2回にわたってジャパン(および再結成のレイン・トゥリー・クロウ)というニュー・ウェイヴ系のグループを採り上げたので、すっかり気分が80年代になってしまった。
そこで今回の「レコード評議会」は…
The Blow Monkeys
Animal Magic
UK盤 (EU盤)(1986年)
PL 70910
SideA:B̶-̶4̶2̶4̶5̶ ̶A̶-̶1̶ B-3401 A-2 III timtom
SideB:B̶-̶4̶2̶4̶5̶ ̶B̶-̶1̶ B-3401 B-2 TY 020






SideA
1. Digging Your Scene
2. Animal Magic
3. Wicked Ways
4. Sweet Murder
5. Aeroplane City Lovesong
SideB
1. I Nearly Died Laughing
2. Don't Be Scared Of Me
3. Burn The Rich
4. I Backed A Winner (In You)
5. Forbidden Fruit
6. Heaven Is A Place I'm Moving To
ブロウ・モンキーズの1986年アルバム「アニマル・マジック」。
UKアルバムチャート21位、USビルボードチャート35位とワールドワイドにヒットしたアルバムである。
今から40年近く前、80年代中頃、大学時代の友人の影響でニュー・ウェイヴ系、ポスト・パンク系のグループをよく聴いていた。
スタイル・カウンシル、ザ・スミス、ポリス、XTC、ニュー・オーダー、デュラン・デュラン、トーキング・ヘッズといったところである。
その中で、イギリスのブロウ・モンキーズもよく聴いていたものだった。
現在においてブロウ・モンキーズの認知度がどれほどなのかよく分からないが、当時は洒落たグループとして日本でも結構人気があった様に思う。
メンバーは以下の通り。
ドクター・ロバート
Dr. Robert(本名:Robert Howard)
ボーカル、ギター
ドクター・ロバート(Dr. Robert)という芸名はビートルズの曲名にちなんで名付けられたのだと言う
ネヴィル・ヘンリー
Neville Henry
サックス
バンド形態でサックスがメンバーというのは珍しい
ミック・アンカー
Mick Anker
ベース
主にフレットレス・ベースを使用している
トニー・カイリー
Tony Kiley
ドラム
次に、1981年結成からの歴史を駆け足で見てみる。
1981年、ドクター・ロバート(ロバート・ハワード)を中心にブロウ・モンキーズ結成
1982年、シングル"Live Today Love Tomorrow"をインディ・レーベルからリリース
1984年10月、デビュー・アルバム「Limping For A Generation : リンピング・フォー・ア・ジェネレイション」をRCAよりリリース
1986年4月、アルバム「Animal Magic : アニマル・マジック」をリリース(アルバムチャートUK21位、US35位)
1987年1月、アルバム「She Was Only A Grocer's Daughter : オンリー・ア・グローサーズ・ドーター」をリリース(アルバムチャートUK20位、US136位)
1988年2月、アルバム「Whoops! There Goes The Neighbourhood : フープス」をリリース(アルバムチャートUK46位)
1990年6月、アルバム「Springtime For The World : スプリングタイム・フォー・ザ・ワールド」をリリース
1990年8月、突然の解散
2007年11月、オリジナル・メンバーで再結成を発表、その後コンスタントにアルバムをリリース
この記事を書いているうちに80年代当時を思い出してきたが、スタイル・カウンシル vs ブロウ・モンキーズ、もしくはポール・ウェラー vs ドクター・ロバート、という構図で語られていたと記憶している。
フレッド・ペリー(Fred Perry)のポロシャツを羽織っポール・ウェラー、テーラード・スーツに身を包んだドクター・ロバート、両者とも"オシャレ"なファッションだった。
何より両者ともソウル・R&Bに影響を受けたブルー・アイド・ソウルで、"オシャレ"なサウンドだった。
ちなみに、スタイル・カウンシルの「カフェ・ブリュ」「アワ・フェイヴァリット・ショップ」、ブロウ・モンキーズの「リンピング・フォー・ア・ジェネレイション」「アニマル・マジック」は同じプロデューサー、ピーター・ウィルソンが手掛けている。
このため両者はよく比較され、バブル絶頂期の空気感と相まって、特に日本では人気が高かった。
だが、両者は表面的には似ているが、音楽的な出自と言うか、根っこはかなり違う。
ポール・ウェラーは、そのキャリアをザ・ジャムからスタートしており、つまりモッズやパンクが根っこにある。
このためスタイル・カウンシルは洗練された中にもロックを強く感じさせる。
一方でドクターロバートは、ソウル・R&Bといったブラック・ミュージック・フリーク(レコードを3万枚所有しているのだとか)。
その中でもカーティス・メイフィールドの大ファンとのことで、"Superfly"(シングル"Don't Be Scared of Me"のB面に収録)をカバーしたり、後に"The Day After You"(アルバム「オンリー・ア・グローサーズ・ドーター」に収録)で共演している。
ということで、ブロウ・モンキーズの「アニマル・マジック」なのだが、シングルでもリリースされた曲も含め、なかなか良い曲が多数収録されている。
シングル・リリース
Forbidden Fruit(シングルチャートUK94位)
Digging Your Scene(シングルチャートUK12位、US14位)
Wicked Ways(シングルチャートUK60位)
Don't Be Scared of Me(シングルチャートUK77位)
その他個人的に気に入っている曲
Aeroplane City Lovesong
I Nearly Died Laughing
これもなかなかの良いではないかという曲
Sweet Murder
Heaven Is A Place I'm Moving To
華やかで洗練されたストリングスやホーン・セクションは、モータウン・サウンドやフィリー・ソウル(フィラデルフィア・ソウル)を思い起こさせる。
そして、カーティス・メイフィールドからの影響と彼へのリスペクトも感じさせる。
80年代と言うと、打ち込み系で安っぽく聴こえる音も多い(←個人的な感想です)。
だが、このアルバムはギター、ベース、ドラム、ホーンなどが生音で演奏されているし、何よりソウル・R&B、ブラック・ミュージックへのリスペクトが感じられる。
このため、時代の音ではあるのだろうが、今でも十分に聴くことが出来る。
そんな訳で、今でも時折引っ張り出してきては聴いているのが、この「アニマル・マジック」なのである。

(おまけ)
ところで、このアルバムのタイトルが「アニマル・マジック」なのは何故なのだろう?
そこで試しにChatGPTに質問してみたら、こんな回答があった。
「Animal Magic」というタイトルには明確な“公式解釈”は示されていませんが、いくつかの有力な読み解きが可能です。以下に音楽的・文化的・象徴的な視点から、その意味を掘り下げてみます。
1. 「Animal Magic」という言葉の意味
英語で「animal magic」とは直訳すると「動物の魔法」ですが、比喩的に次のような意味を持つこともあります。
・魅惑/野性の魅力:動物のような本能的なエネルギーやセクシャリティを称える言い回し
・奇妙で不思議なショー:イギリスBBCで長年放送された子供向け番組「Animal Magic」(1962–1983)の連想。ユーモラスで人間的な動物たちが登場
・社会へのアイロニー:「文明社会の仮面の下にある“野生”や“衝動”」への皮肉な示唆
2. 音楽・歌詞との関係性
Blow Monkeysの音楽には、都会的で洗練された音の中に、“本能的な情熱”や“矛盾した人間性”を描くテーマがよく登場します。
曲との関連性:
・"Sweet Murder"や"Forbidden Fruit" : 快楽・暴力・罪といった“動物的衝動”をテーマに
・"Digging Your Scene" : 社会的偏見という“理性”の暴力
・"Wicked Ways" : 欲望と偽善=理性と本能のせめぎあい
つまり、彼らのポップな外見と裏腹に、「人間=理性+動物性」というテーマがアルバム全体に流れており、「Animal Magic」というタイトルはこの二面性の詩的象徴と言えるでしょう。
3. Dr. Robertの思想的背景からの推測
Dr. Robertは政治・哲学・文学への造詣が深く、常に「見た目より深い意味」を込めたタイトルや詞を書く人物です。
彼がこの時期好んでいたのは、例えば:
・Oscar Wilde的な皮肉
・George Orwell的な社会観察
・Curtis Mayfield的な“ソウルの知性”
「Animal Magic」は、そのような『社会に潜む本能・野性”と“人間の偽善的理性”を対比したコンセプト的タイトル』と捉えるのが自然です。
4. 大衆文化的な遊び心としての可能性
英国では、「Animal Magic」というフレーズが子供向け番組(BBC)や手品のタイトルなどに使われており、「奇妙な楽しさ」「幻想のショー」という軽やかな響きもある。
Blow Monkeysの音楽は、深いメッセージをポップに包む“スマートな演出”が得意であり、このタイトルもその一環かもしれません。
結論:「Animal Magic」というタイトルは…
「人間の中に潜む“本能的な魔力”=社会的・性的・精神的エネルギー」を、都会的なソウル・ポップで解放するアルバムであることを象徴した詩的タイトル。
シリアスでもあり、遊び心もあり、意味深でもあり、開かれた印象もある、正にBlow Monkeys的な二重構造のタイトルです。
メチャメチャ掘り下げていて、もっともらしい回答だが、ホンマかいな?
ドクター・ロバートに訊いたら、何と言うだろう?