3回にわたって「鑑識レコード倶楽部」に登場するザ・フーの曲を採り上げた。
このため、ザ・フー熱のスイッチが入ってしまった。
"無法の世界(Won't Get Fooled Again)"は良いとして、"ハッピー・ジャック"や"マジック・バス"を採り上げておいて、これが無いというのはおかしいだろう。
ということで、今回の「レコード評議会」はザ・フーの原点とも言えるこの曲を採り上げよう。
My Generation
UK盤(1965年)モノラル
05944
SideA:45-116675-4C
SideB:45-116048-2C
A. My Generation
B. Shout And Shimmy
ザ・フーの3rdシングル"マイ・ジェネレーション"、そのUK盤。
(ハイ・ナンバーズ名義のものを含めると、実質4thシングル。)
全英チャート2位のヒットとなった、ザ・フーの名を一躍世に知らしめた一曲であり、最も重要なロック・アンセムの一つでもある。
何と言っても、若者のフラストレーションを爆発させた様な、このフレーズに限る。
I hope I die before I get old
(歳を食う前に死にたいぜ)
そして、引っ掛かりながら吃る様に歌うボーカル、曲が進むに連れての転調も若者の苛立ちをよく表している。
この曲を最初に聴いたのは高校生の頃(1985年半ば)。60年代ロック特集か何かでラジオから流れてきたのを聴いて衝撃を受けた。
リリースされた1965年、当時の若者が受けたその衝撃は一層凄かったに違いない。
この手元にあるUKシングル盤も、1965年にイギリスのどこぞのレコード店並び、どこぞの若者が聴いていたのかと思うと、何とも感慨深いものがある。
その若者は、この盤を聴いてどれほどの衝撃を受けたのだろう。
1965年のザ・フー
ザ・フーはパンクの元祖の一つと言われたりしているが、改めて聴いて思った。
"マイ・ジェネレーション"、歌の内容も演奏もその衝撃から、これは確かにパンクだ。
さて、この盤の音だが、モノラル針で聴いてこそ、その真価を味わうことが出来る。
ステレオ針で聴いても迫力はあるのだが、ちゃんとモノラル針に切り替えて聴いたところ、スピーカーから出て来る音が全然違うのだ。
左右スピーカーのど真ん中から圧のある音が真っ直ぐに飛び出して来る。音のスピード感も凄い。
個々の音も凄い。
中でも特にベースとドラムが凄い。
リード・ベースと言われるジョン・エントウィスルのベース・プレイ。素早い指捌きで音数が多いながらもアタックの強い音は"Thunderfingers"とも呼ばれた。
トレブルが掛かったベースがドゥンドゥン、ビンビンと凄い音で鳴る。
ちなみに有名なベースソロはこの時代にあっては革新的で、ギターソロと思われていたと言う。
キース・ムーン・スタイルとしか言いようのないキース・ムーンのドラム・プレイ。ずっとフィルインを叩いているかの如く、とにかく手数の多いドラミングだ。
ビシバシ、ダダンと終始叩きまくっている。最後は爆烈するドラミングが凄い。
ちなみにキースは後に「俺は世界一のキース・ムーン・スタイルのドラマーだ!」との名言(迷言)を残している。
繰り返しになるが、この盤を聴いた若者はどれほどの衝撃を受けたのだろう。
ザ・フーのメンバーのうち、キース(1978年、32歳)とジョン(2002年、57歳)は亡くなった。
一方で、"I hope I die before I get old"と歌ったロジャー・ダルトリー(80歳)とこの曲を作ったピート・タウンゼント(78歳)は生き残っている(2019年にはアルバム「WHO」も制作している)。
"I hope I die before I get old"は年齢を重ねる毎にその意味合いが変わって行くものなのかも知れない。
10代の頃は「歳をとる前に死にたい」といった意味だったものが、歳を重ねるうちに「いつまで情熱をもって生きる」という様に…
その意味において、何歳になっても"I hope I die before I get old"は生きた言葉だと思う。
上段:ベルギー盤、デンマーク盤、フランス盤
下段:スウェーデン盤、イタリア盤、オランダ盤
という訳で、これからも情熱を持ってレコードを掘り続けます。