ザ・フーのシングル盤シリーズ、「ライフハウス」関連のアルバム未収録曲3曲のうちの2曲目。
「ライフハウス」プロジェクトが頓挫して「フーズ・ネクスト」となった後もピートは諦められず、「ライフハウス」を念頭に幾つかの曲を作った。
そして1972年3月のセッションで2曲録音した。
今回の「レコード評議会」で採り上げるのは、その内の1曲であるこの曲だ。
Join Together
UK盤(1972年)
Track Record
2094-102
SideA:2094102-A2 2 PORKY A
SideB:2094102-B2 2 G
A. Join Together
B. Baby Don't You Do It
1972年6月にリリースの"ジョイン・トゥゲザー"。
1969年8月のウッドストックから程なくしてザ・フーとザ・バンドのジョイント・コンサートが企画されたが、そのラジオ&テレビ・コマーシャルのために作られたジングル"Join Together With The Band"が元ネタとのこと(このジョイント・コンサートは最終的に企画倒れとなった)。
その後「ライフハウス」を念頭に、このフレーズを再利用して作られたのがこの曲だ。
「ライフハウス」のストーリーは、物凄く簡単に説明すると以下の様なものなのだが、「コンサートに集まろう、皆で結集しよう」という内容なのだろう。
気候変動や環境汚染から人々は"ライフ・スーツ"なるものを装着させられ、"グリッド"と呼ばれるシステムに接続されている。そして睡眠、食事、娯楽に至るまで、生活の全てが"グリッド"により供給されている。
その世界では音楽は邪悪なものとして禁止されている。その中、主人公ボビー・バードは“ライフハウス"と名付けたロック・コンサートを秘密裏に開催している。
ボビーがハッキングした"グリッド"を通して呼び掛けたことで "ライフハウス"に多くの人が集まる。そして音楽の力が人々を抑圧された生活から解放する。
「皆で結集しよう」との分かりやすいテーマが行進曲風のリズムに乗って進む。ベタな曲ではあるが、シングルとして映える曲だ。
シンセサイザー、ハーモニカ、マウスハープ(ユダヤハープとも言う、ビョンビョンする音がこれ)が使われ、アレンジの面でも工夫が見られる。
プロモーション・フィルムも作られている。
英国チャート9位、米国チャート17位と、なかなかのヒットとなった。
このシングル盤も"Let's See Action(邦題:ワイルド・アクション)"と同様にグリン・ジョンズが共同プロデューサーとして名を連ね(センターレーベルに Produced by The Who Associate Producer Glyn Johns とある)、George Peckhamがマスタリング&カッティングを手掛けている(A面に PORKY の刻印がある)。
ちなみにレコーディングにはザ・バンドのリヴォン・ヘルム(ドラム、ボーカル)がマウスハープ、マンドリン、バッキング・ボーカルで参加していると言う。
正に"Join Together With The Band"な訳だ。
で、音はどうかと言うと、キレとコクのある音と言うか、活き活きとした音で、さすがGeorge Peckhamの仕事だ。
CDで聴いていた時は、ベタな曲ゆえに一本調子でやや退屈に感じていたものが、音が活き活きしているので「"ライフハウス"コンサートに行こう」といった気分になる。
さてB面はどうかと言うと、マーヴィン・ゲイの"ベイビー・ドント・ユー・ドゥ・イット"のカバーで、1971年12月13日サンフランシスコでのライヴ。
この時期のザ・フーのライブが聴けるには単純に嬉しい。しかも6分に及ぶ熱演。
「Quadrophenia(四重人格)」に収録の"The Real Me(リアル・ミー)"に少し似ていて、凄いドライブ感のベースを聴くことが出来る。
ということで、A面B面にナイスな曲がカップリングされたシングル盤だ。
ただ、少々もったいないな、と思うことがある。
シンセサイザーのパートをギターで演奏したらもっとロックな感じになっただろうに…
ロジャーもこう語っている。
シンセサイザーを取り入れることには疑問があった。一つの些細な音を作るのにかなりの時間を掛けていたが、ギターの方がよっぽど良いと思っていた。ギターの方が好きだ。ロックにとってギターは完璧な楽器だ。シーケンサー使うより、ピートがギターで弾いた方が良かったと思う。
ということで、今回はこの辺で…
1段目左から:ドイツ盤、イタリア盤
2段目左から:ポルトガル盤、スペイン盤