7回にわたり続けてきた「レコード評議会」イヴァン・リンス・シリーズ。
ここのところ、ずっと聴いてきたが、イヴァン・リンスは本当に稀代のメロディメイカー、天性のメロディメイカーだ。
で、手持ちの盤も残り1枚ということで、ついに最終回。
Ivan Lins
Ivan Lins
ブラジル盤(1980年 / コンピレーション盤)
EMI
31C 052.422.143
SideA:422143-A 1-1-1-4
SideB:422143-B 1-1-1-3
SideA
1. Dinorah, Dinorah
2. Aos Nossos Filhos
3. Bandeira Do Divino
4. Somos Todos Iguais Nesta Noite
5. Cartomante
6. Formigueiro
SideB
1. Guarde Nos Olhos
2. Antes Que Seja Tarde
3. Novo Tempo
4. A Noite
5. Quadras De Roda
6. Forró Do Largo
イヴァン・リンスが1977年から1980年に所属していたブラジルEMI時代のコンピレーション盤。
ただ、コンピレーション盤と言ってもその選曲が面白い。と言うか、偏っている。
Somos Todos Iguais Nesta Noite(今宵楽しく / 1977年)
A1. Dinorah, Dinorah(ヂノラー・ヂノラー)
A4. Somos Todos Iguais Nesta Noite(今宵楽しく)
B5. Quadras De Roda(輪になって踊ろう)
Nos Dias De Hoje(ノス・ヂアス・ヂ・オージェ / 1978年)
A2. Aos Nossos Filhos(息子たちへ)
A3. Bandeira Do Divino(神の旗)
A5. Cartomante(カード占い師)
B1. Guarde Nos Olhos(瞳に隠して)
B6. Forró Do Largo(ラルゴのフォホー)
A Noite(ある夜 / 1979年)
A6. Formigueiro(アリの巣)
B2. Antes Que Seja Tarde(今を生きよう)
B4. A Noite(ある夜)
Novo Tempo(1980)
B3. Novo Tempo(新しい時代)
アルバム「Somos Todos Iguais Nesta Noite」と「A Noite」からそれぞれ3曲。
一方で「Novo Tempo」からは1曲のみ。
そして「Nos Dias De Hoje」からは5曲。
著しく偏った選曲だ。
このコンピレーション盤がリリースされたのは1980年ということで、アルバム「Novo Tempo」と同じ年。
このため、セールスを勘案して、同アルバムからは選曲を絞ったのだろうが、タイトル曲の1曲のみとは…
ベスト盤なのであれば、"Arlequim Desconhecido"(名もなき道化役者)など、他にも収録されるべき曲もあるだろうに…
そしてアルバム「Nos Dias De Hoje」からは5曲。
同アルバムは全10曲なので、その半分が選曲されていることになる。
また、このコンピレーション盤は全12曲なので、その4割が同アルバムからの選曲で占められていることになる訳だ。
ブラジルEMI時代のベスト盤かと思いきや、ベスト盤と言うにはあまりに偏った選曲で、コンセプトがよく分からないコンピレーション盤だ。
だが、収録曲に偏りがあるとは言え、黄金期と言われる時代の曲であり、どれも素晴らしい。
イヴァン・リンスの曲は良いなぁ、素晴らしいなぁ、と思わせてくれるものばかりだ。
しかもこの盤、音そのものもかなり良い。
コンピレーション盤の中には曲毎に音のばらつきが目立つものもあるが、この盤はその様なことも無く、どの曲も響きが揃っていて、力強く鳴る。
音の抜けも良く、新鮮さもあって、なかなかのアタリ盤だ。
但し、これはどうよ…
このジャケット…
当時のブラジルにおけるイヴァン・リンスのイメージって、こんな感じだったのか?
それにこの手抜き感…
もうちょっと何とかならなかったのか…
ということで、イヴァン・リンス・シリーズ最終回は、偏った選曲のよく分からないコンセプト&手抜き感満載のジャケットながら、黄金期の素晴らしい曲が収録されたコンピレーション盤でした。
ケチを付けつつも、曲と音が良いので、結構気に入っている。
(おまけの考察)
アルバム「Nos Dias De Hoje」からの収録曲が5曲もあるのは何故か?
このジャケット、警察に逮捕されて撮られた写真を模したデザインだ。
容疑者番号 14 05 78 はアルバムのリリース日(1978年5月14日)を意味しているのだろう。
こんなジャケット、大丈夫だったのだろうか?
当局に目を付けられるのを恐れたレコード店は、店頭に置くことを躊躇ったのではないだろうか?
となると、当然売れ行きは芳しく無い…
良い曲が収められているのに、このままでは広く知られないままになってしまう…
そこでブラジルEMIは、コンピレーション盤の制作に際して、このアルバムの半分にあたる5曲を選曲し、これをセールスポイントにした。
どうでしょう?あり得そうな話だと思いますが…