前回はモントレー・ジャズ・フェスティバル(Monterey Jazz Festival)におけるライヴ盤だった。
Forest Flower : Charles Lloyd At Monterey【US盤】
それならば今回の「レコード評議会」はこれにしよう。
Bill Evans At The Montreux Jazz Festival
US盤(1968年)
Verve Records
V6-8762
SideA:V-6 8762 SIDE 1 MGS 1706
SideB:V-6 8762 SIDE 2 MGS 1707




SideA
1. One For Helen
2. A Sleeping Bee
3. Mother Of Earl
4. Nardis
SideB
1. I Loves You Porgy
2. The Touch Of Your Lips
3. Embraceable You
4. Someday My Prince Will Come
5. Walkin' Up
Bill Evans(ビル・エヴァンス)のトリオによる1968年6月15日録音のモントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival、1968年6月12〜16日)におけるライヴ盤。
前回(「Forest Flower」)はモントレー(Monterey、アメリカ西海岸)、今回はモントルー(Montreux、スイス・レマン湖畔)である。
メンバーは以下の通り。
Bill Evans(ビル・エヴァンス)ピアノ
Eddie Gomez(エディ・ゴメス)ベース
Jack DeJohnette(ジャック・ディジョネット)ドラム
前回(「Forest Flower」)と今回の両方ともJack DeJohnetteが参加している。
このアルバム、ジャズ界隈では説明不要の名盤で、ジャケットにちなみ「お城のエヴァンス」と呼ばれるBill Evansの代表作の一つである。
この城はシヨン城という名のレマン湖畔に建つ中世の古城。
とても雰囲気のあるジャケットで、アルバムの知名度向上に一役買っていると言えよう。
実際の演奏はこの城で行われた訳では無く、フェスティバル会場はレマン湖畔のカジノ・バリエール・ドゥ・モントルー(通称モントルー・カジノ)である。
アルバムは、こんなアナウンスから始まる。
(スイス・ロマンド放送でジャズを担当し、モントルー・ジャズ・フェスティバルを立ち上げた1人であるGéo Voumardによるフランス語でのアナウンス)
Mesdames, Mesdemoiselles, Messieurs
On drums, Jack DeJohnette!
A la contrebasse, On bass, pour la première fois en Suisse, Eddie Gomez!
Tous deux sont les partenaires du pianiste, Bill Evans!
ご来場の皆様(レディース・アンド・ジェントルマン)
ドラムは、ジャック・ディジョネット!(拍手)
ダブル・ベースには、スイス初登場となるエディ・ゴメス!(拍手)
そしてこの二人と演奏するは、ピアニストのビル・エヴァンス!(拍手)
盛り上がる会場の雰囲気を伝える、素晴らしい導入部だ。
ちなみに拍手は、当然ながらBill Evansが一番大きいが、 Eddie GomezよりJack DeJohnetteの方が大きい。
前年1967年に第1回モントルー・ジャズ・フェスティバルが開催されたのだが、それにCharles Lloyd(チャールス・ロイド)が出演、メンバーとしてJack DeJohnetteも参加していたため、と思われる。
そんなアナウンスと拍手に続いて、ピアノ、ベース、ドラムによるトリオの演奏が始まるのだが、Bill Evansのトリオと言えば、"インタープレイ"。
ベースとドラムがピアノの伴奏となるのでは無く、3つの楽器それぞれがまるで主役のように演奏しながらも相互に影響を与えながら有機的に結び付き、一体感のある音楽を成り立たせる、そんな演奏である。
個人的に好きな曲・演奏は…
A1. One For Helen
Bill Evansのオリジナル曲で、マネージャー兼プロデューサーであるHelen Keaneに捧げたもの。
アナウンスと拍手に続いてピアノ、ベース、ドラムと重なっていくオープニングでもう名盤を確信。ドライヴ感が凄い。
A2. A Sleeping Bee
1954年のミュージカル「ハウス・オブ・フラワーズ」の挿入歌。
ミドルテンポの曲で、リラックスしたスウィング感が素晴らしい。
A4. Nardis
Miles Davisが作曲したものだが、Bill Evansが十八番として演奏し続けている曲。
Scot LaFaroとPaul Motianとのトリオによるアルバム「Explorations」(1961年)にも収録されている。
リリカルでビター、品位を感じさせる演奏。
B1. I Loves You Porgy
ジョージ・ガーシュウィンが1935年に作曲したオペラ「ポーギーとベス」の挿入歌。
この曲はピアノ単独演奏であり、Bill Evansの繊細なタッチがよく分かる。色彩豊かな響きで、音だけで聴けてしまう。
B4. Someday My Prince Will Come(いつか王子様が)
1937年のウォルト・ディズニーによるアニメ映画「白雪姫」の挿入歌。
Scot LaFaroとPaul Motianとのトリオによるアルバム「Portrait in Jazz」(1960年)にも収録されている。
3拍子のワルツで優雅な曲調ながら、アドリブでのドライヴ感が凄い。
Bill Evansの"インタープレイ"と言えば、1959年から1961年のScot LaFaro(スコット・ラファロ、ベース)、Paul Motian(ポール・モチアン、ドラム)とのトリオが有名だが、 本作でもそれに劣らずの演奏が繰り広げられている。
この後Jack DeJohnetteは Miles Davis(マイルス・デイヴィス)に引き抜かれる。このため、Bill Evans、 Eddie Gomez、 Jack DeJohnette、 このメンバー3人によるアルバムは本作のみである。
その意味でも「お城のエヴァンス」、貴重なライヴの記録であり、そして名盤である。

手元にある盤はUS盤ながら、日本語のライナーノーツが付いている。
Discogsによると、1968年当時、日本ではアメリカから輸入したUS盤にライナーノーツとオビを付けて2,200円で発売していたとのことである。

1968年6月12〜16日
モントルー・ジャズ・フェスティバル(Montreux Jazz Festival)のポスター
