前回の記事ではディープ・パープルを採り上げたが、そうなると次に採り上げるのはこのバンドがお約束だ。
ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。
ディープ・パープルを脱退したリッチー・ブラックモアが結成したこのバンドの最高傑作と言われているアルバムだ。
Blackmore's Rainbow
Rainbow Rising
US盤(1976年)
Oyster / Polydor
OY-1-1601(2391 224)
Side1:OY-1-1601-A5-RE-3-PRC 1-1-8 STARLING PRC
Side2:OY-1-1601 B5-RE-1-PRC-1-1 STARLING
Side1
1. Tarot Woman
2. Run With The Wolf
3. Starstruck
4. Do You Close Your Eyes
Side2
1. Stargazer
2. A Light In The Black
レインボーの2枚目アルバム「虹を翔る覇者」。
1975年、音楽性の違い・対立からディープ・パープルを脱退したリッチー・ブラックモアは、ボーカルのロニー・ジェイムス・ディオを含むエルフ(Elf、ディープ・パープルのイアン・ギランとロジャー・グローバーが見出したバンド)のメンバーとアルバム「銀嶺の覇者(Ritchie Blackmore's Rainbow)」を制作。
その後、リッチーはロニー以外のメンバーを全員解雇、新たに集めた以下のメンバーで1976年に制作したアルバムが「虹を翔る覇者」という訳だ。
リッチー・ブラックモア:ギター
ロニー・ジェイムス・ディオ:ボーカル
コージー・パウエル:ドラム
ジミー・ベイン:ベース
トニー・カレイ:キーボード
日本ではこのメンバーによる体制を、中核を担うリッチー・ブラックモア、ロニー・ジェイムス・ディオ、コージー・パウエルの3人をとって「三頭政治」と呼んでいた。
このアルバムはレインボーのアルバムの中で最高傑作と言われている。
ChatGPTに聞いてみてもこのような回答だ。
『レインボーの中で最高傑作とされるアルバムは人によって異なりますが、一般的には1976年にリリースされた Rainbow Rising がその位置づけにあると考えられています』
で、このアルバムは、以下の3曲に尽きる。
Tarot Woman
イントロのムーグ・シンセサイザーからして、中世の妖しい雰囲気が漂う。
歌詞は、タロット(タロット・カード)を操る女に翻弄される男の歌。
8分を超える大作。ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団によるオーケストラ入りで、様式美を極めた曲。
歌詞は、占星術師(魔術師)に石塔を建てるために使役されていた奴隷の歌。だが信じていた占星術師は空から堕ちて死に、奴隷は唐突に解放される。
A Light In The Black
これも8分を超える大作。中間のキーボードとギターのインプロビゼーション部分が凄まじい。
歌詞は、Stargazerからの続きとなっている。解放された奴隷は途方に暮れるが、暗闇に一筋の灯りを見出し、故郷に向かう。
この頃のレインボーは、クラシック、バロック、中世、魔術、ファンタジー、様式美、といった言葉で語られることが多いのだが、その雰囲気がこの3曲には濃厚に漂っている。
ヘヴィメタルの形つまりは様式美というものを体現したアルバムであり、その後のヘビメタ界の礎となったアルバムであり、素直に凄いアルバムだと思う。
そして、音もなかなかのものだ。
リッチー・ブラックモアのギターの斬れ味、
ロニー・ジェイムス・ディオのボーカルの伸び、
コージー・パウエルのドラムの爆発力、
トニー・カレイのキーボードの流麗さ、
どれも凄い。
レコードで聴くと、その凄さはなおさら感じられる。
STARLINGの刻印もあるくらいだから、間違いない。
キレのあるブライトな響きで、音のスピード感が素晴らしく良い。
だが但し、これだけはいただけない。
これだけは正直不満だ。
ベースの存在感が感じられない。
と言うか、ベースが聴こえない。
ジミー・ベイン、どこにいった?
こういう音楽だけにヘビーなベースの低音が鳴り響いてこそ、と思うのだが、それが無いのだ。
この音楽を低音が鳴り響く轟音で聴けたら凄いだろう、と思うと残念でならない。
それさえあれば、ホント完璧だったのになぁ、と。
リッチーがギターの音を優先したため、ミックスダウンの段階でベースの音量を小さくした、という噂を聞いたことがある。
うーむ、ありそうな話ではある。
リッチーはワンマンだし、首斬り魔だし。
実際、このアルバム制作後にジミー・ベインをクビにしている。ついでにトニー・カレイもクビにしている。
そしてその後もリッチーの首斬りは続き、その結果、レインボーでは同一メンバーで制作されたアルバムはひとつとして無い…
(おまけ情報)
レインボーの初代ボーカリスト、ロニー・ジェイムス・ディオだが、Wikipediaにこのような記載がある。
「60歳を超えても精力的な活動を続けたので、メタル界のゴッドファーザーと呼ばれた。日本では「演歌の様にこぶしを効かせた歌い回し」で圧倒的な存在感を示したことから、ヘヴィメタル界の北島三郎と呼ばれ親しまれていた』
ちなみに2代目ボーカリスト、グラハム・ボネットはヘビメタ界の横山やすしと言われていた。
大学時代の友人は「歌う板前」とも呼んでいた。
追記:MUSIC LIFE、VIVA ROCK、ROCK SHOWといった雑誌のいずれかで「歌う板前」のフレーズを見た!との妻からの情報がありました。この呼び名は誰がオリジナルなのだろうか…