レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Abbey Road / The Beatles【ノルウェー盤】

B-SELS に行ってきた。

近鉄奈良駅のすぐ目の前にあるビートルズ専門のアナログ・レコード専門店。

(HP:B-SELS ビーセルズ

 

東京に住んでいるので簡単には行けず、ご店主による日記を見ては「またこんなスゴイ盤を出品しているのか!いつもスゴイなぁ、目の毒だなぁ」などと思っていたところに関西に出張があったため、それにかこつけて B-SELSに行ってきたという訳。

前回の5月に続き、今回で4回目の訪問だ。

 


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まずはご店主に挨拶。

4ヶ月振りなのに名前まで覚えて下さっていたことに感動し、そして店内を見渡すと、やっぱりスゴイな、B-SELS

 

行ったことのある方ならご存知だろうが、とにかくその品揃えが半端ない。他のレコード店ではなかなかお目にかかれないような貴重盤が当たり前のように店頭に並んでいる。しかもバックヤードには出品前の盤がまだまだありそう…

 

UKオリジナル盤、世界各国のレア盤、初期スタンパー盤…

どうしたらこんなにスゴイ盤が続々と集まるんだろう?

 

以前も書いたが、日本中、いや世界中を見渡してもビートルズの貴重盤がこれだけ並んでいる店は無いだろう。

とにかくビートルズ・ファンにとって B-SELSは正にテーマパーク、ワンダーランド、パラダイスだ。

 


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で、さっそく物色開始。

今回はシングルを買おう、と思いつつ、まずはアルバムから、と端から見ていく。

PPM、WTBからスタートし、え〜こんなのがあるのか〜、いつもながらスゴイな〜、と思いながら見ていくと、お、これは!…とひときわ目に入ってきた盤があった。

 

ということで、今回の「レコード評議会」はこの盤。

 

 

The Beatles

Abbey Road

ノルウェー盤(1969年)

Apple Records

PCS 7088

Side1:YEX 749-2

Side2:YEX 750-1


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Side1

  1. Come Together
  2. Something
  3. Maxwell's Silver Hammer
  4. Oh! Darling
  5. Octopus's Garden
  6. I Want You (She's So Heavy)
Side2
  1. Here Comes The Sun
  2. Because
  3. You Never Give Me Your Money
  4. Sun King
  5. Mean Mr. Mustard
  6. Polythene Pam
  7. She Came In Through The Bathroom Window
  8. Golden Slumbers
  9. Carry That Weight
  10. The End
  11. Her Majesty

 

アビイ・ロード」のノルウェー

UKマザー初回マト2/1だ。

 

ご店主が書かれたポップを見ると「スゴイ音」とある。

B-SELSが「スゴイ音」と評した音… スゴイのか… これは聴きたい。

 

私「このアビイ・ロードノルウェー盤、試聴よろしいですか?」

ご店主「どうぞ是非聴いてください」

 

ご店主がA面に針を下ろす。

 

Come Together

ジョンの声が近い。すぐそこにジョンがいる。タムを回すリンゴが見える。ハンドクラップの手も見える。ベースやギターの輪郭も明瞭で、素晴らしい音で鳴る。エレピがこんなにもジャジーな響きだったとは…

 

Something

ジョージの繊細なギター、ボーカルが美しい。ポールのベースが歌っている。ストリングスが真っすぐに空気を伝わってくるのが分かる。

 

Maxwell's Silver Hammer

ポールのベースが明瞭に聴こえる。こんなことをしていたのか、と驚く。マル・エバンスのハンマーが見える。今まで意識していなかったシンセサイザーの震えるような音が聴こえる。

 

Oh! Darling

ポールの喉を振り絞って歌う顔が見える。バッキングコーラスの素晴らしい響きに気付く。でもやっぱりこの曲はポールの独壇場。

 

Octopus's Garden

とぼけた感じで歌うリンゴの姿が見える。水中でブクブクいうサウンドがリアル。

 

I Want You (She's So Heavy)

終盤の繰り返されるリフとホワイトノイズ、そして突然のカットアウト… 鬼気迫る空間に背筋が凍る。

 

ご店主が黙って、B面に返す。

 

Here Comes The Sun
一転して陽光が差し込むようなアコースティック・ギターに心が安らぐ。シンセサイザーの厚みのある響きが素晴らしく良い。ハンドクラップの手が見える。

 

Because

ジョン、ポール、ジョージによるコーラスが美しい。三声を3回重ねたコーラスは厚みがありつつ、素晴らしく澄んでいる。

 

You Never Give Me Your Money

THE LONG ONE(HUGE MEDLEY)と呼ばれる珠玉のメドレーの始まり。ポールの声が近い。すぐそこにポールがいる。リンゴのドラムが地味に素晴らしい。

 

Sun King

Mean Mr. Mustard

この2曲は編集で繋いだのではなく、実際に続けて演奏されている。"Sun King"、厚みのあるコーラスが美しく響く。スズムシの声が雰囲気ある。"Mean Mr. Mustard"、あまり気にしていなかったシンセサイザーだが、こんなにも厚みのあるサウンドだったのか。

 

Polythene Pam

She Came In Through The Bathroom Window

この2曲も続けて演奏されている。"Polythene Pam"のジョージのギター・ソロ、ジョンの掛け声"Oh, look out!" から "She Came In Through The Bathroom Window"とポールのボーカルが入ってくるところに鳥肌が立つ。ベースがこんなにも活躍していたのか、と驚く。バッキングコーラスの空気感も素晴らしい。

 

Golden Slumbers

Carry That Weight

この2曲も続けて演奏されている。ポールの繊細なボーカル”I will sing a lullaby"からリンゴを中心とした分厚いコーラス"Boy, you're gonna carry that weight"へバトンタッチするところが何とも感動的。

 

The End

雪崩れ込むように始まる"The End"。リンゴのドラム・ソロ、ポール、ジョージ、ジョンによるギター・バトル。4人が演奏する姿が見える。背筋に電流が流れる。

 

Her Majesty

この曲の前、しばしの静寂を聴くための曲。

この曲はもともと"Mean Mr. Mustard"と"Polythene Pam"の間に置かれていた、というのは有名な話。

 

全曲試聴させていただいたが、ほとんど無言で聴き入っていた(ご店主も無言)

 

新鮮で明瞭な音、リアルな音像。

演奏している姿、その動き、歌う顔、音の中にそれらが見える。

…これはスゴイ音だ。

 

私「…良い音ですね。いやぁ、これは良い音です。北欧でプレス枚数も少ないでしょうから、それがこの新鮮な音なんでしょうかね」

ご店主「確かにプレス枚数は少ないですね。音が良いUK盤と比べても、かなり良い音だと思います」

私「音に雑味が無いというか、各楽器の間の空間がスッとしているというか。いやはや、スゴイです。ベースもこんなことしていたのか、って感じです」

ご店主「音の輪郭がくっきりしているので、ベースもよく聴こえますね」

私「これは買います!」

 

ということで、「アビイ・ロードUKマザーマト2/1であるノルウェーの購入を決めた。

本当にスゴイ音だ。

 

そして、こんなレコードを普通に置いてあるB-SELS、本当にスゴイお店だ。

 

 

と、ここで終わらないのが、B-SELS

 

アビイ・ロード」のノルウェーが棚にもう1枚並んでいる。

UKマザーマト2/2。B面がマト2

 

聴いてみたい。

 

私「すみません。このB面マト2ってどんな音ですか?」

ご店主「是非聴いてみてください」

私「いいんですか?じゃあ、B面1曲目だけお願いします」

 

ご店主がB面に針を下ろす。

 

…あぁ、違う。B面マト1とは明らかに違う。

こちらのB面マト2の方が、何となくかっちりした音がする。

 

で、無言のまま(ご店主も無言)、B面を通しで聴いてしまった。

 

私「結局全部聴かせてもらってしまいました。このB面マト2、マト1とは違いますね。音がキレイでありつつ、かっちりしている感じがします」

ご店主「そのため、ベースなど低音がよりズーンと響く感じですね」

私「ほんとですね。このB面マト2も良い音ですね… 魅かれるなぁ」

ご店主「B面マト2はUK盤では殆ど無いんですよ。ノルウェー盤はB面マト1も2も区別されずに、どちらも1969年に発売と言われています。ですが、B面マト2は1970年になってからのカッティングだと私は思っています」

私「へぇ、なるほどですね。そうかぁ、B面マト2はレアですね」

 

うーむ、どちらにしようか?それとも2枚とも行くか?いやいや、今日はもともとシングル狙いだったのだ… どうしよう?

 

私「うーん、B面マト1の方が、普段聴き慣れた音がバージョン・アップした感じで感動したので、マト1の方を買います」

 

ということで、散々迷った挙句、マト2/2に心を残しつつ、マト2/1を選んだ。

 

それにしても、マト2/2スゴイ音だった。

B面全部試聴させていただき、ご店主ありがとうございました。

 

 

ということで、シングル盤コーナーに向かう。

そして選んだのは…

"Come Together / Something"のニュージーランド、その他3枚。

 

 

さて、今回はここまで。

続きは次回の「レコード評議会」で…

 

 

(追記)

B-SELS、今回も2時間半以上(長編映画1本分)居座ってしまった。

スピーカー大音量で試聴できるのはありがたく、ご店主とのお話もまた楽しい時間だ(勉強にもなります)。

その時お店におられたお客さんと「こんなお店、他に無いですよね」とお話しましたが、ほんとそう。

 

以前にも書いたが、お店で楽しい時間を過ごして(コト消費)、素晴らしいレコードを買う(モノ消費)。そして家に帰ってそのレコードを楽しむと同時に、お店での楽しかった時間も思い出すことができる。

そういう意味でもB-SELSで買ったレコードは付加価値が高いと思う。

ホント、スゴイお店だなぁ。