今回の「レコード評議会」もグレイトフル・デッドを採り上げます。
今から10年前、2015年頃に中古レコード店で1千円で購入したものです(今となってはこの値段では買えないでしょう)。
Grateful Dead
Skeletons From The Closet
US盤(1974年)
Warner Bros. Records
W 2764
SideA:S 1 W-2764 40963-1C [TLC] A1
SideB:S 1 W-2764 40964-1C [TLC] A7




1974年にリリースされたベスト盤「スケルトンズ・フロム・ザ・クローゼット」。
デビューした1967年から1972年までにワーナー・ブラザースにてリリースされたアルバムからの選曲です。
1973年に自主レーベル Grateful Dead Recordsを立ち上げ、ワーナー・ブラザーズとは袂を分っていますので、デッドはこのベスト盤の製作に関与していません。保有している音源を活用してワーナー・ブラザースが勝手に製作したものです。
「ザ・グレイトフル・デッド:The Grateful Dead」(1967年、1stスタジオ・アルバム)収録曲
A1. The Golden Road (To Unlimited Devotion)(歌:ジェリー・ガルシア)
「アオクソモクソア:Aoxomoxoa」(1969年、3rdスタジオ・アルバム)収録曲
A3. Rosemary(歌:ジェリー・ガルシア)
A5. St. Stephen(歌:ジェリー・ガルシア)
「ライヴ/デッド:Live/Dead」(1969年、ライヴ盤 )収録曲の短縮版
「ビッグ・ボール:The Big Ball」(1970年、ワーナー・ブラザースのコンピレーション盤)収録曲
B3. Turn On Your Love Light(歌:ロン・"ピッグペン"・マッカーナン)
「ワーキングマンズ・デッド:Workingman's Dead」(1970年、4thスタジオ・アルバム)収録曲
A6. Uncle John's Band(歌:ジェリー・ガルシア、ボブ・ウィアー、フィル・レッシュ)
B1. Casey Jones(歌:ジェリー・ガルシア)
「アメリカン・ビューティー:American Beauty」(1970年、5thスタジオ・アルバム)収録曲
A2. Truckin'(歌:ボブ・ウィアー)
A4. Sugar Magnolia(歌:ボブ・ウィアー)
B5. Friend Of The Devil(歌:ジェリー・ガルシア)
「エース:Ace」(1972年、ボブ・ウェアーのソロ・アルバム、グレイトフル・デッドのメンバーが参加)収録曲
B2. Mexicali Blues(歌:ボブ・ウィアー)
「ヨーロッパ '72:Europe '72」(1972年、ライヴ・アルバム)収録曲
B4. One More Saturday Night(歌:ボブ・ウィアー)
"Box Of Rain"や"Ripple"といった名曲が入っていないのが少々残念ですが(2曲とも「アメリカン・ビューティー」収録)、初期のサイケデリックなものから、ブルース、R&B、ロックンロール、フォーク、カントリー… と色々な顔のデッドを手軽に聴ける、入門編としては最適なアルバムです。
次に、このアルバムのタイトル「Skeletons From The Closet」について考えてみたいと思います。
元ネタは「Skeleton In The Closet」という慣用句です。
直訳すると「クローゼットの中の骸骨」ですが、「クローゼットの中に隠されたヤバいもの」から転じて「他人に知られたくない隠し事、恥ずかしい過去」という意味で使われます。
では、タイトルの「Skeletons From The Closet」は何を意味するのでしょうか?
直訳すると「クローゼットの中から出て来た骸骨たち(複数形)」、つまり「表に出てしまったヤバいもの」「晒されてしまった恥ずかしい過去」といった意味になります。
加えて、骸骨はデッドのトレードマークですので、「ワーナー・ブラザースの倉庫(クローゼット)から引っ張り出してきたデッドの音源(骸骨たち=ヤバいもの)」といった意味もあるのでしょう。
さて、ここでレーベルを改めて見たところ
The Best Of Grateful Dead
Skeletons From The Closet
なのかと思いきや…

Grateful Dead
The Best Of "Skeletons From The Closet"
と書かれています。
つまり「"ワーナー・ブラザースの倉庫(クローゼット)から引っ張り出してきたデッドの音源(骸骨たち=ヤバいもの)" の中でベストなもの」ということなのでしょう。
なかなか洒落たタイトルです。
続いて、ジャケットについて触れておきます。
手掛けたのは、ジョン・ヴァン・ハマーズヴェルド(John Van Hamersvelt)。
アメリカの伝説的なグラフィックデザイナー、イラストレーターで、サーフ・カルチャーからロック、ヒッピーを融合させたポップな作風で知られています。
手掛けたポスターにはこの様なものがあります。












映画「エンドレスサマー」のポスター(左上)が出世作です。
アルバム・ジャケットも手掛けています。


















「マジカル・ミステリー・ツアー」US盤のデザインや「メインストリートのならず者」など、有名どころも多数手掛けています。
そんなジョン・ヴァン・ハマーズヴェルドが手掛けたこのアルバム・デザインですが、様々なものが描かれており、実に面白いです。

骸骨と薔薇はアルバム「Grateful Dead(通称Skull and Roses)」を連想させます。
骸骨の左手にはタバコもしくは葉っぱ。右手にはゴールド・ディスクが回っています。
ボッティチェッリの「ヴィーナス誕生」のヴィーナスは美の女神ということで「American Beauty」を連想させます。
彼女の右手の爪はレコード針になっています。
サングラスを掛けた胡散臭げな男は葉っぱの売人でしょうか?
ヴィーナスの腕を掴む彼の赤い右手は悪魔を表しているようにも思えます。なお本作には"Friend Of The Devil"が収録されています。

左から映画「乱暴者(The Wild One)」で主人公を演じるマーロン・ブランド、アカデミック・ガウンを羽織るイエス・キリストと思しき人物、映画「シスコ・キッド」で主人公を演じるにセザール・ロメロ。この3人がトランプに興じています。
机の上には、アメリカの食事の象徴であるハンバーガーとケチャップ。
地球儀に、エコロジー・フラッグのマークが書かれたマッチが置かれています。
背景には、空飛ぶ円盤、フランク・ロイド・ライト設計のジョンソン・ワックス・ビル。
そして近未来的なデザインのダイマクション・カー、運転席には車をデザインしたバックミンスター・フラーの姿も見えます。










ということで、デッドを手軽に聴ける入門編として、洒落たタイトルやジャケットの面白さも相まって人気が高いアルバムです。
デッドの意向に関係無く製作されたベスト盤ではありますが、ワーナー・ブラザース、なかなか良い仕事をしていると思います。
1980年にはゴールド・ディスクに認定されています。ジャケットにゴールド・ディスクが描かれていますが、その通りになった訳です。
その一方で、デッドヘッズ(熱狂的なファン)からは否定的な意見もある様です。
デッドヘッズは「デッドとは聴くものでは無く、そこで体感するもの(You don’t listen to the Dead. You go there)」と捉えています。
そんな彼らにとって「ベスト盤はデッドに似つかわしくない、しかもレコード会社が勝手に製作したベスト盤であればなおさら認められない」という訳です。
何だか分かる気もします。
とは言うものの、デッドヘッズであれば「こんなベスト盤はデッドでは無い」と文句を言いつつ、結局買っているはずです。
そして「こんなベスト盤でデッドの何が分かるんだ?」と文句を言いつつ、聴いているはずです。
文句を言いつつ、買う、聴く。それもまた楽しい。
これがコアなファンというものです。