レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Blues For Allah / Grateful Dead【US盤】

今回の「レコード評議会」もグレイトフル・デッドを採り上げます。

 

 

デッドは、1974年6月に「フロム・ザ・マーズ・ホテル」を発表した後、同年10月より1976年6月まで1年半以上にわたってライヴ・ツアーを休止。

その間にスタジオで制作に取り組んだのがこのアルバムです。

 

 

Grateful Dead

Blues For Allah

US盤(1975年)

Grateful Dead Records

GD-LA494-G

SideA:T GD-LA 494-1-1  [Artisan logo]

SideB:1T GD-LA 494-2-1  [Artisan logo]  ∧


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SideA

 1. Help On The Way

 2. Slipknot!

 3. Franklin's Tower

 4. King Solomon's Marbles

 5. Stronger Than Dirt Or Milkin' The Turkey

 6. The Music Never Stopped

SideB

 1. Crazy Fingers

 2. Sage & Spirit

 3. Blues For Allah

 4. Sand Castles & Glass Camels

 5. Unusual Occurances In The Desert

 

 

1975年9月発表のスタジオ8作目となるアルバム「ブルース・フォー・アラー」。

 

ライヴ盤を含めると通算12作目、1973年に設立した自主レーベルGrateful Dead Recordsでは第3弾となるアルバムです。

 

 

アラー( اَللهُAllāh、アッラー、アッラーフ)とは、アブラハムの宗教(ユダヤ教・キリスト教・イスラム教)の「神(唯一絶対の神、創造主)」に対するアラビア語の呼称です。英語ではGodに当たる言葉です。

 

ブルース・フォー・アラーBlues For Allah」というタイトルからして、どの様な音楽なのだろう?と思わせるものがあります。

 

 

デッドはアルバム制作に際してライヴで演奏を重ねて完成した楽曲をスタジオで録音することが多かったのですが、このアルバムではスタジオでゼロから楽曲を作るという方法を取っています。

 

今まで以上に実験的な曲も収録されています。中には呪術的な雰囲気を漂わせるものもあります。

 

A1. Help On The Way

A2. Slipknot!

A3. Franklin's Tower

A1とA2は一体の曲で、A3も切れ目無く演奏されます。

A1はジェリー・ガルシアがボーカルを取る、ゆったりとしたブルージーなナンバーです。

続いてインプロビゼーション・パートから自然にA2に移行します。変拍子も交えたプログレ掛かったジャズ・ロック調のインスト・ナンバーです。

そして一転、軽快なA3が始まります。肩の力を抜いた演奏に乗って、ジェリー・ガルシアが"Roll away the dew"と歌います。

ライヴでもこの3曲は切れ目無く演奏されており、組曲の様に捉えるのが良いのでしょう。

 

A4. King Solomon's Marbles

A5. Stronger Than Dirt Or Milkin' The Turkey

この2曲も一体の曲で、疾走感のあるジャズ・ロック調のインスト・ナンバーです。ジャム・バンドの先駆けと言われたデッドですが、正にその通りの演奏が展開します。

 

A6. The Music Never Stopped

ボブ・ウィアーのボーカルにドナ・ジーン・ゴドショウのコーラスが絡むファンキーでソウルフルなナンバーです。珍しくサックスも入っています。

 

B1. Crazy Fingers

ジェリー・ガルシアがボーカルを取るレゲエ調のナンバーです。レゲエのリズムとふわふわと夢心地なキーボードに乗って奏でられるギター・ソロが何とも良い感じです。

 

B2. Sage & Spirit

ボブ・ウィアーが作曲のアコースティック・ギターとフルートによるバロック調のインスト・ナンバーです。タイトルの通り、賢者(アコースティック・ギター)と精霊(フルート)の二重奏です。

 

B3. Blues For Allah

B4. Sand Castles & Glass Camels

B5. Unusual Occurances In The Desert

切れ目無く演奏される、3部構成の組曲です。

B3は拍子がはっきりとしない呪術的な旋律で"Blues For Allah"と歌われます

B4は幻覚体験を音にした様な、フリー・フォームによるインストです。

B5は"Under eternity(永遠の元に)"が繰り返し歌われるミニマル・ミュージックです。最後にB3のメロディが再現されて曲は終わります。

 

 

ジャケットについても触れておこうと思います。

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赤いトーブ(アラブ諸国で着用される民族衣装)を纏ってサングラスを掛けた骸骨がフィドルを弾いています。

 

フィリップ・ギャリス(Philip Garris)が1974年の夏に描いた作品「The Fiddler」がジャケットとなっています。

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裏ジャケットです。

バンドのメンバーが描かれています。

 

上段左からキース・ゴドショウ(Key.)ドナ・ジーン・ゴドショウ(Vo.)フィル・レッシュ(Ba. Vo.)

下段左からボブ・ウィアー(Gt. Vo.)ジェリー・ガルシア(Gt. Vo.)ビル・クルーツマン(Dr.)と計6人です。

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ところが、1971年から一時脱退していたものの、このアルバム制作から復帰しているミッキー・ハート(Dr.)が描かれていません。

復帰したとは言え、この時点ではまだ準メンバーもしくはゲストとの位置付けだったのでしょうか?

 

 

さて最後に、個人的に本アルバムの中で最も感銘を受けた曲"Franklin's Tower"の歌詞を紹介したいと思います。

 

In another time's forgotten space

Your eyes looked from your mother's face

Wildflower seed on the sand and stone

May the four winds blow you safely home

 

Roll away the dew

 

忘れ去られた時の、忘れ去られた場所で

君は母親の顔を通じて世界を見ていた

砂と石の上に蒔かれたワイルドフラワーの種

四つの風が君を無事に家へ送り届けてくれますように

 

露は振り払えば良い

 

I'll tell you where the four winds dwell

In Franklin's tower there hangs a bell

It can ring, turn night to day

It can ring like fire when you lose your way

 

Roll away the dew

 

四つの風がどこに宿っているのか教えよう

フランクリンの塔には鐘が一つ吊るされている

その鐘は鳴り響き、夜を昼へと変える

道に迷った時、その鐘は炎のように鳴る

 

露は振り払えば良い

 

God save the child who rings that bell

It may have one good ring, baby, you can't tell

One watch by night, one watch by day

If you get confused, listen to the music play

 

その鐘を鳴らす子どもに神の御加護を

鐘は一度だけは良い音で鳴るかもしれないが、確かなことは分からない

夜には夜を見張るものがあり、昼には昼を見張るものがある

迷ってしまったら、音楽に耳を傾ければ良い

 

Some come to laugh their past away

Some come to make it just one more day

Whichever way your pleasure tends

If you plant ice, you're gonna harvest wind

 

Roll away the dew

 

過去を笑い飛ばしに来る者もいれば

今日をやり過ごすために来る者もいる

君のしたいことが何であれ

氷しか植えなければ、風しか収穫は出来ないだろう

 

露は振り払えば良い

 

In Franklin's tower the four winds sleep

Like four lean hounds the lighthouse keep

Wildflower seed in the sand and wind

May the four winds blow you home again

 

Roll away the dew

You'd better roll away the dew


フランクリンの塔には四つの風が眠っている

四匹の痩せた猟犬が灯台を守るように

砂と石の上に蒔かれたワイルドフラワーの種

四つの風が君を再び家へ送り届けてくれますように

 

露は振り払えば良い

そう、露なんて振り払ってしまえば良いさ

 

ロバート・ハンターの詩は多くの比喩が用いられ、解釈を聴き手に委ねるため、表面的には分かりにくいものですが、この様に捉えると良いのかも知れません。

 

Franklin's tower(フランクリンの塔)bell(鐘)four winds(四つの風)music(音楽):迷いや混乱の中で進むべき方向を示してくれるもの、あるいは世界の流れそのもの

 

wildflower(ワイルドフラワー、野生の草花):自然のままに生きる自由な精神

 

dew(露):やがて消えていく、一時の苦しみや迷い、恐れ

 

 

以上、あれこれと書いてみました。

 

デッドヘッズの一員になるための道は、まだまだ遠い…