レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Still Life (Talking) / Pat Metheny Group【US盤】

今回の「レコード評議会」は、「一家に一枚あるべき傑作」「これを聴けば人生が変わる」というお話…

 

 

Pat Metheny Group

Still Life (Talking)

US盤(1987年)

Geffen Records

GHS 24145

Side1:GHS-2-4145-A-DMM SR-1-DMM MASTERDISK SP1-1
Side2:GHS-2-4145-B-SR1-DMM MASTERDISK


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先の記事で Letter From Home についてあれこれ書いた。

これ良いですよ、とCDを貸してもらったのをきっかけにすっかり魅了されてしまった訳だが、同時にこちらの Still Life (Talking) も貸してもらっていた。

 

ただ、Letter From Home の方は聴いて直ぐに「こんな音楽があるのか…」と虜となった一方で、Still Life (Talking) の方は正直に言うと最初はよく分からなかった。

 

Minuano (Six Eight) や Third Wind は、後に別格扱いで好きになるのだが、組曲のように変化していく曲調に、当時の「ロック耳」ではついて行けず、「?」という感じだった。

 

また、このアルバムはブラジル音楽との融合と言われるが、土着性を感じさせるメロディとリズムが、これまた「ロック耳」にはよく分からなかった。

 

同じ Pat Metheny Group でも、

 Letter From Home →

 Still Life (Talking)  → ?

だった訳だ。

 

しかし、自分でもCDを購入して繰り返し聴いているうちに、耳が出来てきたのだろう、気が付くと 超・愛聴盤となっていた。

 

So May It Secretly Begin や Last Train Home も名曲だが、個人的には前述の通り、別格扱いの曲が、Minuano (Six Eight) と Third Wind 。

 

今回記事を書いていて気が付いたのだが、Minuano(ミヌアノ:ブラジル南部からウルグアイにかけての地域に吹く冷たい風)、Third Wind(第三の風?、何か南米に謂れのある風なのか?)ともに、「風」がタイトルとなっている。

 

ブラジル音楽を取り込んだ多彩な音とリズム、多様な楽器が織りなす構成美、劇的な展開。

繰り返し聴いているうちに分かってきて、改めて思った。「こんな音楽があるのか…」と。

 

ピーター・バラカン氏は、Miles DavisIn A Silent Way をして「一家に一枚あるべき傑作」とか「これを聴けば人生が変わる」と言っているが、Still Life (Talking) についても正に同じことを言いたい。

 

 

...で、ここからが「レコード評議会」の本題。

 

 

今から10年前の2012年にレコードを改めて聴くようになったのだが、Letter From  Home だけでなく、Still Life (Talking) もレコードで聴きたい、と思った。

 

が、そう簡単に手には入らない。

当時はまだeBay(レコードが出品されているとは知らなかった)やDiscogs(存在すら知らなかった) を使ったこともなく、レコ屋で地道に探すしかなかった。

 

しかし、そもそも1987年と音楽メディアがCDに移行している中、アナログレコードとしてのプレス枚数が多いとは考え難く、且つこのアルバムをレコードで持っている人が手放すとは考え難い。

 

半ば諦めつつも、いく先々のレコ屋で、Jazz・Fusion - Guitar - Pat Metheny の棚のチェックだけは欠かさず行っていた。

 

そして、探し始めてからを5年経ったある日のこと、ついにディスク・◯ニオンの棚にそれはあった。遂に見つけた。即購入した。

待てば海路の日和あり、だ。

 


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針を下ろすと、…素晴らしい響きだ。

 

Minuano (Six Eight) :テーマに入る直前のシュポッという音(シャンペンの栓を抜いた時の音?、何の音なのだろう?)がとても立体的だ。風のようなシンセの飛翔感が素晴らしい。テーマを歌うヴォイスがよく伸びる。中間部のマリンバの粒立ちが良い。ベースの鳴りが深い。

 

Last Train Home:ドラムのブラシワークが繊細で、ブラシが見えるようだ。遠くで鳴る汽笛が明瞭で、開けた大地を走るアムトラックが遠くに見えるようだ(←ミズーリ州リーズ・サミット辺りを走るアムトラックね)

 

Third Wind:ギターの粒立ちが良く、疾走感が際立っている。中間部のドラムとパーカッションの躍動感が凄い(←半端なく凄い)。シンセギターの響きが分厚く、咆哮しているようだ。最後の盛り上がりは、音の洪水といった感じだ。

 


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そして、今回記事を書くに当たってクレジットを確認すると、 

Original Mastering: Bob Ludwig, Masterdisk

 

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Letter From  Home と同じく、Bob Ludwig がマスタリングをしていた。

 

RLの刻印は無いので、カッティングはしていないようだが、Nightfly / Donald Fagen のようにカッティングも手掛けていたら...、と無いものねだりをしてみたくなる(Led  Zeppelin Ⅱ のようにラウドカットだったら、なお面白いだろうな)。

 

Bob Ludwig のマスタリングということもあって、CDも結構良い音しているのだが、やっぱりレコードは更に一段と素晴らしい響きがする。音に込められた説得力が一段上だと思う。

 

アナログレコードは、すごく簡単に言ってしまえば「塩化ビニール製のレコード盤に刻まれた溝をレコード針がなぞることで音が出る」。

言い換えれば「塩化ビニール製の円盤と金属針が物理的に接触することで音が出る」。

 

弦楽器や打楽器は「物と物が物理的に接触することで音が出る」楽器と言えるが(ヴァイオリンの弦と弓、ギターの弦とピック(指)、ピアノの弦とハンマー、ドラムの皮とスティック、ヴィブラフォンの音板とマレット)、そういう意味で言えば、

レコードは楽器なのだ。

 

レコードの音が、CDやストリーミングに比べ、その説得力が一段上なのも頷ける。

 

と、まあ、戯れ言はともかく、好きなアルバムが素晴らしい音で聴けるのはこの上なく嬉しいことだ。

 

 

最後に...

Still Life (Talking)、このアルバムは「一家に一枚あるべき傑作」であり、「これを聴けば人生が変わる」が、我が家には一枚のみならず、レコードとCDを合わせて全部で4枚ある。

このアルバムを聴いて人生が変わった証である(笑)。

 

・レコード(ここで紹介したレコード、2017年購入)

・リマスターCD(2006年リリース、同年購入)

・自分で購入したCD(1992年購入)

・当初貸してもらったCD