前回の記事で「ビートルズの偽モノはまだまだあるのだった。次号に続く…」と書いてしまった。
ということで、今回もビートルズネタになります…
A Collection Of Beatles Oldies
フランス盤(1967年)モノラル
ODEON / EMI Pathé Marconi
LSO 107
Side One:XEX 619 21 M6 251083
Side Two:XEX 620 21 M6 251084
Side One
1. She Loves You
2. From Me To You
3. We Can Work It Out
4. Help!
5. Michelle
6. Yesterday
7. I Feel Fine
8. Yellow Submarine
Side Two
1. Can't Buy Me Love
2. Bad Boy
3. Day Tripper
4. A Hard Day's Night
5. Ticket To Ride
6. Paperback Writer
7. Eleanor Rigby
8. I Want To Hold Your Hand
今回の「レコード評議会」は、ベスト盤「オールディーズ」、そのフランス・モノラル盤。
このアルバムは、英国でのリリースは1966年だが、discogsによるとフランスでは1967年とのこと。
1963年から1966年までのシングルを中心に選曲されている。分類すると以下の通り。
① UKシングル/UKアルバム未収録曲:7曲
From Me To You
She Loves You
I Want To Hold Your Hand
I Feel Fine
Day Tripper
We Can Work It Out
Paperback Writer
② UKシングル/UKアルバム収録曲:6曲
Can't Buy Me Love
A Hard Day's Night
Ticket To Ride
Help!
Yellow Submarine
Eleanor Rigby
③ UKシングル無し/UKアルバム収録曲:2曲
Yesterday
Michelle
④ UK未発表曲:1曲
Bad Boy
モノラル盤とステレオ盤の両方でリリースされているのだが、この時に作られたステレオミックスも多い(※)。
※ ①UKシングル曲/UKアルバム未収録曲のうちの6曲について、この時にステレオミックスが作られた。但し、She Loves You はマスターテープが破棄されており、ステレオミックスが作れなかったため、ステレオ盤には擬似ステレオで収録されている。
そして音の方だが、「アナログ・ミステリー・ツアー(湯浅学著)」によると(※)、UKステレオ盤は鮮度が高い良音である一方、UKモノラル盤は今一つ精彩に欠けるらしい。
※「アナログ・ミステリー・ツアー」より
♦︎ 輪郭のはっきりしないUKモノに比べ、新たにステレオ・ミックスしたUKステレオ盤は取れたての音。
♦︎ UKモノ盤。シングルの寄せ集めでマスターのジェネレーションが進んでいるためか回転数が33回転のためか、あるいは曲数が16曲と多いためか、オリジナル・シングルの音が染み付いた耳には本作のモノ盤はどうも精彩に欠けるように感じられる。UKモノにしては珍しく今ひとつの出来。
♦︎ 同じUK盤でもステレオは本作用に新たなステレオ・ミックスが作られた曲が多いせいか鮮度が高く楽しめる。モノが今ひとつであることを考えると、UK盤で聴くならステレオの方がいいのでは。
と、前置きが長くなったが、さて独自カッティングであるフランス・モノラル盤の音はどうなのか?
聴いてみると、これがかなりの良音。
鮮度が高くキレの良い音、音圧も高くパンチのある音。
UKモノラル盤は今一つ精彩に欠けると言われているのに、フランス・モノラル盤、これは良いではないか!
独自カッティングが吉とでたか?
が、聴き進めて行くと、何となく違和感、いや激しい違和感が…
一聴しただけでも、あれ、おかしいな?と…
Side One
From Me To You:冒頭のハーモニカが無い?
Help!:あれ?このボーカルの節回しは…?
Yesterday:サビのエコーが掛かっていない?
Yellow Submarine:中間部の後、ジョンの最初の合いの手が無い?
Side Two
A Hard Day's Night:エンディングが長い?
Ticket To Ride:エンディングが長い?
Paperback Writer:激しいエコーが掛かっていない?エンディングが短い?
これって、ステレオミックスの特徴ではないのか?
…ということで、ステレオミックスをモノラルでカッティングしたものであることが判明。
フランス・モノラル盤、偽モノだった。
モノラルとステレオのミックス違いを楽しみたかったのに、偽モノとは…
しかし、視点を変えれば、「イエロー・サブマリン」UKモノラル盤も偽モノだし、「アビイ・ロード」「レット・イット・ビー」のブラジル盤も偽モノらしいし、そう考えると、偽モノもビートルズ・レコード史の1ページ。
などと思いながら聴いているうちに、愛着が湧いてきて、今ではリピートして聴いている。
しかし、英国からフランスへ送られたのはステレオテープのみだったということなのか?
何故にフランスへはモノラルテープが送られなかったのだろう?
もしかすると、他の国でも同じことが行われているのだろうか?
だとすると、英国以外で独自カッティングされたモノラル盤は全て偽モノ?