前回の「レコード評議会」で予告した通り、今回もカット盤を採り上げる。
で、前回がブレッカー・ブラザーズのファースト・アルバムだったので、どうせなら、ということで、これにしようと思う。
The Brecker Brothers Band
Back To Back
US盤(1976年)
Arista
AL 4061
Side1:AL-4061-SA-1-1-111 PRC-1 PRC
Side2:AL-4061-SB-2-1-111 DIK PRC
Side1
A1. Keep It Steady (Brecker Bump) *
A2. If You Wanna Boogie...Forget It *
A3. Lovely Lady *
A4. Night Flight
Side2
B1. Slick Stuff
B2. Dig A Little Deeper *
B3. Grease Piece
B4. What Can A Miracle Do *
B5. I Love Wastin' Time With You *
Randy Brecker:Trumpet
Michael Brecker:Tenor Saxophone
Dave Sanborn:Alto Saxophone
Don Grolnick:Keyboards
Steve Khan:Guitar
Will Lee:Bass, Lead Vocals(*)
Christopher Parker:Drums
Additional musicians
Ralph MacDonald:Percussion
Steve Gadd:Drums(A4,B5)
Patti Austin:Lead Vocals(B5)
etc.
ブレッカー・ブラザーズのセカンド・アルバム「バック・トゥー・バック」。
"The Brecker Brothers Band"としていることから分かるように、バンドを意識している。
ジャケットにバンド・メンバーの写真が掲載されている。The Brecker Bros.のロゴが背中に付いたお揃いのシャツを着ており、よく見ると胸には名前も書いてある。
左から順に、兄・ランディ、弟・マイケル、ウィル・リー、クリス・パーカー、ドン・グロルニック、デビッド・サンボーン、スティーブ・カーン。この7人がバンド・メンバーという訳だ。
ジャケットの写真、おそらくニューヨークの河岸(イースト・リバー?ハドソン・リバー?)で撮影されたものだろう。なかなかのデザインだ。
ゲート・フォールド・カバー(見開きジャケット)で、プロモーションにも気合い入っているのが分かる。
で、収録曲なのだが、A4, B1, B3以外はボーカル入り。全9曲中6曲がボーカル入りなのだ。
ボーカル入りとは言っても、曲の添え物程度のようなものもあるが、何にせよ、インストものよりも一般ウケするだろう(=売れるだろう)と踏んでのことなのだろう。
ボーカル入りは以下の6曲。
"Keep It Steady (Brecker Bump)"
ボーカル入りとは言っても、ほとんどタイトルを唱えるだけのファンク・ナンバー。このアルバムからメンバーとなったスティーブ・カーンのギター・ソロが聴ける。
"If You Wanna Boogie...Forget It"
シングルでもリリースされたアップテンポで忙しい曲。ウィル・リーの気合いの入ったボーカルが面白い。マイケルのファンキーなテナー・ソロも聴ける。
"Lovely Lady"
主役はボーカルよりもランディの甘くメロウなフリューゲルホルン。デビッド・サンボーンのアルト・ソロ(ほとんどオブリガードだけだが)も聴ける。
"Dig A Little Deeper"
ウィル・リーが歌うR&Bナンバー。女性のバッキングコーラスが黒い。
"What Can A Miracle Do"
ウィル・リーがしっとりと歌うAORナンバー。
"I Love Wastin' Time With You"
ウィル・リーとパティ・オースティンのデュエットによるソウル/R&Bナンバー。
インストは以下の3曲。
"Night Flight"
アップテンポのサンバ・リズムで曲が始まる。スティーブ・カーン(ギター)、マイケル(テナー・サックス)、ランディ(トランペット)のソロが展開される。ドラム・ソロはスティーブ・ガッドか?
"Slick Stuff"
シングルB面としてもリリースされている。キメキメのフレーズがアップテンポで展開される。ランディとマイケルの長いソロがフューチャーされている。ウィル・リーのベースもキメキメでカッコ良い。
"Grease Piece"
デビッド・サンボーンがテーマを吹くファンキーな曲。但し、ソロはマイケル。
この記事を書くに際して、改めて聴いてみたのだが、ボーカル入りが多いため、アルバム全体の印象はフュージョンと言うより、ソウル/R&Bといった感じだ。
と言うか、ブレッカー兄弟(特にリーダーの兄)はそもそもソウル/R&Bのアルバムを目指していたのかも知れない。
フュージョンと思うから違和感があるのであって、ソウル/R&Bのアルバムと思えば、これはこれで悪くない。
それでもやっぱりインパクトがあって、カッコいいと感じるのはインストのナンバーだ。
特に"Night Flight"と"Slick Stuff"は、私がベスト盤を編集するなら間違いなく入れる。
あと気が付いたのが、弟・マイケルの活躍が目立っている。ほとんどの曲で彼のテナー・ソロが入っている。
一方で、兄・ランディのソロは意外なことに半分くらいと少ない。デビッド・サンボーンに至ってはほとんどオブリガードのようなソロ1曲のみだ。
マイケルにスポットライトを当てることを目的としていたのか?
それともバンドとしてのアンサンブルを優先した結果、このようなソロの割合になったのか?
おそらく前者だろう。人気のあったマイケルを全面に出して売り出そうという目論見だったのだろう。
どちらにしても、ファースト&セカンド・アルバムに参加していたデビッド・サンボーンは、ここでバンドを脱退することになる…
さて、このアルバムだがジャケットの端に切れ込み(表から見て右端上、裏から見て左端上)が入っているカット盤だ。
で、肝心の音はというと、期待通りの良音だ。
カット盤のファースト・アルバムと同様、キズやスレも無く、ミゾもキレイで、キメキメのフレーズがパキッとした音で鳴る。
何故に音が良いのか? …思うにこういうことなのではないか?
ロックやポップスでの大ヒットアルバムはそうそう廃盤にはならない。廃盤にならないのであれば、レコードはカットアウトされることも無い。一方で、レコードのプレス枚数は多くなるので、音はどうしても新鮮さが失われていく。
一方で、ヒットしなかったアルバムはいずれ廃盤となる。またジャズなどではロックやポップスに比べるとそもそも販売枚数は多く無く、いずれは廃盤となる。で、廃盤として在庫となったレコードはカットアウトされる。つまり盤そのものはキレイなレコードがカット盤として中古市場に流されることになる。そしてレコードのプレス枚数も一定数以下であるため、音の新鮮さが維持されている。
ということで、結論。
カット盤は、盤がキレイで音も良い。少なくともその可能性が高い。
どうでしょう?…違うかな?
(予告)
ということで、次回の「レコード評議会」もカット盤が続きます。