レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Relay / The Who【UK盤】

ザ・フーシングル盤シリーズ、「ライフハウス」関連のアルバム未収録曲3曲のうちの3曲目。

 

 

ライフハウス」を念頭に1972年3月のセッションで2曲録音したうちの1曲が、前回記事の"ジョイン・トゥゲザー"。

 

そして残る1曲が、今回の「レコード評議会」で採り上げるこの曲だ。

 

 

The Who

Relay

UK盤(1973年 Repress盤)

Track Record

2094-106

SideA:2094106 A▽1 11 14  PORKY 

SideB:2094106 B//2▽ 11 2  PECKO


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A. Relay

B. Waspman

 

 

1972年12月にリリースの"Relay"。

邦題は"奴らに伝えろ!"。

 

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ライフハウス」のストーリーは、物凄く簡単に説明すると以下の様なものなのだが、「コンサートでは革命的な何かが起こるぞ、皆に伝えよう」という内容なのだろう。

"奴らに伝えろ!"といったニュアンスでは無いと思う。

 

気候変動や環境汚染から人々は"ライフ・スーツ"なるものを装着させられ、"グリッド"と呼ばれるシステムに接続されている。そして睡眠、食事、娯楽に至るまで、生活の全てが"グリッド"により供給されている。

 

その世界では音楽は邪悪なものとして禁止されている。その中、主人公ボビー・バードは“ライフハウス"と名付けたロック・コンサートを秘密裏に開催している。

 

ボビーがハッキングした"グリッド"を通して呼び掛けたことで "ライフハウス"に多くの人が集まる。そして音楽の力が人々を抑圧された生活から解放する。

 

英国チャート21位、米国チャート39位でまずまずのヒットではあるが、"ジョイン・トゥゲザー"(英国9位、米国17位)の方が売れた。同曲のメッセージの方が分かりやすかったのだろう。

 

だが、"Relay奴らに伝えろ!"の方がイカしている

 

シンセサイザーに繋いで強いワウを掛けたようなギターが終始鳴り続ける。

"Baba O'Rileyババ・オライリィ"や"Won't Get Fooled Again無法の世界"でのシンセと同じ使い方と言える。

 

そこにオーバードライブの掛かったギター、アコースティック・ギター、ベース、ドラムが重なるというピートお得意のアレンジで、ヘビーなロックが展開する。

ロジャーのボーカルもドスが効いている。

 

 

このシングル盤もA面はグリン・ジョンズが共同プロデューサーとして名を連ねている(センターレーベルに Produced by The Who Associate Producer Glyn Johns とある)

 

そしてこのシングル盤は1973年の2ndプレスなのだが、マトはオリジナル盤と同じ。いわゆるRepress盤であり、A面にPORKY、B面にPECKOの刻印がある。

A面B面ともGeorge Peckhamがマスタリング&カッティングを手掛けているということだ。

 

 

では音はどうかと言うと、期待通りエッジの効いた斬れ味鋭い音。

特に3種類のギターがそれぞれ立体的に聴こえるのが素晴らしい。

相変わらずよく動くジョンのベースもファンキーかつヘビーで良い感じだ。

 

 

ちなみにこの時期「Rock Is Dead—Long Live Rock」というタイトルでアルバム制作のプロジェクトがあり、 "Relay奴らに伝えろ!"はそのA面1曲目にする予定だったという 。確かにそれに相応しい曲だ。

 

 アルバム「Rock Is Dead—Long Live Rock」収録予定リスト

 1. Relay

 2. Get Inside

 3. Women's Liberation

 4. Love, Reign o'er Me

 5. Long Live Rock

 6. Is It In My Head?"

 7. Put The Money Down

 8. Can't You See I'm Easy

 9. Join Together With The Band

 

なお「Rock Is Dead—Long Live Rock」は結局は頓挫するが、後に「Quadrophenia四重人格)」に発展する。

 

 

さてB面についてだが、作曲者のクレジットはキースとなっているが、実際はジョンが作った曲なのだというキースの作った曲がシングル盤に収録されたことがなかったため、このようなことをしたのだとか)

 

で、どんな曲かと言うと、ギター・ベース・ドラムが簡単なリフを繰り返すだけの構成に、キースsting!, bzzzz, waspman!刺すぞ!ブーン、蜂男だぞ!と歌う(?)だけの、はっきり言って「捨て曲」。

 

ザ・フーのB面にありがちな展開だが、これは余りに酷過ぎる

George Peckhamもマスタリング&カッティングしながら「何だこれ?ふざけているのか?」と思ったに違い無い。

 

1回聴いたら2度と聴く必要の無い曲と言って良いほどの「捨て曲」。

この曲に勝る捨て曲があるなら教えて欲しいというほどの「キング オブ 捨て曲」「捨て曲の王様」だ。

 

そのおかげなのか、ほとんど聴かれていないのだろう、溝の状態が素晴らしく良く、音は頗る良い。

 

 

ということで、A面はイカしているのに、B面は捨て曲の王様、というこのシングル盤、これもまたザ・フーである。

 

 


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1段目左から:オランダ盤、イタリア盤、ベルギー盤

2段目左から:ポルトガル盤、ドイツ盤、スペイン盤

3段目左から:アンゴラ盤、トルコ盤、フランス盤

 

 

 

 

(蛇足)

"奴らに伝えろ!"という邦題は"太陽にほえろ!"(1972年7月開始の刑事ドラマ)にインスパイアを得ているのではないだろうか?

 

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ともあれ、何ともイカした邦題ではある(字体もイカしている)。