レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Let It Be / The Beatles【US盤】

手元にある「アビイ・ロード」6枚を全て採り上げたので、ビートルズからは一旦離れて、次の「レコード評議会」はクラシックかジャズにしようと思ったのだが、なかなか筆が進まない。

 

そんな折、仕事の帰り道にレコ屋に寄ったところ、こんな盤を見つけてしまった。

 

 

The Beatles

Let It Be

US盤(Winchester Pressing)(1970年)

Apple Records / ABKCO

AR 34001

Side1:Phil+Ronnie  JS-17,500-12 #4  Bell Sound sf -◁

Side2:Phil+Ronnie  JS 17,501-12 Bell Sound sf -◁


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レット・イット・ビー」のUS盤

 

ビートルズUS盤は音がイマイチだが、レット・イット・ビーUS盤は音が良い」という評価をよく見かけるので、以前から気になっていたものだ。

 

但し「レット・イット・ビー」のUS盤にはリプロ盤も横行している。

 

リプロ盤(リプロダクト盤)とは、正規盤を忠実に真似て作った非正規盤のことで、以前の呼び方で言えばカウンターフィット盤。要するにブートレッグ、海賊盤の一種。最近は、カウンターフィット盤はリプロ盤、ブートレッグはプライベート盤と言い換えられているようだ…

 

正規盤であることを確認すべくデッドワックスを見ると、"Bell Sound" "sf" "Phil+Ronnie"といった刻印がある。

 

"Bell Sound"とはアメリカのマスタリング・スタジオであるBell Sound Studiosのこと。

"sf"はBell Sound StudiosやAtlantic Studiosで仕事をしていたマスタリングやカッティングのエンジニアであるSam Feldmanのこと。

 

つまり、この「レット・イット・ビー」のレコードは、Bell Sound StudiosSam Feldmanがカッティングしたものということだ。

 

そして"Phil+Ronnie"は、このアルバムのリプロデュースを手掛けたフィル・スペクターとその妻ロニー・スペクターロネッツのリードシンガー)を指しているのだろう(何故デッドワックスに刻印がされているのか不明だが…  フィル・スペクターが指示したのか?)

 

この刻印からして、正規盤で間違いない。

ということで、購入を決めた。

 

ジャケットは、UK盤がシングル・ジャケットの一方、US盤はゲートフォールド(見開きジャケット)

センターレーベルは、UK盤が青リンゴの一方、US盤は赤リンゴだ。

 

 

さて、肝心の音はどうかと言うと…

 

メリハリの効いた音で各楽器が明瞭に聴こえ、気持ちの良い音だ。

やや高音域よりの響きがする一方で、低音域はパンチのある音がする。

全体的な印象としては、メリハリの効いた勢いのある(アメリカン)ロックな音、といった感じだろうか。

 

特にルーフトップ・コンサートでの演奏である "I Dig A Pony"I've Got A Feeling" "One After 909" はガツンとした音で、ライブ・バンドとしてのビートルズを満喫できる。

 

うーむ、これは想定外。

想定の上を行く良い音ではないか。

 

Bell Soundによるカッティングが優れていたことと、Winchesterバージニア州ウィンチェスター)工場でのプレスが良かったのだろう。

 

それに加えてプレスも若いというのもあるのだろうか?

と思って、センターレーベルを見ると "Maggie Mae"のクレジットが「P.D. (public domain)」となっている。調べてみると、これはファースト・プレスであるとのこと。

セカンド・プレスになると「P.D. arr. Lennon, McCartney, Harrison, Starkey」となる。

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今までもUS盤を何枚か聴いてきたが、音が歪んでいたり、欠けていたりすることもある一方、音が活き活きしていたり、響きが良かったりもする。

言ってみれば当たり外れが大きい訳だが、このレコードは正に「大当たり」。

 

US盤、ガチャガチャを回すようで面白い。

 

 

さて、もう一つ面白いものを発見した。

 

上がUK盤、下がUS盤。

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上の青リンゴがUK盤、下の赤リンゴがUS盤。

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お分かりいただけただろうか?

UK盤は "Dig A Pony"

US盤は "I Dig A Pony"

 

おそらくわざとUS盤は "I Dig A Pony" にしているな…

アラン・クラインフィル・スペクターの仕業だと思う。いたずらのようなものだろう。

 

なかなか面白い。