「レコード評議会」なので、幅広いジャンルを採り上げなければ… と思いつつ、最近は特定のバンドに偏っていたと思う。
そこで、あまり有名で無いと言うか、一般的にはほとんど知られていないのではないか?という盤を採り上げてみたい。
Cloud About Mercury
ドイツ盤(1987年)
ECM 1322 / 831 108-1
SideA:831 108-1 S 1=3 ECM1322 320 1
SideB:831 108-1 S 2 ECM1322 320 1




SideA
1. Suyafhu Skin... Snapping The Hollow Reed
2. The Mercury Grid
3. 3 Minutes Of Pure Entertainment
SideB
1. Previous Man
2. The Network Of Sparks
a) The Delicate Code
b) Egg Learns To Walk ...Suyafhu Seal
David Torn:Electric and Acoustic Guitars
Mark Isham:Trumpet, Piccolo Trumpet, Flugelhorn,
Synthesizer on "Snapping The Hollow Reed"
Tony Levin:Chapman Stick, Synthesizer-Bass
Bill Bruford:Simmons Drums, Synthesizer-Drums, Percussion
Produced by Manfred Eicher
デヴィッド・トーンの「Cloud About Mercury:クラウド・アバウト・マーキュリー」。
このブログをご覧いただいている方でも「誰?」と思われるであろうアルバムである。
だが、1987年の日本盤CDのオビにはこの様に書かれており、これを見れば興味を持たれる方もいるのではないだろうか。
"キング・クリムゾン"コンビが強力無比のリズムでバックアップ!
"エヴリマン・バンド"の異色ギタリストが放つユニーク極まりないスマッシュ・ヒット
1980年代ディシプリン期のキング・クリムゾン、いわゆる"ディシプリン・クリムゾン"のリズム・セクションを務めたビル・ブルーフォードとトニー・レヴィンが参加したアルバムなのだ。
ビル・ブルーフォード
イギリス出身。1960年代末からのイエスに始まり、キング・クリムゾン、U.K.、"ディシプリン・クリムゾン"の中核メンバーとして活躍した、プログレ界きっての凄腕ドラマー。自身のバンドも結成し、ジャズ・ロックのアルバムもリリースしている。
このアルバムでは普通の生ドラムでは無く、電子ドラムであるシモンズ・ドラム(Simmons Drums)を演奏している。
アメリカ出身。1970年代初頭よりNYを拠点にジャズ・フュージョン系からロック系に至るまで幅広く活躍する凄腕ベーシスト。ポール・サイモン、ジョン・レノン、ピーター・ガブリエルなどのアルバムにも名を連ねており、"ディシプリン・クリムゾン"への参加でワールドワイドにその名が知られる様になった。
このアルバムでは通常のベースでは無く、シンセベースとチャップマン・スティック(Chapman Stick)を演奏している。
左:シモンズ・ドラムを演奏するビル・ブルーフォード
右:チャップマン・スティックを演奏するトニー・レヴィン


そんな彼らが参加しているアルバム、しかもレーベルはECM、悪かろうはずが無い。
ということで、手に入れたのだが、これがなかなかに良いアルバムなのだ。
まずは、残る2名について説明しておこう。
アメリカ出身。ジャズから電子音楽まで幅広いジャンルで活躍するトランペット奏者、シンセサイザー奏者。ヴァン・モリソンやデヴィッド・シルヴィアンのアルバムにも参加。映画やテレビドラマの音楽が本領らしく、200以上の作品に携わっている。
デヴィッド・トーン
アメリカ出身。様々なエフェクトやサンプリング、ループ奏法を駆使した前衛的な音を繰り出すギタリスト。ミック・カーン、デヴィッド・ボウイ、坂本龍一のアルバムにも参加。映画やテレビドラマの音楽も手掛けている。
では、その内容はと言うと…
マリンバの様に聴こえる時もある、ビル・ブルーフォードのシモンズ・ドラムによる多彩な音色とポリリズム。
チャップマン・スティックによる多彩な動きを織り交ぜた、トニー・レヴィンのツボを押さえた重低音。
時折ミュートを使ったクールな音でアルバムのカラーを決定付ける、マーク・アイシャムのトランペット。
様々なエフェクトを駆使した前衛的な音で空間を支配する、デヴィッド・トーンのギター。
ジャンルはコンテンポラリー・ジャズなのだろうが、前衛的な響き、さらに言うならば、近未来的な響きがするアルバムである。
サイバーパンクな感じも醸しており、カルト的人気のある1982年映画「ブレードランナー」のバックに流れていても似合っていると思う。
そう言えば「Cloud About Mercury」(水星にかかる雲)というアルバム・タイトルもSFタッチだな、と。
ということで、一般的にはほとんど知られていないのではないか?といった盤でしたが、如何だったでしょうか?
これからもお気に入りのレコードについて幅広く採り上げていきたいと思います。