レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

...Nothing Like The Sun / Sting【UK盤、ユーゴスラビア盤】

いきなりクイズですが、以下の曲でサックスのソロを演奏しているのは誰でしょう?

 ①Billy Joel

      Just the Way You Are(素顔のままで)

 ②The Rolling Stones

      Waiting on a Friend(友を待つ)

 ③Steely Dan

      Aja(彩)

 ④James Taylor

      Don't Let Me Be Lonely Tonight(寂しい夜)

 ⑤David Bowie

      Young Americans(ヤング・アメリカンズ)

 

答え

 ①Phil Woodsフィル・ウッズ

 ②Sonny Rollinsソニー・ロリンズ

 ③Wayne Shorterウェイン・ショーター

 ④Michael Breckerマイケル・ブレッカー

 ⑤David Sanbornデヴィッド・サンボーン

 

そう、ジャズ・フュージョン界のサックス奏者による演奏。しかも、超有名・超一流の面々。

 

④⑤はスタジオ・ミュージシャンの顔もあるので、ロック・ポップス系に顔を出すのも不思議ではないが、①②③は純粋ジャズ畑の重鎮で、よく呼んできたな、と。

 

②については「最高のサックス奏者は誰だ?」とMick Jaggerに問われたCharlie Wattsが「Sonny Rollinsだ」とその名を挙げたことからスタジオに呼ばれたという逸話で有名だ。

 

 

で、ロック・ポップス系で、ジャズ・サックス奏者が活躍している曲、と言えば真っ先に挙がるものがある。

 

"Englishman In New York"

 

Sting(スティング)の2ndアルバム収録曲で、シングル・カットもされている。

 

彼が歌う後ろで奏でられるオブリガードや中間部でのソロ。

この印象的なソプラノ・サックスを演奏しているのが、Branford Marsalisブランフォード・マルサリス

 

米国のジャズ・サックス奏者で、父親はピアニストのEllis Marsalis、弟にトランペット奏者のWynton、トロンボーン奏者のDelfeayo、ドラム奏者のJasonと、ジャズ・ミュージシャン一家の長兄。

Art Blakey & The Jazz Messengersへの参加(Wyntonと共に参加)、Miles Davisとの共演、ソロでの活動など、超一流のジャズマンだ。

Stingとは「Dream of the Blue Turtles」(1985年 1stアルバム)や「Bring On the Night」(1986年 ライブ盤)でも共演している。

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」では、その曲が収録されているこのアルバムを採り上げる。

 

 

Sting

...Nothing Like The Sun

UK盤(1987年)

A&M Records

AMA 6402
AMA-6402 A-1*  MT  DB TAPE ONE  1 1 1 1

AMA+6402+B4  DB TAPE ONE  1 1
AMA+6402+C4  DB TAPE ONE  1 1

AMA-6402 D-1*  MT  DB TAPE ONE  1 1


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Side1

  1. The Lazarus Heart

  2. Be Still My Beating Heart

  3. Englishman In New York

Side2

  1. History Will Teach Us Nothing

  2. They Dance Alone (Gueca Solo)

  3. Fragile

Side3

  1. We'll Be Together

  2. Straight To My Heart

  3. Rock Steady

Side4

  1. Sister Moon

  2. Little Wing

  3. The Secret Marriage

 

 

Sting...Nothing Like The Sun」のUK盤

 

1987年と言えば、時代はレコードからCDに移行しつつあり(1986年に販売枚数ベースでCDがレコードを追い抜いている)、このアルバムもCDの方がメジャーだろう。

 

そんな中、CDと並行してレコードでリリースされたのがこの盤。

CD1枚に収録された12曲を、3曲づつ4面に配置している2枚組だ。

 

音については、言ってみれば、ハイレゾハイレゾリューションオーディオ)系の音だ。

 

このアルバムは、録音やマスタリングなども全てデジタル機材にて行われている、いわゆるフル・デジタル・レコーディング。

デジタルの音源をアナログのレコードで聴いている訳だが、音の輪郭に滲みが無い精緻な音である一方、デジタル臭さも無い。

恐らく、このアルバムをSACDスーパーオーディオCDで聴いたとしたら、こんな感じの音なのではないか?と想像したりする。

 

ただ、それに加えて、レコードは空気感や音の説得力がより一層感じられる。

このアルバムは静謐な曲も多いが、このような曲ほど、レコードならでは、が感じられる。

 

やはりレコードは良い、と改めて思う。

 

 

だがしかし…

レコードの各面3曲づつの2枚組というのは、聴くに当たって少々不便な感は否めない。

全12曲なのだから、片面6曲づつの1枚にならないものか、と。

 

が、1〜6曲目 30分29秒、7〜12曲目 24分17秒とバランスが悪い。

しかも、LPで片面30分以上というのは音質的に宜しくない(Direct Metal Mastering:DMMカッティングは長時間の収録が可能とされているが、さすがに30分以上はイマイチ)

 

ならば、1〜5曲目 26分31秒、6〜12曲目 28 分15秒なので、これならどうかと言えば、B面1曲目が"Fragile"、2曲目"We'll Be Together"となってしまい、流れが悪い。

B面1の曲目はシングルカットもされた"We'll Be Together"方が収まりが良い。

 

音質や曲の収まりにこだわったStingが、2枚組にすることを主張したのだろう。

1987年、CDがメジャーになっている中、わざわざレコードでもリリースするのだから、妥協して1枚ものにしたくない、各面3曲づつの2枚組でも良いではないか、と思ったのではないだろうか…

 

 

だが、それにも関わらず、Stingの意向を無視して(?)、1枚ものレコードとしてリリースされた盤がある。

 

 

Sting

...Nothing Like The Sun

ユーゴスラビア盤(1987年)

A&M Records / PGP RTB

SP 6402 / 2420635

2420635 A 151087

2420645 B 151087


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Side1
  1. The Lazarus Heart

  2. Be Still My Beating Heart

  3. Englishman In New York

  4. They Dance Alone (Gueca Solo)

  5. Fragile

  6. The Secret Marriage (#)

Side2

  1. We'll Be Together

  2. History Will Teach Us (#)

  3. Straight To My Heart

  4. Rock Steady

  5. Sister Moon

  6. Little Wing

 

Sting...Nothing Like The Sun」のユーゴスラビア

 

(#)を付けた2曲を配置し直すという荒技(※)により、1〜6曲目 27分34秒、7〜12曲目 27分12秒として、1枚ものでリリースされている。

※ 短い曲の"The Secret Marriage"(2分3秒)をSide1の最後に持ってきて、"History Will Teach Us"(4分58秒)をSide2の2曲目に差し込んでいる。

 

この盤は、Discogsで偶然見つけて「1枚ものあるではないか。でも曲順を入れ替えているし、ユーゴスラビアって音はどうなんだろう??うーむ」と思いつつも、8ユーロと言う安さもあり、他の盤のついでに購入したものだ。

 

ユーゴスラビアと言えば、以前記事にしたシングル盤"All You Need Is Love / Baby, You're A Rich Man"The Beatlesのように、熱意を感じる一方でいい加減な作り、良い音ではない一方でクセになる音(←この記事はこちら、というのが頭にあり、期待して良いのか悪いのか??と思っていたのだが…

 

 

これが当たりだった。

 

海外から届いたレコードは、ジャケットの紙質があまり良くないとか、インナーの写真が白黒になっているなど、作りがやや粗雑であることは否めない。

 

が、内容はと言うと、曲の並びも自然で全く違和感は無く、何よりも肝心の音が普通に良い。

 

ハイレゾ系+空気感+音の説得力、UK盤と比べても全くもって同レベルであり、しかも1枚ものなので、聴くのに大変便利。

 

良いではないか、ユーゴスラビア

 

という訳で、このアルバムを聴くときは、専らユーゴスラビアだ。

 

 

ところで、何故に1枚ものにしたのだろうか?

 

おそらく、ユーゴスラビアにおいては、1987年時点ではCDよりもレコードの方がメジャーだったのだろう。

このため、消費者が手にしやすくなるように、2枚組(原価も売価も高くなる)とせず、1枚ものとして販売したのではないだろうか?

 

 

などと、あれこれ考えながら、レコードを聴くのは面白い。

 

 

ところで、"Englishman In New York"ってタイトルは、George Gershwin"An American in Paris"(パリのアメリカ人)をもじっているんだろうね。

 

あとそう言えば、"We'll Be Together"って、KIRINラガービールのCMで流れていたな。と言うか、CMのために書き下ろされた曲なんだそうで…

 

それと、参加している人達も凄い。

ジャズ・フュージョン界:Branford Marsalis、Gil Evans、Kenny Kirkland、Mark Egan、Hiram Bullock、Mino Cinélu

ロック・ポップス界:Eric Clapton、Mark Knopfler、Andy Summers、Andy Newmark

 

 

久しぶりに、ビートルズ以外の記事でした("All You Need Is Love / Baby, You're A Rich Man"のユーゴスラビア盤に触れていますけど…)。