さて予告通り、ザ・スミスが続きます。
ということで、今回の「レコード評議会」は「女王は死んだ」という、イギリス(グレートブリテンおよび北アイルランド連合王国)でこれは大丈夫なのか?というタイトルを冠するこのアルバムを議題に採り上げよう。
The Queen Is Dead
イスラエル盤(1986年)
Rough Trade
ROUGH 96
SideA:ROUGH 96 A-1U-1-1- FEAR OF MANCHESTER
SideB:ROUGH 96 B-1U-1-1- THEM WAS ROTTEN DAYS







SideA
1. The Queen Is Dead
Take Me Back To Dear Old Blighty (Medley)
2. Frankly, Mr. Shankly
3. I Know It's Over
4. Never Had No One Ever
5. Cemetry Gates
SideB
1. Bigmouth Strikes Again
2. The Boy With The Thorn In His Side
3. Vicar In A Tutu
4. There Is A Light That Never Goes Out
5. Some Girls Are Bigger Than Others
1986年6月リリースの「The Queen Is Dead: クイーン・イズ・デッド」。そのUKマザーのイスラエル盤。
アルバム・タイトルはアメリカの作家ヒューバート・セルビー Jr. による1964年の小説「Last Exit to Brooklyn(ブルックリン最終出口)」の6つある章の1つ「The Queen Is Dead」から取っているのだという。
但し、きっかけはそうかも知れないが、イギリス人はこのアルバム・タイトルを「エリザベス女王は死んだ」と認識するだろうことは間違い無い。
実際、当時イギリスではかなりの波紋を呼んだらしい。
日本盤のオビにはこう書かれている。
これはひょっとしたら大変な事件だ。辛辣で過激な皇室批判を込めた、ロック史上空前の問題作。朽ち果てた大英帝国を救う鍵がここにある。
「皇室批判」とか「朽ち果てた大英帝国を救う鍵」とか、煽っているな、と。
イギリスは「王室」であって「皇室」とは言わない。「皇室」は日本独自の呼称(日本の天皇およびその一族の総称)であり、イギリスは「王室」(国王及び王族の総称)である。あえて「皇室批判」とオビに書いて目を惹こうとしたのだろう。
「朽ち果てた大英帝国を救う鍵」というのも大袈裟もいいところで、テキトーにも程がある。そんな訳ないだろう。
リリース当時、おいおい、大丈夫なのかこれ?と笑いながらこのオビを見ていたが、現在の感覚からすると明らかに"アウト"である。

ジャケットは、1964年のフランス映画「L'Insoumis」(英題:The Unvanquished、Have I the Right to Kill?、邦題:さすらいの狼)のラストシーン。
映画での映像そのものでは無く、宣伝用に別撮りされた写真なのだが、主演を務めるアラン・ドロンが床に倒れ込むシーンである。
当時モリッシーは1960年代の映画をよく見ていたのだという。
(映画での映像)




(宣伝用に別撮りされた写真とアルバム・ジャケット)


さて、肝心の盤についてだが、この盤も「ミート・イズ・マーダー」と同じく、UKマザーのイスラエル盤である。
で、これがまた良い音で鳴る。
鮮度の高い音で、キレの良いギター、輪郭がくっきりとしたベース、ビシビシと鳴るドラムが気持ち良い。
イスラエルでのプレス枚数は間違い無く少ないだろうし、ビニール材質も良質なのだろう。
UKオリジナル盤と同等もしくはそれ以上の音ではないか、と思えるほど良い音である。
それにしても、当時のイスラエルでザ・スミスを聴いている人ってどれほどいたのだろうか??
最後に、この盤についても、デッドワックスに刻まれたこの部分について触れておこう。
SideA:ROUGH 96 A-1U-1-1- FEAR OF MANCHESTER
SideB:ROUGH 96 B-1U-1-1- THEM WAS ROTTEN DAYS
"FEAR OF MANCHESTER"
"Fear of ・・・"は、・・・が怖い、・・・恐怖症といった意味("Fear of heights"は高所恐怖症、"Fear of flying"は飛行機恐怖症)。
また"Fear of God"というフレーズは、神を恐れる心(敬虔の念)といった意味である。
"Fear of ・・・"に地元のマンチェスターを当てて、 "マンチェスター恐怖症"、"マンチェスターを恐れる心"という意味を込めて、モリッシーは"Fear of Manchester"というフレーズを考えついたのだろう。
"THEM WAS ROTTEN DAYS"
ChatGPTによると、“them was”は"those were"の俗語的・方言的表現で、イギリス北部やアイルランドなどで耳にすることがあるのだという。
つまり、標準語では"Those Were Rotten Days"。
一方で、あの頃は良かった、あの頃が懐かしいという意味の"Those Were The Days"というフレーズがある。
これを元に、モリッシーは"Rotten Days"(腐った様に酷い日々)に、さらに“them was”といった俗語的・方言的表現に置き換え、"あの頃は腐った様に酷い日々だった"、 "あの頃は最悪だった"という意味の"Them Was Rotten Days"というフレーズを思い付いたのだろう。
ここで思ったのだが、A面"FEAR OF MANCHESTER"、 B面"THEM WAS ROTTEN DAYS"、 これらは対になっているのではないか。
学校や社会に馴染めなかった時代を振り返って、"あの頃のマンチェスターは最悪だった、腐っていた"とモリッシーはその気持ちを吐露しているのではないか、と。
ということで、ザ・スミスであるにも関わらず、モリッシーの歌詞にも、ジョニー・マーのギターにも触れず、この議題は終わりとする。
ザ・スミス、次で最後です…