レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

マジック・オブ・ボロディン / カマラータ(指揮)、キングズウェイ交響楽団【UK盤】

前2回にわたって、"Decca / Phase 4 Stereo"のカマラータを採り上げてきた。

 

もう1枚持っているので、紹介しておこう。

ということで、今回の「レコード評議会」はこちら。

 

 

The Magic Of Borodin

Camarata

The Kingsway Symphony Orchestra

UK盤(1971年)

Decca / Phase 4 Stereo Concert Series

PFS 4209

Side1:ZAL-9704-1L  BG  JT  1

Side2:ZAL-9705-2L  BG  JT  1

 


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Side1 

 1. Prince Igor Overture

 2. Dances Of The Polovtsi

 3. Nocturne

 4. Polovtsian Dance No.8

Side2 

 1. In The Steppes Of Central Asia

 2. Polovtsian Dance (Waltz Allegro)

 3. Melody From String Quartet In D

 4. Polovtsian Dance No.17

 

マジック・オブ・ボロディン

カマラータ指揮

キングズウェイ交響楽団

 

Side1 

 1. 歌劇「イーゴリ公」 ー 序曲

 2. 歌劇「イーゴリ公」 ー 韃靼人の踊り抜粋

 3. 弦楽四重奏曲第2番 ー 第3楽章:夜想曲

 4. 歌劇「イーゴリ公」 ー 韃靼人の娘の踊り

Side2 

 1. 交響詩中央アジアの高原にて」

 2. 歌劇「イーゴリ公」 ー 韃靼人の踊り 抜粋

 3. 弦楽四重奏曲第2番 ー 第2楽章 抜粋

 4. 歌劇「イーゴリ公」 ー 韃靼人の踊り 抜粋

 

 

カマラータが指揮者を務める、ボロディンの作品集。

 

ボロディンは、19世紀後半にロシア的な芸術音楽の創造を目指した集団「ロシア5人組(※)の一人。

※ その他メンバーには、バラキレフ、キュイ、ムソルグスキー、そして前回採り上げたリムスキー=コルサコフがいる。

 

彼の経歴を調べてみたところ、非常に驚いた。

 

帝政ロシアサンクトペテルブルクで、非摘出子として生まれ、血縁の無い農奴の息子として戸籍登録されるが、ピアノを含め優れた教育を受ける。

サンクトペテルブルク大学の医学部に入学、最優秀の成績で卒業後、陸軍病院に勤務。

24歳の時にヨーロッパへ長期出張した際、ムソルグスキーと知り合い、音楽に興味を持つ。

イタリアのピサ大学では臭化ナトリウムを用いた有機窒素の定量法を発見。

26歳でドイツのハイデルベルク大学に入学、メンデレーエフ(元素周期表を作成したことで有名)と知り合う。

大学卒業後、サンクトペテルブルク大学医学部生化学の教授となり、有機化学の分野で多大な業績を残す(※)

有機化学における化学反応の一種であるハンスディーカー反応は別名ボロディン反応とも呼ばれるなど、その名を残している。

 

今では音楽家・作曲家として有名だが、あくまでも職業は化学者であり、音楽に関しては「日曜作曲家」と自称していたと言う。

 

そうなんだ…

化学音楽、全く違う分野で名を残し、どれだけの才能なのだろう。

 

 

さて、このアルバムはそんなボロディンの作品集なのだが、よく見ると、交響詩中央アジアの高原にて」歌劇「イーゴリ公からの抜粋、弦楽四重奏曲第2番からの抜粋と、元の曲は3つのみだ。

 

アルバム・ジャケットに記載されている曲の英語タイトルを見ると色々な曲が収録されているように見えるが、以下の5曲は全て歌劇「イーゴリ公からの抜粋。

しかも"韃靼人の踊り"は通しで演奏せずにわざわざ4曲に分けている(タイトルも別の曲のように擬装(?)している)

 "Prince Igor Overture"

 "Dances Of The Polovtsi"

 "Polovtsian Dance No.8"

 "Polovtsian Dance (Waltz Allegro)"

 "Polovtsian Dance No.17"

 

そして以下の2曲は弦楽四重奏曲第2番からの抜粋だ(こちらもタイトルを別の曲のように擬装(?)している)

 "Nocturne"

 "Melody From String Quartet In D"

 

水増しか?  せめて交響曲第2番も有名なので、この曲からの抜粋を加えたら良かったのに、と思ったりもする。

 

と、勝手なことを書いてみたが、カマラータの編曲を含めて、アルバムとして良い感じにまとまっているし、これはこれで全然アリだ。

 

 

音の方も"Decca / Phase 4 Stereo"ならではの分離の良い音で、初期のプレスでもあるので、相変わらず素晴らしい響きがする。

    Side1:マザー1、スタンパー27(=BG)

    Side2:マザー1、スタンパー27(=BG)

 

 

ボロディンの代表曲を面白い編集で楽しめるし、音も良いし、ジャケットも雰囲気あるし、結構お気に入りのレコードである。

 

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(おまけ)

なお、日本においては1988年にキング・レコードから「〈おしゃれクラシック〉ボロディン~大いなる草原の彼方へ」というタイトルでCD発売されている。

ただし、ジャケットはこんな感じ…

 

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