レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Sessions / The Beatles【*賊盤】

前回に続き、ビートルズ未発表アルバムを採り上げます。

 

前回記事の「ゲット・バック」と同様、今から30数年前、第二ビートルズ・マイブームの時に入手した海賊盤です。(これも大学の近くにあった小さな輸入レコード店で、2千円程度で購入したものです。)

 

今回採り上げるこの盤は、ジャケットがきれいで、裏面にはParlophoneとEMIのロゴやバーコード、Factory Sample Not For Sale との印刷もあります。

このため、日本未発売レコードの見本盤、テスト盤の類いかな、と思いながら購入した記憶があります。

 

海賊盤と意識せずに購入していた訳ですが、事情を知っていれば、明らかに海賊盤と分かるシロモノです。

 

海賊盤は販売する方も購入する方も宜しいことではないのですが、相当昔のことでもあり、今や時効ということで、お許しいただければと思います。

 

 

ということで、

今回の「レコード評議会」は、リリース直前まで行きながらお蔵入りした未発表アルバムであるこの海賊盤

 


The Beatles 

Sessions 

製造国不明(1985年?)

(Parlophone、EMI)

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A1:Come And Get It

A2:Leave My Kitten Alone

A3:Not Guilty

A4:I'm Looking Through You

A5:What's The New Mary Jane?

 

B1:How Do You Do It?

B2:Besame Mucho

B3:One After 909

B4:If You've Got Troubles

B5:That Means A Lot

B6:While My Guitar Gently Weeps

B7:Mailman, Bring Me No More Blues

B8:Christmas Time (Is Here Again)



ビートルズ未発表音源集セッションズ」。

 

1985年(1984年という情報もあり)、編集が完了してマスターテープも出来上がり、さらにはアルバムカバーも制作され、リリース直前まで行っていたにも関わらず、某メンバー(誰なのか明らかにされていない ※)から異議が出たため、お蔵入りしたという。

 

※ 1985年のことなのだから、ジョンでは無い。リンゴが口出しするとは考えにくい。となると、ポールかジョージなのだが、どちらもあり得そう。どちらだろう?

 

なお、この「セッションズ」がお蔵入りした結果、10年後に大幅にボリュームアップして「アンソロジー」(1995〜1996年)となった訳だ。

 

 

さて、まずはアルバムカバー(ジャケット)だが、以下の2つが最終検討されていたようだ。

 

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私が持っている盤は上のものだが、煽るような文句が書かれている。

 

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   At Last !  A New Collection

   Of Previously Unreleased Material

日本盤でリリースされたとして、帯(オビ)を付けるなら「遂に発売!未発表音源集」といった感じか。

ビートルズファンなら買うだろうな。

 

 

で、肝心の内容だが、なかなか興味深い曲が並んでいる。

 

the complete BEATLES recording sessionsザ・ビートルズ レコーディング・セッションズ(マーク・ルーイスン著)を参考に、録音データを読み解きつつ、感想を記すと…

 

 

A1:Come And Get It

録音日:1969年7月24日(木)

アルバム「アビイ・ロード」セッションの最中、バッド・フィンガーに提供する曲としてポールが一人でデモ録音したもの。

なお、同日に”Sun King”と”Mean Mr. Musterd”のベーシックトラックも録音されている。

 

ポールの才能が発揮された、ポップで良い曲だと思う。

もし、ビートルズとしてメンバー全員で演奏していたらどうなっていたかな?と想像すると楽しい。

 

一方で、明るい曲調のこの曲は、この時期のビートルズとしてはリリースしないだろうな、とも思う。

この曲が収録されている「アビイ・ロード」は想像できない。

 

ちなみにバッド・フィンガーのバージョンは、アレンジも歌い方も、このポールによるデモと殆ど同じ。

 

A2:Leave My Kitten Alone

録音日:1964年8月14日(金)

アルバム「ビートルズ・フォー・セール」セッションでの録音。

同アルバムに収録するカバー曲(アルバム14曲中、6曲がカバー曲)の候補だったのだが、最終的に選ばれなかったもの。

なお、同日に"I'm A Looser"も録音されている。

 

ジョンのボーカルが冴えるロックンロール・ナンバー。

曲の仕上がりも良く、他のカバー曲の代わりにこの曲を入れても良かったのでは?と思える。

 

逆にカバー曲なのにパンチがあり過ぎて、オリジナル曲が霞んでしまう可能性があるとして、選ばれなかったのか?

 

A3:Not Guilty

録音日:1968年8月7日(水)、8日(木)、9日(金)、12日(月)

アルバム「ホワイト・アルバム」セッションでの録音。

リハーサルを含み、4日間を掛けて102テイクにも及ぶ録音がなされたものの、結局お蔵入りとなったもの。

後にアコースティックな形にアレンジを変えて、ジョージの1979年ソロアルバム「慈愛の輝き」に収録される。

なお、9日には"Mother Nature’s Sun"をポールが一人で録音している。

 

さすがに102テイクも重ねただけあって、曲は仕上がっている。

何故に「ホワイト・アルバム」に収録されなかったのだろう?

 

"While My Guitar Gently Weeps"と"Savoy Truffle"には負けるが、"Long, Long, Long"と"Piggies"と比べても遜色はないと思うが…

 

A4:I'm Looking Through You

録音日:1965年10月24日(日)

アルバム「ラバー・ソウル」セッションでの録音。

後日のセッションで、アレンジを変えたり、歌詞を加えたりして、アルバム収録のバージョンとなる。

 

中間部分(Why, tell me why did you not treat me right / Love has a nasty habit of disappearing overnight)が出来ていないため、デモっぽい印象が拭えないが、これはこれでアリ、とも思える。

 

A5:What's The New Mary Jane?

録音日:1968年8月14日(水)

アルバム「ホワイト・アルバム」セッションでの録音。

ジョンとジョージによる演奏で、ヨーコとマル・エヴァンスも参加しているらしい。

後に1969年11月26日(水)のセッションで、"You Know My Name (Look Up The Number)"とともにミキシングが行われ、プラスティック・オノ・バンド名義でシングルリリース(A面”You..."、B面"What..")の直前まで行ったものの、最終的に発売中止となった。

なお、”You..."は1970年3月6日(金)にシングル"Let It Be"のB面としてリリースされた。

 

ジョンによる前衛路線の曲。

童謡っぽい感じのメロディで曲は始まるが、途中から笑い声、叫び声(ヨーコの声も聴こえる)、さらにはガラクタのような音が流れてくる。

 

結局、アルバム「ホワイト・アルバム」には収録されず、お蔵入りするのだが、正直言って正解と思う(同じ前衛路線でも"Revolution 9"のほうが良いかな…)

 

でも、ビートルズの未発表曲と言われると、こんな曲でも有難く聴いてしまうのは何故だ?

 

B1:How Do You Do It?

録音日:1962年9月日(火)

デビュー・シングル候補曲(ミッチ・マレーなるソングライターの作)だったもの。

同日に"Love Me Do"(リンゴのドラムによるバージョン)も録音されている。

 

アイドルっぽい感じの曲で、主にジョンがボーカル。

この曲でデビューしなくて正解だったと思う。

 

B2:Besame Mucho

録音日:1962年6月6日(水)

EMIのオーディションとしてのセッションでの録音。

同日に"Love Me Do"、"P.S. I Love You"、"Ask Me Why"も演奏されている。

なお、当時のドラムはピート・ベスト。

ビートルズは無事オーディションに合格するのだが、その後、ピート・ベストは解雇され、リンゴが加入する。

 

ポールのボーカルで、なかなかに勢いもあり、好演。

しかし、オーディションで何故このラテン・ナンバーを演奏したのだろう?

 

他の演奏曲の中にも、得意なロックンロール・ナンバーが無いのだが、レコードが売れそうな曲を選んでオーディションに臨んだということか?

 

B3:One After 909

録音日:1963年3月5日(木)

後に、1969年1月30日(木)のRooftop Concertで演奏され、アルバム「レット・イット・ビー」に収録される曲の初期バージョン。

3rdシングル("From Me To You"、"Thank You Girl")のセッションでの録音。

この日、シングルの2曲とこの曲の他、"What Goes On"も録音予定だったが、時間切れで実現しなかったという。

もし、録音されていたら、4曲でEPをリリースするつもりだったのだろうか?

 

「レット・イット・ビー」収録バージョンはアップテンポだが、こちらの演奏はミドルテンポで、歌詞の一つ一つを丁寧に発音しながら歌っている。

ジョンとポールが一緒に歌う(ジョンの3度上でポールが歌う)のは、両テイクとも同じ。

 

完成度も高く、お蔵入りしてしまったのが勿体ない。

曲も良いし、シングルとしても通用したのではないか?

 

B4:If You've Got Troubles

録音日:1965年2月18日(木)

アルバム「ヘルプ!」セッションでの録音。

リンゴのボーカル(しかもダブルトラック)。

同日に"You've Got to Hide Your Love Away"および"Tell Me What You See"も録音されている。

 

ギターソロの前に Rock on!  Anybody! と鼓舞する、リンゴの掛け声が入るところがなかなか良い。

なかなかに勢いのある演奏だし、「ヘルプ!」に収録されていても全く違和感は無い。

 

だが、何故か皆が気に入らなかったなようで、カバー曲"Act Naturally"が選ばれ、この曲はお蔵入りする(こちらの方が良いと思うのだが…)

 

B5:That Means A Lot

録音日:1965年2月20日(土)

アルバム「ヘルプ!」セッションでの録音。

その後、3月30日(火)にも再度演奏されたが、上手くいかないとして、結局はP.J.プロビーに提供された。

 

実質ポールの手による曲のようで、彼らしいメロディの良い曲だと思う。

しっかりと仕上げられていれば「ヘルプ!」にも違和感なく収められただろうし、人気のある曲になっていたのではないか?

 

この演奏はまだデモっぽい感じを残しており、また何故かエコーが過剰に掛けられているのが惜しい。

 

B6:While My Guitar Gently Weeps

録音日:1968年7月25日(木)

アルバム「ホワイト・アルバム」セッションでの録音。

この日、ジョージは一人でこの曲を数回にわたってデモ録音したのだが、その中の第1テイク。

アコギ1本とボーカルによる演奏で、途中で少しだけオルガンが入る。

その後、アレンジが練られていき、9月6日(金)エリック・クラプトンのギターソロがオーバーダブされて、完成バージョンとなる。

 

完成バージョンを聴いてしまうとエリック・クラプトンのギターソロもあるし)、物足りない感じもするが、先入観を捨てて聴くと、アコギ1本の伴奏だけでも十分に素晴らしい。

メロディが美しく、曲そのものが素晴らしいからだろう。

 

仮に、このデモ・バージョンが「ホワイト・アルバム」に収録されていたとしても、名曲としての位置付けは変わらないだろう。

 

B7:Mailman, Bring Me No More Blues

録音日:1969年1月29日(水)

バディ・ホリーのカバーだが、シングルB面だった曲(ちなみにA面は"Words Of Love")。

「ゲット・バック」セッション(アルバム「レット・イット・ビー」セッション)での録音。

この日は、"I Want You"が初めて演奏された他、ジャム・セッションで、"One After 909"、"Not Fade Awy"、"Teddy Boy"、"Besame Mucho"も演奏された。

なお、翌日1月30日(木)はRooftop Concert。

 

デビュー前から演奏していた曲らしく、良い意味で肩の力が抜けており、良い演奏だと思う。

 

「ゲット・バック」に収録されたら、それはそれでアリだったかも知れない。

 

B8:Christmas Time (Is Here Again)

録音日:1967年11月28日(火)

ファン・クラブ限定配布のクリスマス・レコード第5作目に収録された曲。

 

作曲はクレジット上4人の連名となってはいるが、実際には主にポールが作曲したものだろうと思う。

"Wonderful Christmas Time"を彷彿とさせる。

 

 

以上が「セッションズ」収録曲についてだが、ちなみに"Leave My Kitten Alone"のシングル・カットも予定されていたと言う(カップリングは未発表テイクの"Ob-La-Di, Ob-La-Da")。

 

うーむ、ここまで準備しておいてお蔵入りとは、本当に誰が反対したのだろう…

ポールがアルバム「ヤア!ブロード・ストリート:Give My Regards To Broad Street」のリリース時期に近いため反対した、という説もあるようだ。

 

 

さてそれでは肝心の、このレコードの音についてはどうかと言うと、これが海賊盤にも関わらず、悪くない。

70〜80年代にリリースされたコンピレーション盤と比べても、音質など何ら変わりがない。

 

テープの状態が良かったのだろう。

関係者からマスターテープのコピーが流出したのだろうか?

 

 

それにしても、なかなかのコンピレーション盤だと思う。

各時期から選曲されているし、有名な未発表曲も収録されている。

 

デモ録音だったり、リハーサルっぽいものも多いが、それはそれで魅力があるし、何よりも厳選された曲がアルバム1枚にまとまっているのが良い。

 

強いて文句を付けるとすれば「リボルバー」や「サージェント・ペパー」の時期の曲が入っていないことだ。

 

ということで、選ぶとしたら、この2曲か?

 "Tomorrow Never Knows(Mark Ⅰ)"

 "Strawberry Fields Forever(テイク7)"

 

その代わりに外すのは、この2曲かな…

 "How Do You Do It?"

 "Besame Mucho"

 

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などと、あれこれしながら聴いて楽しめるのがビートルズ

 

 

 

第五次ビートルズ・マイブームは続く…

関西圏に住んでいたら、明日にでもB-SELSに行ってるだろうな…