レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Meat Is Murder / The Smiths【イスラエル盤】

前回ザ・スミスを採り上げてしまったので、続けざるを得ない。

 

ということで、今回の「レコード評議会」は「食肉は殺人である」「肉を食べるということは人殺しと同じだ」という過激なタイトルを冠するこのアルバムを議題に採り上げよう。

 

 

The Smiths

Meat Is Murder

イスラエル盤(1985年)

Rough Trade

ROUGH 81

SideA:ROUGH 81 AI / ILLNESS AS ART

SideB:ROUGH 81 BI / DOING THE WHYTHENSHAW WALTZ


f:id:Custerdome:20250831173734j:image

f:id:Custerdome:20250831173738j:image

f:id:Custerdome:20250831173750j:image

f:id:Custerdome:20250831173754j:image

SideA

 1. The Headmaster Ritual

 2. Rusholme Ruffians

 3. I Want The One I Can't Have

 4. What She Said

 5. That Joke Isn't Funny Anymore

SideB

 1. Nowhere Fast

 2. Well I Wonder

 3. Barbarism Begins At Home

 4. Meat Is Murder

 

 

1985年2月リリースの「Meat Is Murderミート・イズ・マーダー」。そのUKマザーイスラエル

 

 

モリッシーベジタリアン菜食主義者なのだが、それにしても「食肉は殺人である」とはあまりに過激な表現である。

 

 

日本ではこんなことが書かれたオビが付いている。

 

肉喰うな

現世の存在形態を問う、英国の知性スミス 注目の問題、最新アルバム‼︎

 

また、ミュージックマガジンに掲載の広告ではさらに煽る様なことが書かれている。

 

肉喰うな!

自分を喰ってみろ!

 


f:id:Custerdome:20250904223615j:image

f:id:Custerdome:20250904223612j:image

 

 

ジャケットは、1968年に公開されたベトナム戦争ドキュメンタリー映画In the Year of the Pig」で使われた写真が元ネタ。

元々はヘルメットに"Make War Not Love"(愛では無く戦争を)と書かれていたものを"Meat Is Murder"に書き換えている。

 


f:id:Custerdome:20250831175207j:image

f:id:Custerdome:20250831175204j:image

 

 

さてこの盤、UKマザーイスラエルなのだが、何故これを買ったのかと言うと、ビートルズの)イスラエル盤は「プレス枚数が少ないため音の鮮度が高い」「ビニール材質の違いからベースがよく鳴る」といった情報(←B-SELS情報)から、音の良さを期待してのこと。

 

で、実際のところどうかと言うと、これが本当に良い音で鳴る。音の鮮度が高く、ベースも跳ねる様によく鳴る。これ以上の音は望めないだろうというほどである。

 

 

それにしても、当時のイスラエルザ・スミスを聴いている人ってどれほどいたのだろうか?

 

f:id:Custerdome:20250904071757j:image

 

 

最後に、前回記事と同様、デッドワックスに刻まれたこの部分について触れておこう。

 

SideA:ROUGH 81 AI / ILLNESS AS ART

SideB:ROUGH 81 BI / DOING THE WHYTHENSHAW WALTZ

 

 

"ILLNESS AS ART"

直訳すると"病を芸術として"。

 

このフレーズは有名な言い回しなのかと思って調べてみたが、特にそれらしきものは無く、どうやらモリッシーによるオリジナルの表現の様である。

 

そうなのであれば、"病の芸術への昇華"、"病んでいるゆえの芸術"といったことを意味しているのだろうか。

 

精神的に病み気味のモリッシーならではの表現だと思う。

 

 

"DOING THE WHYTHENSHAW WALTZ"

"Doing The Whythenshaw Waltz" ?

"Doing The Why Then Shaw Waltz" ??

 

どういう意味?とChatGPT・Copilot・Geminiにそれぞれ尋ねてみると、様々な回答が返ってきた。それらをひとまとめにするとこんな感じである。

 

"Doing The Wythenshawe Waltz"を捩ったフレーズ(Whythenshawでは無く、Wythenshawe)

 

Wythenshawe(ウィゼンショーマンチェスター南部にある労働者階級向けの公営住宅(当時は欧州最大の公営住宅地)。1970年代、ジョニー・マーはここに住んでおり、ザ・スミスの地元とも言える場所。

 

Waltz(ワルツ)は三拍子の円舞曲のことで、オーストリアシュトラウス父子が有名。貴族階級・上流階級の優雅な踊りのイメージがある。

 

直訳すると"ウィゼンショー・ワルツを踊る"となるが、"労働者階級が住む街で上流階級の優雅なワルツを踊る"という、皮肉な表現。

 

アルバム・タイトル曲"Meat Is Murder"が三拍子のワルツであり、それにも引っ掛けている。

 

なるほど、AIによる考察もなかなかもっともらしい。

この様な意図を持って、モリッシーはこのフレーズを考えたのだろうと大いに納得。

 

が、ふと思った。

"Whythenshaw"は"Wythenshawe"を捩ったものだとして、では"Whythenshaw"にしたのは何故だろう? 単に発音やスペルが似ているからだけとは思えない。何かしらの意味があるのではないか? と。

 

"Whythenshaw"は"Why Then Shaw"に区切られるが、その意味は"では何故ショーなのか?"。

 

ここで"Shaw"は、展示会といった意味のショー(Show)では無く、人の名前と思われる。

思い付くのがジョージ・バーナード・ショー (Shaw)。

 

そこで彼のことを調べてみると…

 

ジョージ・バーナード・ショーGeorge Bernard Shaw(1856 - 1950)

アイルランド出身の文学者、脚本家、劇作家、評論家、政治家、教育家、ジャーナリスト。

 

イギリス近代演劇の確立者として53本もの戯曲を残した。代表作はミュージカル「マイ・フェア・レディ」の原作にもなった「ピグマリオン」や、1925年にノーベル文学賞を受賞した「聖女ジョウン」。

 

労働者を搾取する行き過ぎた資本主義や退廃的な貴族趣味を嫌い、男女平等、土地改革、労働者保護などの社会改革を掲げ、労働党の前身となるフェビアン協会の会員として活動した。

 

人間社会に対する厭世主義から「無価値な人間の処分」をしばしば唱え、その観点から人種主義や優生学も肯定していた。

 

文学、教育、政治などでの業績を讃えてイギリス王室からナイト称号の授与が提案されたが、これを拒否した。

 

ベジタリアン菜食主義者であり、様々な発言をしている。

"動物は私の友人だ。私は友人を食べたりはしない (Animals are my friends… and I don’t eat my friends)"

 "私は自分の体を動物の腐った死体のための墓場にする様なことはしない (I choose not to make a graveyard of my body for the rotting corpses of dead animals)"

"私の様に精神的強度を持つ者は死体を食べたりはしない (A man of my spiritual intensity does not eat corpses)"

 

 

ベジタリアンの立場からの"私は友人を食べたりはしない / 死体を食べたりはしない"といったバーナード・ショーの発言は、"Meat Is Murder食肉は殺人である"に通じるものがある。

 

また、ショーの王室からのナイト称号授与の拒否、人間社会に対する厭世主義、労働者階級支援の立場なども、モリッシーの王室批判、厭世的発言、労働者階級出身に通じるところがある。

 

これはもう間違い無い。

"Why Then Shaw"の"Shaw"はバーナード・ショーから来ているのは間違い無い。

 

となると、"Why Then Shaw"は"では何故バーナード・ショーなのか?"となる訳だが、それに対して回答をするならば"ベジタリアンだから"、"王室からのナイト称号授与の拒否したから"… となるのだろう。

 

 

この考察をChatGPTに問うてみたところ、こんな回答が返って来た

おお、鋭い視点です。ご指摘の 「WHYTHENSHAW → WHY THEN SHAW」 の読み替えは、確かに モリッシー的な言葉遊びの可能性を感じます。

まだまだAIには負けられない…

 

 

 

ということで、ザ・スミスであるにも関わらず、モリッシーの歌詞にも、ジョニー・マーのギターにも触れず、この議題は終わりとする。

 

ザ・スミス、もう少し続きます…