完全にザ・フー熱のスイッチが入ってしまった。
こうなったら手持ちのシングル盤を順次採り上げていくか…
ということで、今回の「レコード評議会」はこれにしよう。
Pinball Wizard
UK盤(1969年)
Track Record
604027
SideA:604027 A//1 11 17
SideB:604027 B//1 12 5
A. Pinball Wizard
B. Dogs Part Two
ロック・オペラと名高いアルバム「トミー」からのシングル・カットである"ピンボールの魔術師"。
「トミー」のリリース日が1969年3月19日であるのに対し、"ピンボールの魔術師"は3月7日なので、アルバムに先行してリリースされたシングル。
全英4位、全米19位のヒットとなった曲だ(ちなみにアルバム「トミー」は全英2位、全米4位の大ヒット)。
ピンボールの王様を自負する達人が、三重苦(耳が聞こえない、口が利けない、目が見えない)のトミーの驚異的なピンボール・プレイに脱帽し、「彼こそがピンボールの魔術師だ」と称える歌。
非常に良く出来たアレンジであり、曲のドラマチックな展開に良く合っている。
冒頭静かに始まるアコースティック・ギターが高速カッティングとなり、エレクトリック・ギター、ベース、ドラムと音が重なって行く。
ギター、ベース、ドラムだけで組み立てられており、キーボードやストリングスなどが使われていないにも関わらず、音の多彩さを感じることが出来る。
完成度の高いロック・チューンだと思う。
さて、このシングル盤についての音だが…
まず、音の定位は以下の通り。
右側:アコースティック・ギター
中央:ベース、ドラム、ボーカル
左側:エレクトリック・ギター
1960年代ならではの右と左に音がはっきりと分かれているミックスなのだが、それ故に音の分離が良く、それぞれの楽器がよく聴こえる。
切先鋭いギター、よく動くベース、手数の多いドラム、どれも45回転パワーを感じさせる密度の濃い音だ。
アルバム「トミー」で物語の流れの中で聴くのも良いが、単体の曲として聴くのも良いものだ。
と、A面は文句無しのこのシングル盤なのだが、B面はどうかと言うと…
B面"Dogs Part Two"はギター、ベース、ドラムによるアップテンポのインスト・ナンバー。
1968年のシングル"Dogs"とは全く関係が無い。
作曲者のクレジットはキース、ジョンの犬Jason、ピートの犬Towser。犬の鳴き声がコーラスで入っている。
うーむ、はっきり言って捨て曲の類い。
まあ、こういった下らないことをするのもザ・フーの面白いところではある。
左から、US盤、ドイツ盤(欧州各国盤)、日本盤
(おまけ情報 その1)
Wikipediaにこのような記載がある。
シングル・ヴァージョンは、アルバム・ヴァージョンよりもテンポが速められた。
The single version was slightly sped up and runs to 2:57, whilst the natural length album version runs to 3:04.
そうなのか?!
と手持ちのアルバムをレコードとCDの両方で聴いてみた。
が、アルバムもシングルも同じテンポにしか聴こえない。
(おまけ情報 その2)
歌詞の中に、このようなフレーズがある。
I thought I was the Bally Table King
But I just handed my pinball crown to him
俺は自分のことをBally Tableの王様だと思っていた。
だけど、たった今ピンボールの王冠をアイツ(トミー)に明け渡したよ。
で、Bally Tableって何?
調べてみると、Bally Manufacturingなるアメリカの会社が提供するピンボールやスロット・マシンの台のことらしい。
要するにBally Table Kingとは、ピンボールの王様を意味している訳だ。
Bally社製ピンボール・マシンの広告(1968年)
なかなか良いデザインだな。