前回の「レコード評議会」では、スタイル・カウンシルの2ndアルバム「アワ・フェイバリット・ショップ」を採り上げた。
ポール・ウェラーの趣味に適った様々なスタイルを取り入れつつ、趣味の良い洒落たサウンドを聴かせる、正に「スタイル評議会:The Style Council」といったアルバムだ。
だが、それよりも「スタイル評議会」を強く感じさせるアルバムがある。
Café Bleu
UK盤(1984年)
Polydor
TSCLP 1
SideA:TSCLP 1 A//1▽420 R 13 ARUN 1 1
SideB:TSCLP 1 B//2▽420 R 13 1 1






SideA:Café Bleu....
1. Mick's Blessings
2. The Whole Point Of No Return
3. Me Ship Came In!
4. Blue Café
5. The Paris Match
6. My Ever Changing Moods
7. Dropping Bombs On The Whitehouse
SideB
1. A Gospel
2. Strength Of Your Nature
3. You're The Best Thing
4. Here's One That Got Away
5. Headstart For Happiness
6. Council Meetin
1984年3月リリースの1stアルバム「カフェ・ブリュ」である。
1982年12月にポール・ウェラーはザ・ジャム(The Jam)を解散し、ミック・タルボット(キーボード)とスタイル・カウンシルを結成。
1983年からシングルを5枚リリース、満を持して1984年3月にリリースしたのがこのアルバムである。
では、何故このアルバムが「スタイル評議会」をより強く感じさせるのか、と言うと…
A1. Mick's Blessings
ピアノが活躍するソウル/ファンキー・ジャズ風。
A2. The Whole Point Of No Return
ギター弾き語りの少しボサノヴァ風。
1985年5月リリースのシングル(Walls Come Tumbling Down!)に収録の"The Whole Point II"はバンド演奏バージョンで、ジャズ・テイストのアレンジがなされている。
A3. Me Ship Came In!
トランペットとサックスが活躍するソウル/ファンキー・ジャズ風。
A4. Blue Café
ストリングスが豊富に入った1950年代のムーディな映画音楽風。
A5. The Paris Match
シャンソン風、またはジャズ・ボーカル風。
エヴリシング・バット・ザ・ガール(Everything But the Girl)のベン・ワット(Ben Watt)がギター、トレイシー・ソーン(Tracey Thorn)がボーカル。なお、ポール・ウェラーは演奏に参加していない。
1983年8月リリースのシングル(Long Hot Summer)に収録の同曲は別の演奏で、ポール・ウェラーがボーカル。アコーディオンが入ったアレンジで、これもシャンソン風となっている。
A6. My Ever Changing Moods
ピアノ弾き語り風のバラード。
1984年2月リリースのシングルはバンド演奏バージョンで、女性コーラスも入ったソウル・テイストのポップ・ナンバーとなっている。
A7. Dropping Bombs On The Whitehouse
トランペットとサックスが活躍するソウル/ファンキー・ジャズ風。
B1. A Gospel
ラップ風。
ラップ部分はDizzy Hiteというラッパー(?)が担当している。
B2. Strength Of Your Nature
ファンク風。
後にメンバーとなるディー・C・リー(Dee C. Lee)が女性ボーカルで参加している。
B3. You're The Best Thing
ファルセットがメロウでムーディなソウル・テイストのポップ・ナンバー。
1984年5月リリースのシングルではストリングスが豊富に入ったフィリー・ソウル(フィラデルフィア・ソウル)風にアレンジされている。
B4. Here's One That Got Away
フィドルが活躍するアイリッシュパブ感のあるアレンジのポップ・ナンバー。
B5. Headstart For Happiness
ホーンが入ったソウル・テイストのポップ・ナンバー。
ディー・C・リーが女性ボーカルで参加している。
1983年5月リリースのシングル(Money Go Round)の12インチ盤に収録の同曲はギター弾き語りバージョン(デモ・バージョンに近い)。
B6. Council Meetin'
オルガンが活躍するソウル/ファンキー・ジャズ風。
ソウル、ファンク、ラップ、ジャズ、ボサノヴァ、シャンソン、映画音楽、ピアノ弾き語り、ギター弾き語り…と様々なスタイルの曲が並んでいる。
シングルでリリースされているものと演奏が別だったり、アレンジが違っていたりと、同じ曲が様々なスタイルで演奏されている。
ポール・ウェラー、ミック・タルボット、スティーヴ・ホワイト(ドラム)を中心としつつも、曲毎に様々なメンバーが参加しており、加えて付属しているブックレットには「評議員:Hon. Councillors (Honourable Councillors)」として紹介されている。








次作「アワ・フェイバリット・ショップ」の方が様々なスタイルを自家薬籠中の物としており、洗練されている。コンセプトもサッチャー保守党政権批判とはっきりとしており、アルバムとしてまとまりも良い。
一方で「カフェ・ブリュ」は、様々なスタイルをあれこれ試しているが、まだ自分の物に出来ていない。さらに言うなら、○○風、○○テイストではあるが、フェイク、紛い物といった感じがする。アルバム全体としてもとっ散らかっている印象がある。
だが、それだからこそ「スタイル評議会」をより強く感じさせる。
様々な曲(議題)について、ミュージシャン(評議員)が様々なスタイルで取り組む(議論する)、その様は正に「スタイル評議会」そのものだと思う。

ところで、このアルバムでは"Dropping Bombs on the Whitehouse"(ホワイトハウスへ爆撃)といったタイトルのインスト曲はあるものの、政治的主張や批判はあまり強く表現されていない。
孤独や不安感、素直なラブソングといったものの方が目立つ。
だが、ジャケット裏面の下にこの様な文章が掲載されている。

騙されてはならない。
彼らは「今は良くなっている」と言うが、騙されてはならない。
たとえ貧困が無くなった様に見えても、それは貧困が隠されているだけなのだ。
たとえ賃金が上がって、産業界が押し付けてくる新しくて無駄な商品を以前より多く買える様になったとしても、かつて無いほど多くを持っていると感じられる様になったとしても、それは、あなた達より遥かに多くを持ち続けている彼らの謳い文句に過ぎない。
言いなりになってはならない。
彼らは父親ぶってあなた達の肩を叩きながら「もはや語るほどの不平等はない、戦う理由もない」と言うが、言いなりになってはならない。
もし彼らの言うことを鵜呑みにすれば、「文化をもたらす」という名目で世界中の人達から搾取して得た財で築いた大理石の邸宅と花崗岩の貯蔵庫の中にいながら、彼らは完全に権力を握ることになるだろう。
警告しよう。彼らは自分達の金を守るために、彼らの都合次第で、あなた達を戦場に送り込むだろう。
そこで使われる、言いなりの科学者達により続け様に開発されていく武器は、いずれ指先ひとつで何百万人ものあなた達を粉々にする、取り返しのつかないものになるだろう。
ジャン=ポール・マラー
18世紀フランスの革新者
フランス革命の指導者の一人であるジャン=ポール・マラーの言葉とされるものである。
実際には1964年の戯曲で、1967年に映画にもなった「マルキ・ド・サドの演出のもとにシャラントン精神病院患者たちによって演じられたジャン=ポール・マラーの迫害と暗殺(略称:マラー/サド)」におけるマラーの台詞であるという。
このフランス革命指導者の言葉に接し、当時25歳のポール・ウェラーは大いに刺激を受けたのだろう、アルバムのジャケット裏面に掲載する。
そして、次作「アワ・フェイバリット・ショップ」で、その政治的主張や批判を爆発させることになる。
その意味でも「カフェ・ブリュ」は次作への序章といった位置付けのアルバムと言えるだろう。