XTCを続けます。
前4回にわたってアルバム「スカイラーキング」および関連する12インチシングルを採り上げてきた訳だが、 今回の「レコード評議会」はその一つ前のアルバム。
The Big Express
UK盤(1984年)
Virgin
V2325
Side1:V 2325 A - 1U - 1 - 1 - X1
THE BASTARD SON OF HARD BLUE RAY HEAD
Side2:V 2325 B - 2U - 1 - 1 - X1
Side1
1. Wake Up
2. All You Pretty Girls
3. Shake You Donkey Up
4. Seagulls Screaming Kiss Her, Kiss Her
5. This World Over
Side2
1. The Everyday Story Of Smalltown
2. I Bought Myself A Liarbird
3. Reign Of Blows
4. You're The Wish You Are I Had
5. I Remember The Sun
6. Train Running Low On Soul Coal
変形ジャケットの「ザ・ビッグ・エキスプレス」(7枚目のアルバム)。
XTCの出身地スウィンドンにインスパイアされた自叙伝的なコンセプト・アルバムなのだという。
スウィンドンはグレート・ウェスタン鉄道(Great Western Railway)の工場があったところ。
工場は現在鉄道博物館となっているが、そこで撮影された蒸気機関車の動輪がジャケットとなっている。
サウンド面では、ジャケットのイメージ通り、エッジの効いた音作りとなっている。
加えて、リン・ドラム(LINN DRUM)というドラムマシンがかなり使用されている(プログラミングはアンディ)。
ちなみにリン・マシンはプリンスやYMOも使っていた。
従来同様、勝手な印象を含めて、各曲を紹介しよう。
A:アンディ・パートリッジ作曲
C:コリン・モールディング作曲
⭐️の数:個人的に好きな度合い(最高で⭐️5つ)
Side1
1. Wake Up (C)⭐️⭐️
アンディの曲かと思ったが、コリンの曲。
エッジの効いたギターリフが印象的。
シングルカットされている(UKチャート92位)。
2. All You Pretty Girls (A)⭐️⭐️
古い英国民謡っぽいメロディ。
当初はジミ・ヘンドリックスを弾いていた時に思いついたメロディなのだとか(←でもジミヘン感は皆無)。
シングルカットされている(UKチャート55位)。
3. Shake You Donkey Up (A)⭐️⭐️⭐️⭐️
譜割りがよく分からないが、変にノリの良い曲。
正直変な曲だと思うが、ひねくれポップ感が十分に発揮されていて、アルバム中一番好き。
鬼才キャプテン・ビーフハートの"Sure 'Nuff 'n Yes I Do"(1967年アルバム「セイフ・アズ・ミルク:Safe As Milk」に収録)にも影響を受けた曲なのだそうだ(←なるほど分からんでは無い)。
4. Seagulls Screaming Kiss Her, Kiss Her (A)⭐️⭐️⭐️
「スカイラーキング」の"Another Satellite"と同様、後に恋人さらには結婚することになるエリカ・ウェクスラーという女性についての曲なのだとか。
ユーフォニアムのソロがあるところが面白い。
5. This World Over (A)⭐️⭐️
核戦争で終焉した世界が描かれている。
"この世が終わる、そして次の世が始まる"
"一連の瓦礫を前に「ロンドンはどんなところだったのだろう?」と尋ねる"
シングルカットされている(UKチャート99位)。
Side2
1. The Everyday Story Of Smalltown (A)⭐️
タイトル通り、最も自叙伝的な曲。
コメディタッチな曲。
2. I Bought Myself A Liarbird (A)⭐️
バンドの元マネージャーであるイアン・リードについての曲なのだとか。
3. Reign Of Blows (A)⭐️
ギターがキース・リチャーズ風。
4. You're The Wish You Are I Had (A)⭐️
これもエリカ・ウェクスラーについての曲なのだとか。
5. I Remember The Sun (C)⭐️⭐️
コリンにしては珍しいジャジーな曲。
6. Train Running Low On Soul Coal (A)⭐️⭐️
機関車が走り出す様なイントロ。
機関車が崩壊する様なエンディング。
以上が各曲の説明だが、 薄いコメントになってしまった(特にB面)。
何せ好きな曲が少ないのだ。
⭐️⭐️⭐️⭐️:1曲
⭐️⭐️⭐️:1曲
⭐️⭐️:5曲
⭐️:4曲
色々とサウンドに工夫を凝らしているのは分かる。
エッジの効いた音作りで、個々の音は気持ち良い。
だが、全体的に散漫な印象が拭えず、また曲単位でもこれといったものが無い。
加えて、リン・ドラム(ドラムマシン)のジャストなリズムにデジタル臭さを感じてしまう(←打ち込み系のサウンドはあまり好きでは無い)。
世間の評価でも、この頃のXTCは低迷期とされている。
ということで、「このアルバム、どうなのよ?」というのが正直なところ。
だが、XTCは My Favorite Artist / Band Ranking:お気に入りバンド・ランキングで間違いなくベスト10には入るバンド(ちなみに1位はビートルズ)。
そんなXTCのアルバムなのだから、これはこれで良いのだ。
「このアルバム、どうなのよ?」と、あれこれ言いながら聴くのも、此また いとおかし。
(おまけ情報)
アンディ・パートリッジと結婚することになるエリカ・ウェクスラーについて調べていたら、こんなことが分かった。
1980年、アンディは熱狂的ファンというエリカと出会う(当時10代、アトランティックレコードのA&Rであったジェリー・ウェクスラーの姪ということで紹介される)。
アンディは既に結婚していたが、エリカは事あるごとに付きまとうようになる。
アンディは迷惑に思いながらも、気になってしまい、エリカに関する曲を書く("Seagulls Screaming Kiss Her, Kiss Her", "You're The Wish You Are I Had", "Another Satellite")。
1991年、歌手として活動していたエリカはロイ・リキテンスタインの恋人となる(当時エリカは22歳、ロイ・リキテンスタインは68歳)。
その関係は1994年まで続き、作品のモデルにもなる。
1994年、エリカは前妻と離婚したアンディの恋人となり、後に結婚する。
ということで、何とエリカ・ウェクスラーはロイ・リキテンスタインの恋人であり、モデルだったというのだ。
ロイ・リキテンスタインはアンディ・ウォーホルと並ぶ ポップアートの代表的な画家で、よく知られた作品として以下のものがある。
Look Mickey(1961年)
Drowning girl:溺れる少女(1963年)
Girl with Hair Ribbon:ヘアリボンの少女(1965年)
で、エリカ・ウェクスラーがモデルを務めた作品はというと、Nudesシリーズ。
Nudes with Beach Ball(1994年)
Nude with Yellow Pillow(1994年)
Nude Reading(1994年)
Thinking Nude(1994年)
そうだったんだ…
ということで、おまけ情報でした。