レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Another Fine Tune You've Got Me Into / Gilgamesh【日本盤、UK盤】

以前に、カンタベリー・シーンの最高傑作と言われるハットフィールド・アンド・ザ・ノースの2ndアルバム「ザ・ロッターズ・クラブ」を採り上げた。

 

その記事で「複雑かつ緻密な構成、テクニカルな演奏で、プログレでありながらも、ポップなところもあって、全曲素晴らしい」と記載したが、正にカンタベリー・シーン最高傑作と言えるアルバムだと思う。

 

 

が、内容的にはこれに引けを取らないのではないか?と密かに思っているアルバムがある。

 

今回の「レコード評議会」では、そのカンタベリー・シーン隠れ名盤を採り上げる。

 

 

Gilgamesh

Another Fine Tune You've Got Me Into

日本盤(1982年)
Seven Seas (King Records) / Charly Records
K22P-352 / CRL 5009

Side1 : 〄 SILBT 11801-1

Side2 : 〄 SILBT 11802-1


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Side One

  1. Darker Brighter(暗黒の輝き)

  2. Bobberty - Theme From Something Else

         (ボバーティー 〜 何かのテーマ)

  3. Waiting

Side Two

  1. Play Time

  2. Underwater Song(水中歌)

  3. Foel'd Again

  4. T.N.T.F.X.


Keyboards : Alan Gowen(アラン・ゴーウェン)

Guitar : Phil Lee(フィル・リー)

Bass : Hugh Hopper(ヒュー・ホッパー)

Drums : Trevor Tomkinsトレヴァー・トムキンス

 

ギルガメッシュの2ndアルバム。

この盤はキング・レコードによる日本盤で、邦題は「ギルガメッシュ2nd.」。

英国でのリリースは1978年なのだが、日本では1982年にリリースされている。


このアルバムに興味を持ったのは、座右の書である「FUSION AOR DISC GUIDE(2001年)が切っ掛け。

 


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『スムースで洗練された作品である。ベタな言い方だが、グッド・フュージョンと呼びたい。』

『83年にキング・レコードから国内盤LPが出て以来、約20年に渡って飽きることなくこの作品を楽しんでいる者にとって、カンタベリーというジャンルを通り越して聴ける「私にとってのフュージョン」と断言できるモノなんですよ、コレは。』

 

このようなコメントを見て、

 カンタベリー系はジャズ・ロックじゃないの?

 グッド・フュージョン

 フュージョン寄りのジャズ・ロックなのか?

 このジャケットでフュージョンなのか?

 "私にとってのフュージョン" って何?

と、俄然興味が湧いた。

 

しかしこのアルバム、メジャーでは無い。と言うかマイナーな部類なので、そうそう中古レコ屋に置いているようなものではない。

 

そんな訳で気長に構えて、プログレカンタベリーのコーナーを掘り続けること数年…

そして2020年のある日のこと、ディスク◯ニオンで遂に見つけたのがこの盤だ。

 

日本盤、値段は1千円。

(オビ)が付いていないからなのか、そもそも人気が無くてこの程度なのか分からないが、予想外に安い。

安いのだから文句を付けることも無いのだが、探し続けてきたものが1千円…

 

やや肩透かしな感じがしつつ、まあ肝心なのは中身なので、気を取り直して、ターンテーブルにレコード盤を乗せる。

さあどうよ、"私にとってのフュージョン" は?

 

 

アルバムの冒頭を聴いただけで、「これは間違いない、好き系の音だ」と確信。

 

メンバー4人の演奏を記すと以下の通り。

 

アラン・ゴーウェン(ガウエンとの記載も)

このグループのリーダー。エレピとアナログ・シンセが実に多彩で素晴らしい。特に、アナログ・シンセのフワーと漂うような音、ピッチベンドを使ったウネウネするようなプレイが最高だ。

 

フィル・リー

ナチュラルトーンで、派手さは無いが、次々と繰り出されるフレーズは完全にジャズギター。アラン・ゴーウェンのエレピとのテクニカルなユニゾンプレイも素晴らしい。

 

ヒュー・ホッパー

ソフト・マシーンにも在籍したベーシスト。ベースと言ってもリズム楽器ではなく、リード楽器としてプレイしている。彼の弾くベースがテーマやメロディになっていることもしばしば。

 

トレヴァー・トムキンス

ロックのエイトビートは一切無い。細かい動きのスネアやタム、シンバルワークは完全にジャズドラム。その繊細で多彩なリズムはアラン・ゴーウェンの多彩な音使いとも合っている。

 

 

各曲とも歌えるようなハッキリとしたメロディが無く、最低限の取り決めのもと、インプロビゼーション主体で曲が進行していく。

 

この手の音楽は下手をすると難解に感じてしまう可能性が高いのだが、このアルバムはその多彩な音で退屈に思うことは一切無く、聴いていて気持ちが良い。

 

"グッド・フュージョン"、"私にとってのフュージョン"に惹かれて聴いてみたこのアルバム、間違いなく当たりだった。

 

ただ、私の感覚からすると、フュージョンというのにはやや「?」という感じがする。

 

無理にジャンル分けをする必要は無いのだが、フュージョンではなく、またジャズ・ロックでもなく、強いて言うならばクロスオーバーか?いや、むしろジャズそのものに近いか?

 

1960年代後半に電気楽器を取り入れ始めた頃のマイルス・デイヴィスの雰囲気(※)にも少し通じるものがあるかな、と思ったりもする。

※「キリマンジャロの娘」や「イン・ア・サイレント・ウェイ」当たりのエレクトリック・マイルスの雰囲気。

 

いや、初期のウェザー・リポートのような感じか?

そうなら、まあフュージョンでも良いのか…

 

まあ、"グッド・ミュージック"であることに変わりはない。

なかなかの隠れ名盤ではないか。

 

うーむ、これはUKオリジナル盤でも聴いてみたい。

 

この日本盤はキング・レコード(経験上、キング盤は音の響きや音圧もしっかりしており、信頼のおける音がする)によるものなので、十分に満足のいく音なのだが、UKオリジナル盤も聴いてみたくなるのはレコード狂人の性。

 

しかし、手に入れるにはDiscogsで探して輸入するしかないか…

ただ、Discogsでの買い物は当たり外れが大きい。NMとかVG+とあっても音飛びがする盤もあれば、VGでも実際は表面の薄いキズだけでノイズレスの良音もあるし…

 

 

などと思いつつ、その1週間後、ふらっとディスク◯ニオンに寄ったところ…

 

何と、UKオリジナル盤があるではないか!

数年かかって日本盤を見つけた1週間後にUKオリジナル盤に出会うとは…

 

しかも、値段は3千円…

UKオリジナル盤、しかも盤質Near Mintと言えるレベルの盤が3千円…

 

やっぱりこのアルバムはマイナーなんだな、と思いつつも、万が一にも他に取られてしまうようなことがあってはならない。

 

ということで、速攻で購入した。

 

 

Gilgamesh

Another Fine Tune You've Got Me Into

UK盤(1978年)

Charly Records

CRL 5009

Side One : CRL 5009 A1 [Lyre symbol]  D

Side Two : CRL 5009 B1 [Lyre symbol]  I


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怪物のような絵が描かれたジャケットからレコードを取り出すと、そこにはインパクトのあるCharly Recordsのレーベル。

マイナーレーベル臭が漂う。

 

が、そのマイナーレーベル臭、嫌いではない。

で、大いに期待しつつ、レコード盤をターンテーブルに乗せる。

 

さあどうよ、UKオリジナル盤の音は?

 

 

これがもう素晴らしく良音。

音の輪郭がくっきりとしていて、音像の見通しが素晴らしく良い。

日本盤も十分に良い音だったが、雰囲気が全然違う。

 

エレピとシンセの音が新鮮に響く。

ギターの粒立ちとキレが良い。

ベースが引き締まった音で鳴る。

ドラムの繊細な音が感じられる。

 

これは音だけで聴けるというやつだ。

聴いている時は至福の時間を味わえる。

このアルバムをこれ以上の音で聴くことはできないだろう、と思うほど素晴らしい。

 

さすがUKオリジナル盤の音だ。

それにビートルズなどと違って、プレス枚数もそうは多くないだろうから、スタンパーも若いのではないだろうか?

だとすれば、こんなにも新鮮な音がするのも頷ける。

 

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と、UKオリジナル盤に大いに満足しつつ、さて後日、日本盤の差はいかほどか確認しようと思い、改めて聴き比べてみた。

 

やっぱり雰囲気が全然違う。

音の新鮮さは、正直UKオリジナル盤の方が明らかに上で、歴然たる差があると言わざるを得ない。

 

だが、キング・レコードによる日本盤の響きもなかなか悪くない。

特に中音域がフワーと膨らむような響きがするのだ。

これが、アナログ・シンセのフワーと漂うような音に合っていて、この味わいのある音は捨て難い。

 

このメジャーとは言えない(もっと言うとマイナーな)アルバムをわざわざ日本でリリースするくらいなのだから、丁寧に制作したのだろう。

キング・レコード、とても良い仕事をしていると思う。

 

 

ということで、同じアルバムでも盤によって雰囲気や味わいに違いがあり、それぞれの良さがあることを改めて実感。

 

アナログ・レコードはホント面白い…

 

 

 

(追記)

ところで、ギルガメッシュというバンドは、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースと関係が深い。

 

1972年、アラン・ゴーウェンが中心となってギルガメッシュ結成。

1975年、1stアルバムをリリース。

同年、ハットフィールド・アンド・ザ・ノースと合体して、ナショナル・ヘルスとなる。

1977年、ナショナル・ヘルスから脱退したアラン・ゴーウェンがギルガメッシュを再結成。1978年、2ndアルバムをリリース。

 

日本盤に付属しているカンタベリー・シーン系図を貼っておきます☟

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☝︎この緻密な仕事、頭が下がります。

 

そのうち、ナショナル・ヘルスも「レコード評議会」で採り上げる予定なので、お楽しみに。

 

 

 

 

(おまけ その1)

ジャケットの絵については、裏ジャケットの下に、ウィリアム・ブレイクの「The Ghost of a Flea蚤の幽霊」とある。

 

The Ghost of a Flea

William Blake(1757年11月28日-1827年8月12日)

 

ChatGPTにこの絵のことを尋ねてみた。

 

The Ghost of a Flea(ノミの幽霊)」は、イギリスの詩人・画家であるウィリアム・ブレイク(William Blake)によって描かれた作品です。

ブレイクは18世紀から19世紀にかけて活動したロマン派の芸術家であり、彼の作品は宗教的なテーマや幻想的なイメージで知られています。

「The Ghost of a Flea」は、1820年頃に描かれた小さな絵画です。その大きさは約21.6 cm × 16.2 cm(8.5インチ × 6.4インチ)であり、非常に詳細で精巧な描写が特徴です。この絵画は銅版画技法で制作され、ブレイクが自身の創造した神秘的な宇宙や存在を表現しています。

この作品は一般に、ロンドンのテート・ブリテン(Tate Britain)という美術館で展示されています。テート・ブリテンはイギリスの国立美術館であり、ブレイクの作品を数多く所蔵しています。

「The Ghost of a Flea」は、ブレイクの幻想的な世界観と彼の個性的なスタイルを象徴する作品として高く評価されています。ノミの姿を持つ神秘的な幽霊の姿が描かれており、その怪物的な表現不気味な雰囲気が注目を集めています。

 

重ねて尋ねてみると…

 

「The Ghost of a Flea」は、ブレイクの神秘主義的な世界観と彼の芸術的な表現力を示す傑作とされています。この絵画は、魂の存在や不可視の世界への探求をテーマにしており、ブレイクの信念や思想に深く根ざしています。ノミという生物は一見して微小であり、人間にとっては無視される存在ですが、ブレイクはこの小さな存在が重要な存在であると信じ、絵画を通じてその魅力と力を表現しました。

「The Ghost of a Flea」は、ブレイクの芸術的な才能と非凡な想像力を称えるだけでなく、その奇妙で不気味な表現が人々の関心を引きつけ続けています。この絵画は現在、テート・ブリテン(Tate Britain)美術館のコレクションの一部として展示されており、芸術愛好家や研究者によって高く評価されています。

 

そうなんだ。そういう絵画なのか…

21.6 cm × 16.2 cm(8.5インチ × 6.4インチ)ということは、ジャケットに描かれているものより一回り小さい大きさなんだな。

 

 

(おまけ その2)

ChatGPTにタイトルの意味を尋ねてみた。

 

Another Fine Tune You've Got Me Into」は、英語の表現であり、直訳すると「あなたが私を巻き込んだもう一つの微調整」となります。このフレーズは、何かトラブルや困難な状況に巻き込まれた際に、軽い皮肉やジョークとして使用されることがあります。一種の冗談や皮肉で、自分が他の人の行動や状況のためにやや困難な状況に置かれたことを表現する際に使用されます。

「Another Fine Tune You've Got Me Into」は、特定の文学作品や有名な引用としては知られていません。しかしながら、このフレーズは英語のスラング口語表現の一部として広く使用されています。特に、ユーモアや皮肉の要素を含んだ会話や文章で使用されることがあります。

文学作品では、類似の表現やアイディオムが使われることがありますが、具体的な例として「The Importance of Being Earnest(まじめが肝心)」というオスカー・ワイルドの戯曲が挙げられます。この作品では、登場人物の会話や状況において、皮肉やジョークが多く使用されます。

 

へぇ、そうなんだ。これは勉強になるなぁ。

 

 

(おまけ その3)

ChatGPTにこのアルバムについて尋ねてみた。

 

申し訳ありませんが、私の知識は2021年までのものですので、Gilgameshというバンドのアルバム「Another Fine Tune You've Got Me Into」については情報を持っていません

 

重ねて尋ねてみると…

 

Gilgameshというバンドは1970年代にイギリスで活動していたプログレッシブ・ロックバンドであり、いくつかのアルバムをリリースしていましたが、その中に「Another Fine Tune You've Got Me Into」というタイトルのアルバムは見当たりませんでした。

 

さらに重ねて尋ねてみると、こんな回答が…

 

Gilgameshは1970年代にイギリスで活動していたプログレッシブ・ロックバンドです。

バンドはいくつかのアルバムをリリースしましたが、私の情報によれば「Another Fine Tune You've Got Me Into」というタイトルのアルバムは存在しないようです。

Gilgameshディスコグラフィーについては以下のアルバムが知られています:

"Gilgamesh" (1975)
"Another Fine Tune You've Got Me Into"というタイトルのアルバムはないようです
"Arriving Twice" (1979)

 

一方で、「Gilgamesh という英国のバンドについて教えてください」と尋ねたところ、こんな回答が…

 

おっしゃる"ギルガメッシGilgamesh)"は、実際にはイギリスのバンドではなくプログレッシブ・ロックバンド「Gilgamesh」として知られるグループについて説明できます。Gilgameshは1970年代に活動していたバンドで、イギリスのカンタベリー・ロック(Canterbury rock)シーンの一部でした。彼らの音楽は、ジャズ、フュージョン、ロック、プログレッシブ・ロックの要素を組み合わせた独自のスタイルで知られていました。

バンドは、主にアラン・ホールズワースAlan Gowen)とリチャード・シンクレアRichard Sinclair)という2人のキーメンバーによって形成されました。アラン・ホールズワースはキーボードとコンポーザーとして、リチャード・シンクレアはベースとボーカルとして活動しました。彼らは、他の優れたミュージシャンたちとも共演し、その中にはデイヴ・スチュワート(Dave Stewart)やフィル・ミラー(Phil Miller)などがいます。

Gilgameshは、1975年にセルフタイトルのデビューアルバム「Gilgamesh」をリリースしました。このアルバムは、複雑な楽曲構造やジャズロックの要素を持つ曲など、バンドの特徴的なサウンドを示しています。その後、彼らは1978年にセカンドアルバム「Another Fine Tune You've Got Me Into」をリリースしました。

Gilgameshは、カンタベリー・ロックシーンの一翼を担いながらも、短期間で解散してしまいました。しかし、彼らの音楽はその後もプログレッシブ・ロックの愛好家によって高く評価され続け、カルト的な人気を獲得しています。特に、アラン・ホールズワースリチャード・シンクレアの才能とクリエイティビティによって、彼らの作品は称賛されています。

 

ChatGPT、色々と混乱しているなぁ…

イギリスのバンドだし、アラン・ホールズワースは参加していないし(明らかにアラン・ゴーウェンの間違い)、リチャード・シンクレアは初期の短期間サポートメンバーだっただけだし…このアルバムも存在しないとか言われているし…

 

まあ、一般的にはこのバンド、このアルバムがマイナーな存在、ということなのでしょう…

 

もっと広く評価されても良いと思うけどなぁ…

 

 

その一方で、今ではこのアルバムのDiscogsでの値段は、日本盤、UK盤ともに安値でも5千円以上、高値だと1万円以上はする。

レコード、どんどん値段が上がっていくなぁ…