イヴァン・リンスの高崎ライヴに行って以降、ブラジル・モードになってしまっている。
そんな訳で、前回はジャヴァンの6thアルバム「Lilás:リラス(ライラックの祈り)」だったのだが、今回は何を採り上げようかと思っていたところに、こんな盤を中古レコ屋で見つけてしまった。
ということで、今回の「レコード評議会」は…
Djavan
Meu Lado
日本盤(1986年)
Epic / Sony
28•3P-746
SideA:28-3P-746A1 〄CS
SideB:28-3P-746B1






SideA
1. Beiral
2. Segredo
3. Romance (Laranjinha)
4. Quase De Manhã
5. Muito Mais
SideB
1. Asa
2. Topázio
3. Lei
4. Nkosi Sikelel' I-Afrika
So Basniya Ba Hlala Ekhaya
ジャヴァンの7thアルバム「Meu Lado:メウ・ラード」。
店頭に置かれていた盤のオビにはこう書かれている。
⚫︎ゲスト/デヴィッド・サンボーン A-④
⚫︎プロデュース/ジャヴァン
⚫︎録音/ブラジル
⚫︎Banda Sururu De Capote
Sizão Machado:Bass
Téo Lima:Drums
Hugo Fattoruso:Keyboards
Jota Moraes:Keyboards
Armando Marçal:Percussion
Zé Nogueira:Sax
Moisés:Trombone
Henrique:Trumpets
ブラジルEMI時代から一緒に演奏し、前作「Lilás:リラス (ライラックの祈り)」にも参加しているシザォン・マシャード(ベース)、テオ・リマ(ドラム) 。
これらのメンバーとの地元ブラジルでの録音ということは、アメリカ・ロサンゼルス録音の「Luz:ルース (光)」と「Lilás:リラス (ライラックの祈り)」を経ての原点回帰ということなのだろうか。
一方で、フュージョンやAOR界隈で引手数多のデビッド・サンボーンもゲスト参加している。
また、翌年1987年にパット・メセニー・グループへ加入することになるアーマンド・マーサル(パーカッション)の参加も興味深い。
これは、ブラジルのリズムと洗練された響きが両立した極上のサウンドが期待出来るのではないか?
ということで買ったのがこのアルバムである。
で、実際に聴いてみると…
A1. Beiral:ベイラル(軒)
ボサノヴァとAORがフュージョンした様なナンバー。バックを彩るセンスの良いストリングスとブラス・セクションはルイス・アヴェラール(前作ではキーボードで参加)のアレンジ。
A2. Segredo:セグレード(秘密)
ジャジーな雰囲気のスロー・ナンバー。ウルグアイのマルチ・ミュージシャン、ウーゴ・ファトルーソによるピアノ・ソロが秀逸。
A3. Romance (Laranjinha):ロマンセ(ラランジーニャ)
独特な曲調(ブラジル北東部のショッチというリズムらしい)で、 アコーディオンも入った軽快なアコースティック・ナンバー。個人的にはアーマンド・マーサルのパーカッションが聴きどころ。
A4. Quase De Manhã:夜明け前
本作中で最もポップな曲。アルト・サックスのソロはデビッド・サンボーン。一聴してそれとすぐ分かる、いつものサンボーン節。
A5. Muito Mais:もっとたくさん
ブラジルの民謡(?)の様な曲調で、このノリはブラジルのメンバーならではだろう。
B1. Asa:アザ(翼)
本作中で最もファンク色が強い曲。軽快なリズムとホーン・セクションが活躍するブラジリアン・ファンク(?)といった感じ。
B2. Topázio:トパジオ
タイトルは宝石のトパーズのこと。ゆったりとしたテンポに美しいコーラスが重なるバラード。
B3. Lei:レイ(愛の奇跡)
サンバのリズムにブラス・セクションが活躍するナンバー。ジャヴァンのアコースティック・ギターによるソロが聴ける。
B4. Nkosi Sikelel' I-Afrika:アフリカに祝福を
So Basniya Ba Hlala Ekhaya:この国を出て行こう
南アフリカのグループであるアマンドラ(Amandla Cultural Ensemble)との合唱曲。前者は反アパルトヘイト運動のシンボルとなっていた曲(後に南アフリカなどの国歌の一部となっている)。後者はアマンドラが作った曲。当時の反アパルトヘイト運動に呼応するかたちで採り上げたものであろう(英米アーティストによる"Sun City"がリリースされたのは1985年)。
サンバやボサノヴァといったブラジルのリズムに、ジャヴァンならではのメロディと歌声が乗り、センスの良いストリングスやブラスが重なる。
アメリカ・ロサンゼルス録音である80年代サウンドの前作「Lilás:リラス(ライラックの祈り)」とは明らかに違う、 ブラジルを強く感じさせる音作りである。
その一方で、とても都会的な響きもある。
言わば、洗練されたブラジリアン・フュージョンといった感じだろうか…
期待通りの極上と言って良いサウンドだ。
個人的には、前作「Lilás:リラス(ライラックの祈り)」より好みのサウンドである。
アルバム・タイトルの「Meu Lado」は英語に置き換えると「My Side」であり、私の側、私の一面、私の仲間… といった意味。
ブラジルを軸に置きつつ様々な音楽を取り入れたジャヴァンがブラジルの仲間と作る音楽、といったことを表現している、なかなか良いタイトルである。

最後に、日本盤のオビにはこうも書かれている。
感じるまま音楽。
あたたかな風、ときめきの光。
心優しきイメージのマジシャン、
ジャヴァン。
素敵なフュージョン感覚、第3弾。
80年代のフュージョンやAORのオビにありがちなコピーである。
「素敵なフュージョン感覚」というのは、まあ分からないでも無い。
が、その他はムードに任せて言葉を並べただけの様なコピーである。
「心優しきイメージのマジシャン」って何なのでしょうか?
時は1986年、バブルの香りが漂うコピーである…
が、こういうのは嫌いでは無い。