今回の「レコード評議会」も「B-SELSで買ったレコード」シリーズの続き。
黄色い潜水艦の英国モノとストロベリー2枚の購入を決めた後、改めてレコード棚や壁を見てまわった。
B-SELSのレコード棚は入り口から奥に向かってファースト・アルバムから順に並んでいるのだが、「ハード・デイズ・ナイト」の棚の上に位置する壁に気になるレコードが掛かっている。
前回訪問時にも壁に掛かっていたレコードなのだが、「これに手を出してしまったら、ますます「沼」にハマることになってしまう」と見ないようにしていたものだ。
だが、どうにも気になって仕方がない。
…誘惑に負けた。
私「これ、聴かせていただいて良いですか?」
ご店主「どうぞどうぞ、聴いてください」
Something New
UK Export 盤(1964年)
Parlophone
CPCS 101
Side1:YEEX 7-B12 A 1
Side2:YEEX 8-B12 G 1
Side One
1. I'll Cry Instead
2. Things We Said Today
3. Any Time At All
4. When I Get Home
5. Slow Down
6. Matchbox
Side Two
1. Tell Me Why
2. And I Love Her
3. I'm Happy Just To Dance With You
4. If I Fell
5. Komm, Gib Mir Deine Hand
「サムシング・ニュー」の"UK Export 盤"だ。
まず「サムシング・ニュー」について説明しておくと、アメリカにおけるビートルズ5枚目のアルバムで、キャピトルから1964年にリリースされたものである。
ジャケットには、1964年にエド・サリヴァン・ショーへ出演した際の写真が用いられている。
センターレーベルは、レインボー・キャピトル。
映画「A Hard Day's Night:ビートルズがやって来る ヤァ!ヤァ!ヤァ!」のサウンドトラックは映画会社ユナイテッド・アーティスツから発売されており、キャピトルは同名タイトルのアルバムを契約上発売できなかった。
そこでキャピトルは、イギリス盤「ハード・デイズ・ナイト」からの8曲とその他3曲による11曲を「サムシング・ニュー」と名付けてリリースしたという訳だ。
以下太字の曲がその11曲☟
イギリス盤「ハード・デイズ・ナイト」
A面(Songs From The Film "A Hard Day's Night")
A Hard Day's Night
I Should Have Known Better
If I Fell
I'm Happy Just To Dance With You
And I Love Her
Tell Me Why
Can't Buy Me Love
B面
Any Time At All
I'll Cry Instead
Things We Said Today
When I Get Home
You Can't Do That
I'll Be Back
EP「ロング・トール・サリー」
A面
Long Tall Sally
I Call Your Name
B面
Slow Down
Matchbox
ドイツ盤シングル(ドイツ語)
A面
Komm, Gib Mir Deine Hand
B面
Sie Liebt Dich
ということで、「サムシング・ニュー」はキャピトルによるアメリカ仕様のアルバムなのであるが、B-SELSの壁に掛かっていたレコードはその"UK Export 盤"だ。
UK Export 盤とは何かと言うと、海外輸出用にイギリスで作られたレコードのことで、エクスポート仕様とも言われている。人口が少なく自国でプレスの無いヨーロッパ諸国向けに輸出されたものらしい。
レーベルはキャピトルではなく、パーロフォンだ。
何故「ハード・デイズ・ナイト」でなく、「サムシング・ニュー」が輸出されたのだろうか? おそらく映画会社ユナイテッド・アーティスツとの契約上の問題が絡んでいるのだろう。
と、説明が長くなってしまったが、「米国キャピトルによる編集盤を輸出用(人口の少ないヨーロッパ諸国向け)に英国パーロフォンが作ったレコード」ということで、要するに珍しいレコードだということ。
しかも、Side1:1A(マザー1,スタンパー3)、Side2:1G(マザー1、スタンパー1)と最初期プレスなのだ。
私「このレコード、前に来た時から気になっていたんですよ。そもそも珍しいものなのでしょうが、1A、1Gなんてスゴイですよね。」
ご店主「片面のセンターレーベルが剥がれていますし、表面のスレがかなりありますが、音は良いですよ」
私「音さえ良ければ、見た目は気にしない質なので、全然問題無いです」
で、まずはA面を試聴させていただいた…
私「これはスゴイ。これまでに無いほど、ダブル・トラックのボーカルがくっきりと聴こえます」
ご店主「鮮度が高いですよね」
私「ホントにこれは良い音ですね。曲順も面白い。3曲目で"Any Time At All"が聴こえて来た時には吃驚しましたよ」
ご店主「1曲目からいきなり"I'll Cry Instead"というのも面白いですよね」
続いてB面を試聴させていただくと…
私「…スゴイ。これはスゴイ良い音としか言いようがないです」
ご店主「表面スレはかなりありますが、音にあまり影響はないですね」
私「気になるノイズなんて全く無いです。鮮度が高くて、ホントに良い音ですよ。"If I Fell"は大好きな曲なのですが、コーラスがホントにきれいに聴こえます。目まぐるしく上に下に入れ替わるようなジョンとポールのコーラスが素晴らしいですね」
ご店主「私も"If I Fell"は大好きな曲です。ジョンの曲ですけど、音楽の理論に照らすと変なのかも知れませんが、なまじ音楽の知識があったらこんな曲は作れなかったでしょうね」
ああ、聴いてしまった…
こんなにも素晴らしい音を聴いてしまったうえで、買わないという選択肢があろうか?
「これ、買います」
ご店主曰く、UK Export 盤はそもそもプレス枚数が少ないのだそうで、しかもこのレコードは1A、1Gということで、本来なら相当な値段が付くところ。
それが、見た目が良くないため、値段がかなり抑えられており、音さえ良ければOKという私にとってはむしろ有難いというもの。
これも心置きなく試聴ができるからこそ、見た目では無く、音そのものが確認できる訳で、その意味でもB-SELSはホントに有難いお店だ。
私「ホントにスゴイ良い音でした。この値段で買えるのはラッキーですよ。ありがとうございます」
嗚呼、それにしても「これに手を出してしまったら、ますます「沼」にハマることになってしまう」と思いながら、抗いきれずに手を出してしまった。
ますます「沼」にハマって抜けられなくなる、これはマズイよなぁ、と思うのであった。
↑まあ、それが楽しいんですけど(笑)。
(おまけ)
とか何とか思いながら、大変満足して東京に帰って来てからのこと、散歩方々レコ屋に行ったところ、これ☟を見つけた。
で、安かったこともあり、聴き比べをしようと思い、ついつい買ってしまった。
Something New
US盤(Jacksonville Pressing)(1968年再発?)
Capitol
ST 2108
Side1:ST 2 2108 W9 #1 O
Side2:ST 1 2108 W10 #1
US Capitol 盤「サムシング・ニュー」だ。
W9、W10とマトが進んでおり、1968年頃の盤らしい。
聴いてみると、思いの外悪く無い。
イギリスからアメリカに送られたテープが良かったのだろうか? US盤にありがちな(?)変なエコーも無く、音がヘタっていることもなく、くっきりした音像で悪くない。
と言うか、UK Export 盤の新鮮さ、鮮明さにはさすがに敵わないものの、良い音だと言って差し支えないレベルだ。
良いじゃないか、US Capitol 盤。
と思っていたら、Side2の"And I Love Her"が始まって少しすると、ガリガリという音がして右チャンネルの音が30秒ほど小さくなった。
オーディオの接触不良か?と思ったが、同じところで音が小さくなる。
…これって、カッティング・ミスではないか。エラー盤というやつだ。
うーむ、以前も冒頭の音が歪んでいるUSシングル盤("Hello, Goodbye")があったが、やってくれるよ、US Capitol盤…
でもまあ、そんなこんなも含めて楽しめてしまうのがビートルズ。
ホント「沼」である。
さて、今回の「B-SELSで買ったレコード」シリーズは残りあと1回…