レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Theme From Enter The Dragon / Lalo Schifrin【UK盤、日本盤】

Enter The Dragon」と言われても分からないかも知れないが、「燃えよドラゴン」のことである。

 

1973年に公開されたブルース・リー主演のカンフー映画燃えよドラゴン」。

(英語:Enter The Dragon、中国語:龍爭虎鬥)

 

当時日本でも大ヒットし、「アチョー」という怪鳥音奇声)を発しながら、ヌンチャクを振り回す輩が続出したという(←知らんけど)

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」は「燃えよドラゴン」のサウンドトラック、7インチシングル盤だ。



Lalo Schifrin

Theme From Enter The Dragon(7" Single)

UK盤(1973年)

Warner Bros. Records

K16333(WB7735)

Side1:K16333A1  <  ENTERTHE

Side2:K16333B1  <  KIPPER


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Side1:Theme From Enter The Dragon

Side2:The Big Battle

 

第四次ビートルズマイブーム(2010年代後半)の際、英国からビートルズのシングルを取り寄せするべくDiscogsを漁っていたところ、ついでに見つけたのがこのUK盤シングルちなみに値段は4ポンド(600円くらい)。

 

 

そもそも何で「燃えよドラゴン」??と思われるかもしれない。

また、時折入っているブルース・リー怪鳥音のみに耳がいくと、キワモノのように聞こえてしまうかも知れない。

 

だが、音楽そのものを聴いてみると、凄まじくカッコ良い音楽だということが分かる。

 

何せ、才人とも言うべき作曲家・アレンジャーと一流プレイヤーによる仕事なのだ。

 

 

まず、作曲家・アレンジャーのラロ・シフリンLalo Schifrin

アルゼンチン出身だが、ディジー・ガレスピー楽団に所属したり、ジミー・スミスと共演したり、自身のビックバンドを率いたりと、米国で活躍した、元々ジャズ畑の人だ。

 

迫力のあるビックバンド・ジャズ、ラテンやボサノバを取り入れたもの、電気楽器を取り入れたクロスオーバーものと、時代に合わせて様々な音楽を繰り広げたが、そのサウンドはセンスが良く、"才人"という言葉が似合う。

 

その後、テレビ・映画の音楽で有名となるのだが、中でも「ミッション・インポッシブルスパイ大作戦」と「燃えよドラゴン」を知らない人はいまい。

ミッション・インポッシブル」はジャズ・フレーバーを織り交ぜつつ、5拍子でありながらも変拍子を感じさせない躍動感のある曲に仕上がっている。

 

 

そして演奏だが、こんな人達が参加している。

ドラム:スティックス・フーパStix Hooper

キーボード:ジョー・サンプルJoe Sample

ギター:ラリー・カールトンLarry Carlton

ベース:マックス・ベネットMax Bennett

 

1973年当時、クルセイダーズで一緒に演奏していたメンバーで、ジャズ・フュージョン界における一流プレイヤー

特にジョー・サンプルラリー・カールトンは後にソロ・アルバムが大ヒットするなど、超有名なプレイヤーだ。

 

 

ラロ・シフリンによるセンスのある曲作り、そして一流プレイヤーによる演奏に耳を傾けてみて欲しい。

私が凄まじくカッコ良い音楽と言った意味が分かるだろう。

 

 

ラロ・シフリンにセンスを感じるのは、例えば次のようなところだ。

 

単純な4/4拍子ではなく、拍が伸びたり、短くなったりすることで生みだされる緊張感とグルーヴ感。

香港っぽい(?)東洋風のメロディに妙にマッチしているチープ感満載のシンセの音。

東洋を感じさせる拍子木(クラベス)

このリフだけで曲が分かる印象的なベースライン。

ギターカッティング、エレピ、ブラス、ストリングスを織り交ぜた絶妙なアレンジ。

 

 

このようなセンスのあるアレンジの下、一流プレイヤーが活躍する。

 

ダカダカと力強く叩かれるドラムはスティックス・フーパによるもの。タメのあるリズムがカッコ良い。

 

所々で入ってくるエレピはジョー・サンプルによるもの。このプレイは明らかに彼によるもので、クールだ。

 

ワウペダルを使ったギターカッティングはラリー・カールトンか?ギターソロっぽいのはまず彼だろう。いずれにしても、ギタープレイがやたらカッコ良い。

 

印象的なベースラインを弾くのはマックス・ベネット。このベースラインで、曲の半分は完成していると言える。

 

 

レコードで聴く「燃えよドラゴン」。

 

このUK盤シングル、カッティングレベルが高く、45回転の威力もあり、パンチの効いた音だ。

 

ギターカッティングのキレ、エレピの響きが良く、ストリングスやブラスも力強い。

ドラムやベースの音圧も存分に感じられる。

ブルース・リー怪鳥音快調だ。

 

やっぱりレコードの音は説得力がある。

 

 

こいつは是非にも「レコード評議会」で採り上げねば…

 

と思い、記事を書き始めたのだが、うーむ、このUK盤シングルはジャケット(ピクチャー・スリーブ)が無い。

 

あのインパクトのある「燃えよドラゴン」の絵が無いのは、記事としてイマイチか…

 

ということで、とりあえず中古レコ屋へ掘りに行ってみた。

 

そう簡単には無いよな…と思いつつ、地元の中古レコ屋「パレード」に寄ってみたところ、何と…

 

 

ラロ・シフリン

燃えよドラゴン(7" Single)

日本盤(1973年)

Warner Bros. Records、ワーナー・パイオニア

P-1264W

Side1:P-1264W-1  1-A-13  〄

Side2:P-1264W-2  1-A-12  〄


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Side1:Theme From Enter The Dragon

Side2:The Big Battle

 

いとも簡単にジャケット付きの日本盤シングルを入手。ちなみに値段は400円。

何年も手に入れられない盤もあれば、こうも簡単に見つかる場合もある。

こんなことも、中古レコードの面白いところ。

 

ちなみに、この中古レコ屋「パレード」は中央線三鷹駅南口徒歩2~3分のことろにあるお店なのだが、オールラウンドの品揃えで、時折掘りに行ってみると、「お、こんなのが入っている」と驚くこともしばしば。

何より盤質がキレイなものばかりで、間違いない。値段も良心的。

 

で、音はどうかと言うと、UK盤シングルと同等のカッティングレベルで、ベースやドラムの音圧がしっかりと感じられる。

燃えよドラゴン」のタイトルに負けることなく、なかなかに迫力ある音が刻まれており、良い音といって差し支えない。

 

ただ、UK盤と日本盤、聴き比べてみると、UK盤の方がより一層キレがあるというか、鮮明さが一枚上だ。

 

この映画は香港と米国の合作だが、1973年当時の香港は英国領だったこともあり(中国への香港返還は1997年)、米ワーナー社から英国には鮮度の高いテープが渡ったのだろうか?

 

 

 

ところで、「Enter The Dragon」の邦題が何故に「燃えよドラゴン」なのか?

 

Wikipediaによると、『「燃えよドラゴン」という邦題は、新撰組を題材にした司馬遼太郎の時代小説「燃えよ剣」のタイトルをヒントにしたもので、配給したワーナーの宣伝部長だった佐藤正二が書店で見かけて命名した。「燃えよ」のフレーズを使うにあたっては司馬の了解を得ていたという。』とのこと。

 

そうなんだ。

 

 

 

ということで、最後にジャケットを大きく貼っておく。

 

 

ワーナー映画が正月に贈る最大の娯楽巨編!話題騒然!アメリカで猛烈な興収記録を作ったオリエンタル・アクション・ブームの最高作。〈ブリット〉等数々の名作を生む巨匠ラロ・シフリンのヒット・メロディ

 

燃えよドラゴン」の文字も、その上に書かれているポップも昭和感満載(1973年=昭和48年)で、なかなかイカしている。

 

 

以上