この「レコード評議会」は2022年11月に発足した。
それから3年3ヶ月、1〜2週間に1つ議題(記事)を採り上げて来た。1つの議題に対してレコード1枚が基本だが、数枚まとめて採り上げることもあった。
そして、これまでの議題数は199。つまり今回で200となる。
いつの間にかここまで来た訳だが、中でもビートルズ関連が77と4割近くを占めている。
「お気に入りのレコードについてのあれこれ」ということで、クラシックやジャズも採り上げてはいるのだが、ビートルズは別格なのでどうしても多くなってしまう。
ということで、記念すべき200回目の議題はやっぱりビートルズ以外に無い。
The Beatles
Magical Mystery Tour Plus Other Songs
ドイツ盤(DMM、1981年)ステレオ
Apple Records / EMI Electrola
1C 072-04 449
SideA:04449-A1+C
SideB:04449-B1+C




Seite 1
Musik aus dem farbigen Fernsehfilm "Magical Mystery Tour"
1. Magical Mystery Tour
2. The Fool On The Hill
3. Flying
4. Blue Jay Way
5. Your Mother Should Know
6. I Am The Walrus ("No You're Not!" Said Little Nicola)
Seite 2
... plus 5 other songs
1. Hello Goodbye
2. Strawberry Fields Forever
3. Penny Lane
4. Baby You're A Rich Man
5. All You Need Is Love
「マジカル・ミステリー・ツアー」のドイツDMM盤。
記念すべき200回目が何故にこのレコードなのか?
それはミックス違いやバージョン違いに目覚め、そしてカッティングによる違いや様々な各国盤に目を向けるきっかけとなったレコードだから、ひいては「ビートルズ沼」に落ちるきっかけとなったレコードだからである。
今から40年前の1986年…
明治通りと早稲田通りの交差点から脇道に入ったところ、ビルの半地下に個人経営のレコード店があった。国内盤は売っておらず、中古盤も売っておらず、輸入盤のみを取り扱っている店だった。
そんな店に偶々足を踏み入れたところ、棚に並んでいたのがこの盤だった。
以下の記事に書いた通り、最初に買ったレコードは「マジカル・ミステリー・ツアー」日本盤(1976年日本再発盤/EAS盤)である。
ビートルズへの入り口であったが故に「マジカル・ミステリー・ツアー」は思い入れのあるアルバムだった訳だが、店先に並んでいたのは持っているレコードとは違っていた。
「ん? 日本盤とドイツ盤とでデザインが違う?」
裏ジャケットを見ると何やらドイツ語で書いてある。そして"Printed in Germany"と書いてある。
ドイツ盤ということか…
既に持っているアルバムだし、収録曲も変わらないし…と思いつつ、ジャケットが違うのは面白いなと思った(この当時「デフジャケ」という言葉は知らなかった)。
今であれば、独自マトか?音の違いは?ミックス違いは?などに着目するところだが、この頃はそんなことを気にしたことも無かった。と言うか、そのような知識そのものが無かった。
ただ、思い入れのある「マジカル・ミステリー・ツアー」のジャケット違いに惹かれた。
値段は1,000円台後半だった様に記憶している。
日本盤のレコードは当時2,500円とか2,800円だったので、レコードにしては安いしな…と思い、買った。
で、家に帰って、レコードをかけてカセットテープにダビングした。自室にはオーディオが無いので、もっぱらカセットテープをラジカセで聴いていたのだ。
そして、ヘッドホンを付けて聴いたところ、違和感を感じた。
そこで、日本盤とドイツ盤を聴き比べてみたところ、様々な違いがあることに気が付いた。
A6. I Am The Walrus
日本盤はイントロのリフの回数が4回だが、ドイツ盤は6回ある。
B2. Strawberry Fields Forever
日本盤は前半のボーカルのエコーがはっきりとかかっているが(このためテイク7とテイク26との繋ぎ目の前後でボーカルの雰囲気がかなり変わる)、ドイツ盤はほとんどかかっていない。
2度目と3度目の「Let me take you down...」の後の弦楽器(ソードマンデル)が、日本盤は定位が中央のままだが、ドイツ盤は右から左へ横切る。
B3. Penny Lane
B4. Baby You're A Rich Man
B5. All You Need Is Love
日本盤はモノラルをステレオ化した擬似ステレオだが(この時、擬似ステレオと分かった)、ドイツ盤はリアル・ステレオである。
「んん? 日本盤とドイツ盤とで音(ミックス)が違う? 同じアルバムなのに音源が違うのか?」
当時はミックス違いやバージョン違い、モノラルとステレオの違いなるものを知らなかったため、衝撃を受けた。
この衝撃がミックス違いやバージョン違いに目覚めるきっかけとなり、ビートルズ・マイブームの「第二次ブーム:1980年代後半」となって行った訳である。
それから30年後の2010年代後半、再びレコードを聴くようになって「アナログ・ミステリー・ツアー(湯浅学著)」を読んでいると、DMM(ダイレクト・メタル・マスタリング)なるワードが目に入って来た。
そこで手元のドイツ盤を見てみると、DMM盤であった。
聴いてみると、ドラムとベースがデカく、筋骨隆々な音がする。
「おおお!日本盤とドイツDMM盤とで音(響き)が全然違う!何だこの音は!カッティングの違いでこんなに音が違うのか!」
当時はカッティングによる違いや各国盤毎に音がこんなにも違うなどと思ってもいなかったため、衝撃を受けた。
この衝撃がUKオリジナル盤のみならず、独自マトや様々な各国盤(含む辺境盤)にまで目を向けるきっかけとなり、「第四次ブーム:2010年代後半」となって行った訳である。
ビートルズ・マイブームの件はこちら☟
ちなみに今はB-SELSに足を踏み入れてしまったことをきっかけに「第五次ブーム:2023年〜」が進行中である。
「B-SELSで買ったレコード」シリーズはこちら
ということで、「ビートルズ沼」に落ちるきっかけとなったレコードがこの「マジカル・ミステリー・ツアー」のドイツDMM盤なのである。
さて、ここからは今日の「レコード評議会」の議題として、色々な角度からあれこれ書いてみたいと思う。
DDM盤について
DDM盤の製造方法等ついては以前にこちらの記事でも採り上げたが、話の肝になることなので、改めて記載しておこう。
DDMとは、ダイレクト・メタル・マスタリング (Direct Metal Mastering)の略称。ドイツのテルデック社とノイマン社が1980年代初期に開発したカッティング技術で、超音波を当てながらカッティングを施した銅製のディスクをそのままマザーとして用いる方式のことである。
通常のレコードは以下のように作られる。
「マスターテープ」
→【①ラッカー盤】→【②メタルマスター】
→【③メタルマザー】→【④スタンパー】
→「レコード盤」
これに対して、DMMは工程が2つ少なく、以下のように①②を飛ばしてレコードが作られる。
「マスターテープ」
→【③メタルマザー】 →【④スタンパー】
→「レコード盤」
この方式で作られたレコードがDDM盤なのだが、高音域のロスが少ない、ノイズが低減される、プリエコーが少なくなる、収録時間が約10%増加する、といったメリットがあると言う。
それではこの「マジカル・ミステリー・ツアー」のドイツDMM盤はどんな音がするのかと言うと…
先に書いた通り、ドラムとベースがデカく、筋骨隆々な音がする。
ドラムはスネアやタムがビシッ、バシッ、ダンッとタイトな音で、時に鞭で叩いているかの様な鋭い音がする。
ベースはボールが跳ねるようにブンブンと鳴り、時に重低音とも言うべきズォーン、ブゥーンと下の下まで響く様な物凄い音がする。
そして、エレキギターはシャープで、時にギンギンとメタリックな音がするし、ブラスやストリングスも圧が高く、時にビリビリとつんざく様な音がする。
良く言えば、パンチの効いた力強く筋肉質な音、シャープで輪郭がくっきりとした解像度の高い音である。
一方で、悪い言い方をすれば、角が尖ったキツイ音、無理矢理に力を増幅させたサイボーグの様な音である。
要するに、自然では無く、過剰な音なのである。
正直に言うと、ずっと聴いているとキツく感じる、聴き疲れする音である。
そんなDDM盤だが、嫌いかと言うとそんなことも無い。
「これはやり過ぎな音だなぁ」と思いながら聴きつつ、そして「やっぱり疲れるわ」と聴き終えるのも乙なものである。
ミックス違い・バージョン違いについて
まず最初に書いておくが、米キャピトルから送られたテープが元になっている日本盤LPはUS盤LPと同じミックスである。
その上で、ここではUK盤EP、US盤LP、ドイツ盤LPのステレオにおけるミックス違いやバージョン違いを軸にして、あれこれ書いてみよう。
と行きたいところだが、長くなってしまうので今回はここまで。

続きは、次回の「マジカル・ミステリー・ツアー」のドイツ盤で…
(追記)
この記事について、B-SELSで紹介いただきました。
ご店主、ありがとうございます。

