聴いてしまった。

 

「うーむ、ラバー・ソウルも良かったですが、このスペイン盤も良いですね。これから出品されるんですか」

ご店主「そうです。もう少しクリーニングしてから出そうかな、と」

「そうなんですね… あの、これを売っていただくことってアリなんですか?」

ご店主「ええ、もちろんです」

「ホントですか! では買います」

ご店主「ホントですか! それはそれはありがとうございます」

 

ということで、買ったのがこれ。

 

 

The Beatles

Revolver

スペイン盤(1966年)モノラル

Odeon

MOCL 5308

SideA:XEX 605  ‖♢R  1

SideB:XEX 606  ‖♢O  1


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リボルバースペインモノラル盤

 

 

ご店主「ではちょっと、これを書きますね」

 

と、ご店主は店頭に並べる時と同様にポップを書く。

 

レア! スペイン orig. モノ

Rare! Spain orig. 1966

独自マト マザー・スタンパー 1R / 1O

B1初とB6終に少キズあり 他は概ね良い状態

良い音です

 

店頭に並ぶ訳でも無いのにポップを書くのは、大切なビートルズのレコードを送り出した記録として残しておくためなのだろう。心に染みるなぁ、と。

 

 

ポップには「B1初とB6終に少キズあり」と書かれているが、B-SELSは固めの評価なので、多少音に出るとは言ってもほとんど気にならない。

 

それよりもマザー・スタンパー(UK盤のグラモフォン・コードと同じルール)はA面 1R(2番目)、B面 1O(5番目)であり、すごく若い。最初期盤だ。それもあってか、音の威力が凄い。

 

「改めて言いますけど、音が太くて力強いし、低音が効いていますよね。音の威力が凄いです。レコードを探す手が止まってしまい、聴き入ってしまいましたよ」

ご店主「気に入っていただいて何よりです。ありがとうございます!」

「前回のラバー・ソウルと言い、今回のリボルバーと言い、スペイン独自カットは良いですね。こちらこそ良い盤に出会えて感謝です!」

 

 

ということで、「リボルバースペインモノラル盤、家に帰ってから改めて聴いてみたところ、やっぱり独特な音がする。

 

ラバー・ソウルスペインモノラル盤と同様、男性的な音であり、筋肉質な音であり、剛の者(すぐれて強い者、武勇にすぐれた者、つわもの)ならぬ剛の音である。

 

そして特筆すべきは、 低く、深く、それでいて跳ねる様に鳴る力強いベース。

ほとんどの曲においてポールのベースが主役、少なくとも準主役と呼べるほどの活躍をしており、ズンズン、ズゥーンと響くその音は他では味わえないものだ。

 

中でも「これは!」と思うのは、中間部でスラッピング(チョッパー)の様なプレイも聴ける"Taxman"、シンプルながら推進力・牽引力が凄い"Got To Get You Into My Life"。

また、低音というところでは"Eleanor Rigby"での低く深く響くチェロも素晴らしい。

 

 

ということで、聴いて大満足の「リボルバースペインモノラル盤なのだが、最後にもう一つ面白いことを…

 

こちらのジャケット写真の右側と下側をよく見ていただきたい。

 

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実はこれ、スペイン盤UK盤を重ねたものなのだが、スペイン盤のサイズの方が少し小さいのがお分かりいただけるだろうか?

 

以下の様に並べてみると、より分かる。

ジョンの左白目がUK盤は見える一方、スペイン盤は見えない。

 

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そこで、もしかして… と思って「ラバー・ソウル」もスペイン盤UK盤を重ねてみると、やっぱりスペイン盤のサイズの方が少し小さい

 

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結論。スペイン盤のジャケットは小さめである

 

 

って、小ネタだな…

 

 

ならば、小ネタついでにこれで締め括ろうと思う。

 

レーベルを見ると、曲名は英語とスペイン語で併記されている。

 

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SideA

 1. Taxman / El Recaudador

 2. Eleanor Rigby /  人名のためスペイン語表記無し

 3. I'm Only Sleeping / Estoy Durmiendo

 4. Love You To / Por Tu Amor

 5. Here, There And Everywhere / En Todas Partes

 6. Yellow Submarine / Submarino Amarillo

 7. She Said She Said / Ella Dijo

SideB

 1. Good Day Sunshine / Rayo De Sol

 2. And Your Bird Can Sing / Tu Ave Y Su Canción

 3. For No One / Por Nadie

 4. Dr. Robert / Doctor Robert

 5. I Want To Tell You / He De Decirte

 6. Got To Get You Into My Life / Dentro De Mi Vida

 7. Tomorrow Never Knows / No Saber

 

 

概ね直訳である。

 

ただ、"Tomorrow Never Knows"は上手く訳せなかった様だ。

 

"Tomorrow Never Knows"というのはリンゴの呟きをジョンが気に入ってタイトルに付けたものなのだという。

 

「明日のことは決して分からない」といった意味なのだろうが、構文としては「主語:Tomorrow」と「動詞フレーズ:Never Knows」で成り立っており、文字通り訳すと「明日は決して知らない」となる。変な文章だ。

Never Know(s):決して知らない」の主語は「I / You / He / She」などが通常であるが、「Tomorrow:明日」を擬人化して主語にしているため、変な文章、おかしな言い回しになっているのだ。

 

ただ、この非日常的な表現詩的で哲学的なニュアンスを醸し出している。

で、このリンゴならではのおかしな言い回しをジョンが気に入って前衛的な楽曲のタイトルにしたという訳だ。

 

しかしながら、このニュアンスがスペイン語タイトルには全く感じられない。

"No Saber"を英語に置き換えると「Not Know:知らない、分からない」となる。

これではニュアンスが全く伝わらない。

 

変な文章、おかしな言い回しだったため、スペインではどう訳して良いのか分からず、こうしたのだろう。

 

そのまま単語を置き換えて"Mañana nunca saber"とすれば良かったのに…

 

 

 

まぁ、小ネタである。

 

 

 

ということで、「B-SELSで買ったレコード」シリーズ:シーズン12はこれにて終了です。

 

シングル1枚とアルバム2枚を購入した訳だが、今回も3時間ほど滞在。勉強(←何の勉強?)にもなる、とても楽しい時間を過ごさせていただきました。

ご店主、ありがとうございました。

 

B-SELS、また行こう。

 

 

(追記)

B-SELSの日記に紹介されました。過分なお言葉ありがとうございます。

  ☞  2025年6月3日の日記