ジャヴァンが続いている。
洗練されたブラジリアン・フュージョンの様なサウンドにブラジルな歌声が乗る。
聴けば聴くほど良いではないか、ジャヴァン。
…と気持ち良く聴きながらネットを見ていたら、こんな盤を見つけてしまった。
ということで、今回の「レコード評議会」も…
Djavan
Seduzir
ブラジル盤(1981年)
EMI
31C 064 422888D
SideA:422888-DA 1-1-1-6
SideB:422888-DB 1-1-1-9





SideA
1. Pedro Brazil
2. Seduzir
3. Morena De Endoidecer
4. Jogral
5. A Ilha
SideB
1. Faltando Um Pedaço
2. Êxtase
3. Luanda
4. Total Abandono
5. Nvula Ieza Kia / Humbiumbi
ジャヴァンの4thアルバム「Seduzir:誘惑〜セデュジール」。
CBSに移籍する前、ブラジルEMI時代最後のアルバムであり、1981年当初はブラジルとポルトガルのみでリリースされたものである。
続くCBSからリリースの「Luz:ルース (光)」や 「Lilás:リラス (ライラックの祈り)」でワールドワイドな飛躍を果たすのだが、この時点ではローカルな位置付けだった訳だ。
だがこのアルバム、内容は素晴らしく良い。
自身のバンド Banda Sururu De Capote (バンダ・スルルー・ヂ・カポーチ) を結成し、更なる飛躍に向けた意気込みの様なものが感じられるアルバムなのだ。
Banda Sururu De Capote
Luiz Avellar:Keyboards
Sizão Machado:Bass
Téo Lima:Drums
Café:Percussion
Zé Nogueira:Sax, Flute
Marquinhos:Sax, Flute
Moisés:Trombone
A1. Pedro Brazil:ブラジルのペドロ(ペドロ・ド・ブラジル)
ストリングスが奏でる美しいイントロから始まり、躍動感のあるテオ・リマのドラムが続く。エレピやブラスが入ったブラジリアン・フュージョン、ブラジリアンAORといった感じの曲調に伸びやかなジャヴァンの歌声が乗る。
A2. Seduzir:誘惑(セデュジール)
ルイス・アヴェラールの美しいピアノから始まる。まるでキース・ジャレットのヨーロピアン・カルテットといった感じの曲調。サビに入り、ハンドクラップも交えた躍動感のあるリズミックな曲調に展開する。
A3. Morena De Endoidecer:モレーナ・ヂ・エンドイデッセール
物悲しい曲調のジャヴァンによる弾き語り。後半には美しいストリングスが入ってくる。
A4. Jogral:ジョグラル
歌声をエレピに置き換えたらアジムスと言っても分からないほどブラジリアン・フュージョンな曲。ルイス・アヴェラールのミニ・ムーグのソロも良い感じ。
A5. A Ilha:島(ア・イリャ)
ロマンチックな雰囲気のバラード。フレンチ・ボッサの様な雰囲気もあり、ヴァイオリン・ソロはステファン・グラッペリを思い起こさせる。
B1. Faltando Um Pedaço:ファルタンド・ウン・ペダッソ
1975年にFestival Aberturaで2位を受賞した曲。押しては返す波の様にゆったりとしたナンバー。サビのリフレインが印象的。ミルトン・ナシメントが歌ったら、彼の曲と思いそう。
B2. Êxtase:エクスタシー
ファンキーなブラス、パーカッション、ドラムが活躍するアップテンポのサンバ・ナンバー。シザォン・マシャードのファンキーで細かい動きのベースも聴きもの。
B3. Luanda:ルアンダ
本作制作前にジャヴァンはアフリカのアンゴラ(首都はルワンダ)に行っていたそうで、その影響が感じられるアフリカのリズムを取り入れたナンバー。
B4. Total Abandono:トタル・アバンドノウ
アントニオ・カルロス・ジョビンっぽい曲。スキャットが洒落ている。小品ながらジャヴァンの才能を感じさせる小粋なナンバー。
B5. Nvula Ieza Kia / Humbiumbi:ンブラ・レザ・キア / ウンビウンビ
アンゴラの歌手フィリペ・ムケンガ (Filipe Mukenga) の曲を取り上げたもの。ジルベルト・ジルをゲストに迎えたリズミックな前半、少し物悲しい曲調の後半からなるメドレー。
先に採り上げた、ブラジルの仲間と作り上げた7thアルバム「Meu Lado:メウ・ラード」と同じ雰囲気もあるが、同アルバムの方が洗練度合いは上。
一方で「Seduzir:誘惑〜セデュジール」の方は良い意味でブラジルならではの土着性がより感じられる。
また曲調もバラエティに富んでおり、様々なスタイルを取り込もうとしていたジャヴァンの意気込みが感じられる。
以前に、昇り詰める一歩手前の作品にはそれゆえの熱量、躍動感、実験精神が溢れていることが多いと書いたが(「Sgt. Pepperの一つ前:Revolver」「A Night At The Operaの二つ前:Queen II」「Ajaの一つ前:The Royal Scam (幻想の摩天楼)」などが良い例)、この「Seduzir:誘惑〜セデュジール」もそうだと思う。
聴けば聴くほど良いではないか、ジャヴァン。
そんなことを言っていたら、もともとブラジル音楽を教えてくれた妻に「ジャヴァンは良いよ!(今さら何を言う)」と言われてしまいました(笑)。