レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Depois Dos Temporais / Ivan Lins【ブラジル盤】

去る2025年9月14日(日)、高崎に行ってきた。

 

イヴァン・リンスのライヴがあったのだ。

 


f:id:Custerdome:20250920142252j:image

f:id:Custerdome:20250920142248j:image

f:id:Custerdome:20250920142317j:image
f:id:Custerdome:20250920142322j:image

80歳のアニヴァーサリー・ツアーということで、ブラジル各地を回り、その後来日されたのだ。

 

9月9日(水)から12日(金)は東京(Blue Note Tokyo)、13日は金沢(北國新聞赤羽ホール)、14日は高崎(高崎芸術劇場)といったスケジュール。

 

昨年はリー・リトナー&デイヴ・グルーシンのプロジェクトにゲスト参加というかたちでの来日公演だったが、今回の来日は単独公演。

昨年来日時のミューザ川崎でのライヴについては以下の記事で触れてます。

Harlequin / Dave Grusin, Lee Ritenour With Special Guest Ivan Lins【US盤】

Brasil / Lee Ritenour, Dave Grusin【日本盤】

 

80歳という年齢で、東京・金沢・高崎と大幅移動もある6日間連続の公演はハード・スケジュール過ぎないか?高崎はその最終公演ということで体力的に大丈夫か?などと心配しつつ、見れるだけでも良しとしよう、と足を運んだのだが…

 

f:id:Custerdome:20250922100734j:image
f:id:Custerdome:20250922100730j:image

 

これが想像を遥かに超えた素晴らしいライヴだった。

 

イヴァン・リンス、その歌声はとても80歳とは信じられない。歌い上げる曲では誤魔化すこと無く、声を張り上げる。しっとりしたバラードではその説得力が素晴らしい。

 

バックの演奏も素晴らしいの一言。

 

ホスエ・ロペスの時にマイケル・ブレッカーばりの熱いサックス。

 

フェルナンド・モンテイロの時にパット・メセニーを思い起こすような多彩なギター(ブラジルのリズムにギターが絡む様は"Third Wind"の様だった)

 

ネマ・アントゥヌスのバンドの底辺をしっかり支える安定感のあるベース。

 

マルコ・ブリートのサウンド全体を彩るセンスの良いキーボード。グルーヴ感溢れるプレイに、イヴァンから「ハービー・ハンコックに指を切られない様に気をつけて(笑)」と言われていた。

 

テオ・リマのとても82歳とは思えない、スナップの効いたタイトでパワフルで多彩なドラム。イヴァンから「82歳、伝説のドラマー」と紹介されていたが、ホント凄かった。

 

 

曲も素晴らしかった。

一部知らない曲もあったが、ほとんどが耳にしたことのある曲。

 

セットリストは…

 

Daquilo Que Eu Sei

アルバム「Daquilo Que Eu Sei」(1981年)が初出。美しいメロディの曲だが、今回のライヴではリズミックなアレンジで演奏。

 

A Gente Merece Ser Feliz

アルバム「Acariocando」(2006年)が初出の様だ。キーボードを裏打ちで演奏しながら歌うイヴァンのリズム感に脱帽。

 

Depois Dos Temporais

アルバム「Depois Dos Temporais」(1983年)が初出。郷愁を誘うメロディのリフレインが美しく印象的。

 

Começar De Novo

アルバム「A Noite」(1979年)が初出。しっとりと歌われる美しい曲。英語バージョンは"The Island"。パティ・オースティンやサラ・ヴォーンなどによりカバーされている。

 

Lembra De Mim

アルバム「Anjo De Mim」(1995年)が初出。これもしっとりと歌われる美しい曲。英語バージョンは"Remember Me"。

 

Orozimbo E Rosicler

テオ・リマやマルコ・ブリートらによるグループBanda Guanabaraがイヴァンの曲をインストで演奏したセルフタイトル・アルバム(2011年)に収録。いわゆるブラジリアン・フュージョンで、このグループのためにイヴァンが提供した曲とのことだ。

 

Dinorah, Dinorah

アルバム「Somos Todos Iguais Nesta Noite」(1977年)が初出。クインシー・ジョーンズがプロデュースしたジョージ・ベンソンの「Give Me the Night」(1980年)でカバーされ、英語圏でも有名になった曲。ライヴでもイヴァンがそのことを紹介していた。

 

Love Dance

ジョージ・ベンソンの「Give Me the Night」(1980年)で採り上げたのが初出の様だ(この曲を採り上げたクインシー・ジョーンズはさすが名プロデューサー)。その後、サラ・ヴォーンなど数多くのミュージシャンにカバーされている。自身もワールドワイドにリリースされたアルバム「Love Dance」(1989年)でセルフカバー。またアルバム「Daquilo Que Eu Sei」(1981年)にはスペイン語バージョンの"Lembrança"が収録されている。名曲中の名曲で、イヴァンも「自身の作品の中でも好きな曲」と紹介していた。

 

Arlequim Desconhecido(Harlequin)

アルバム「Novo Tempo」(1980年)が初出。イヴァンをゲストに迎えたデイヴ・グルーシンとリー・リトナーのアルバム「Harlequin」(1985年)にも収録され、英語圏でも有名になった曲。

 

Ai Ai Ai Ai Ai

アルバム「Awa Yiô」(1990年)が初出。ライヴ終盤でメンバー紹介する際の定番曲。イヴァンによると「Ai Ai Ai Ai Aiの意味は何かと言うと、Ai Ai Ai Ai Aiです(笑)」とのこと。観客がサビの"Ai Ai Ai Ai Ai"を大合唱。

 

Lua Soberana

セルジオ・メンデスのアルバム「Brasileiro」(1992年)が初出の様だ。数多くのブラジル・ミュージシャンにカバーされている。イヴァンも「ブラジルで人気のある曲」と紹介していた。

 

ー アンコール −

Madalena

エリス・レジーナがシングル(1970年)で採り上げたのが初出。イヴァンが世に出るきっかけとなった曲。イヴァン自身によるバージョンはアルバム「Agora」(1970年)に収録されている。今回のライヴでは曲の終盤でウェザー・リポートの"Birdland"のフレーズが演奏され、それに乗せて観客がサビの"Mada, Madale, Madalelelelelelelena"を大合唱。

 

 

素晴らしい曲が目白押しだった。

 

個人的には、"A Noite"、 "Novo Tempo"、 "Vitoriosa" といった曲も聴きたかったが、贅沢を言い出したらキリが無い。

 

イヴァン・リンスの美しいメロディとブラジルなリズムに酔いしれた、あっという間の90分…  素晴らしいライヴだった。

 

 

と、ライヴ・レポートになってしまったが、そんな訳で今回の「レコード評議会」は…

 

 

Ivan Lins

Depois Dos Temporais

ブラジル盤(1983年)

Philips

81255212

SideA:812 552 12 1 01 ℗1983 200

SideB:812 552 12 2 01 ℗1983 200


f:id:Custerdome:20250918230557j:image

f:id:Custerdome:20250918230553j:image

f:id:Custerdome:20250918230613j:image

f:id:Custerdome:20250918230609j:image

f:id:Custerdome:20250918230629j:image

f:id:Custerdome:20250918230625j:image

SideA 

 1. Meu Piano

 2. Depois Dos Temporais

 3. Doce Presença

 4. Bonito

 5. Estória De Amor

SideB

 1. Tenho Mais É Que Viver

 2. Açucena

 3. Lembra

 4. Dos Que Ficaram

 5. Loucas De Maio

 

 

ライヴでも演奏されていた"Depois Dos Temporais"が収録されいるアルバム「Depois Dos Temporais」。

 

ちょうど1年前にイヴァン・リンスを立て続けに採り上げたが、その後中古レコ屋で発見して買ったものだ。

 

 

相変わらず、イヴァン・リンスらしい、美しいメロディで満ちている。

 

個人的に、特に気に入っている曲は以下の通り。

 

Depois Dos Temporais - After the Storm

ライヴでも演奏されていた美しい曲で、本作中で最も印象に残る。

ライヴと本作とでは曲の構成がやや違っており、郷愁を誘う美しいメロディのリフレインがライヴでは曲の冒頭から入っていたのに対して、本作では終盤になって初めてが登場する。

中間部とエンディングでのトランペット・ソロも印象的。

 

Bonito - Beautiful

ギターやベースによるアコースティックな響きをバックに優しく朗らかに歌われる。

時折フルートも入り、ボサノヴァな雰囲気もある。

中間部のジャズっぽいピアノ・ソロも良いアクセントになっている。

隠れ名曲。

 

Lembra - Remember

哀愁感のある曲調と洒落た曲調が入れ替わる。

イントロとエンディングでのソプラノ・サックスのソロや中間部ではトロンボーンとのユニゾンでスキャットが印象的。

後に英語バージョン"Even You And I"がアルバム「Love Dance」(1989年)に収録される。

 

 

このアルバムも前作「Daquilo Que Eu Sei」(1981年)と同様、1983年リリース当時はブラジルとポルトガルでしかリリースされていない。

 

今ではSpotifyなどのストリーミングで聴くことが出来るが、当時ブラジルとポルトガルでしか聴くことが出来ず、ワールドワイドに知られていなかったのは本当に勿体無いことだと思う。

 

f:id:Custerdome:20250926200328j:image

 

と、イヴァン推しをしていて何なのだが、ジャケットについては、…もう少し何とか… と思わないでも無い…

 

ブラジルでは当時こういうのがスタンダードだったのだろうか…

いや、アメリカやイギリスも含め、80年代という時代がそうだったのかも知れない。

 

まあ、内容が素晴らしいので良し、である。

 

 

 

ライヴの話に戻って恐縮だが、それにしても素晴らしいライヴだった。

 

ブラジルに帰国後、Facebookでイヴァン・リンスはこの様なコメントをしている。

 

ポルトガル語

Quando olho para trás, nem parece que foram 80 anos de vida ou 55 de carreira. Parece que ainda tenho 30, com tanta música guardada, tantos projetos na cabeça… A música é isso: um universo esplendoroso que faz parte da vida de todo mundo, essencial como a água e o ar. E o melhor de tudo é que me divirto, pois faço o que amo.

 

英訳

When I look back, it doesn't even seem like 80 years of life or 55 years of career. It feels like I'm still 30, with so much music stored away, so many projects in my head... Music is this: a splendid universe that's part of everyone's life, as essential as water and air. And best of all, I have fun, because I do what I love.

 

和訳

振り返ってみると、80年の人生や55年のキャリアがあったなんて思えない。まだ30歳のままのように感じるんだ。まだ心に温めている音楽もたくさんあるし、やりたいことも尽きない。音楽とは、壮大な宇宙であり、人生の一部であり、水や空気のように欠かせないもの。そして何より素晴らしいのは、それを心から楽しめていること。好きなことをしているからこそなんだ。

 

再来日を願う。

 

 

 

(おまけ)

8月終わり頃から「レコード評議会」におけるイヴァン・リンスの記事の閲覧が明らかに増えていた。

来日を待つファンが覗いてくれたのだろう。

 

イヴァン・リンスはコアなファン(※)が多そうなので、その様な方に読んでいただけたのであればとても光栄なことです。

まだまだ甘いな、と言われそうで少し怖いですが…(笑)。

 

(※) 高崎のライヴ会場に来ていた方の中にも、明らかにコアなファンは数多くいました。出待ちされている方もいました(かく言う私も妻と一緒に出待ちしましたが…)。その中にも記事を見てくれていた方がいたかも知れないと思うと、恐縮してしまいます。