レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Gone Troppo / George Harrison【US盤】

B-SELSで買ったレコード」シリーズは前回で一旦終了。

 

さて、次は何を取り上げようか?と考えたが、ビートルズの残像が残っているので、うーむ…となった。

またビートルズというのも何だし、かと言って全然関係ないものにするのも何だし…

 

といった状況だったのだが、こんなレコードを見つけた。

 

ということで、今回の「レコード評議会」はこの盤にしようと思う。

 

 

George Harrison

Gone Troppo

US盤(Winchester Pressing)(1982年)

Dark Horse Records

1-23734

Side1:1-23734-RE2-A WW1

Side2:1-23734-RE2-B WW1 ─◁


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Side1 
 1. Wake Up My Love

 2. That's The Way It Goes

 3. I Really Love You

 4. Greece

 5. Gone Troppo

Side2 
 1. Mystical One

 2. Unknown Delight

 3. Baby Don't Run Away

 4. Dream Away

 5. Circles

 

ジョージ・ハリスンの「ゴーン・トロッポ」。

 

 

以前5月にB-SELSへ行った際、ご店主とこんな会話をしたのを思い出した。

 

私「ジョージのアルバムでおすすめって、何ですか?」

ご店主「ジョージですか… そうですねぇ、ゴーン・トロッポは良いですよ」

私「そのアルバムは聴いたことないです」

ご店主「セールス的にはあまり売れなかったアルバムなのですが、明るい雰囲気で、曲が良いです。ジョージのスライド・ギターも良い感じです」

 

そうなんだ…と思い、後から調べてみると、

・タイトルの Gone Troppo とは、オーストラリアのスラングで「(熱帯の暑さで)おかしくなる、変になる」という意味

マリンバの利用もあって、南国的で明るいポップなサウンドになっている

シンセサイザーを多用している(時代へ迎合するアプローチとの意見も)

・音楽業界に嫌気が差していたジョージはアルバムのプロモーションを全く行わず(シングルのミュージック・ビデオ制作も拒否)、所属レコード会社のワーナー・ブラザースも力を入れなかったため、セールス的には失敗だったアメリカではビルボード・チャートで最高108位止まり、イギリスや日本ではチャートにすら入らず)

・アルバム発売当時、共同プロデューサーのフィル・マクドナルドは「ジョージの音楽を理解できるのはファンだけだと思う。彼は自分の好きなようにやっているだけなのだから」というコメントを残している

とのこと。

 

ふーむ、何だか微妙なアルバムなのかな?

でも、他でも無いB-SELSのご店主がおすすめするアルバムなのだから、間違いは無いはず…

 

それ以来、気になるアルバムとして、中古レコ屋へ行く度にチェックを入れていた。

 

そんな折、個人営業の中古レコ屋(ジャズが主流のお店)で、US盤を見つけた。しかも、カット盤ながらシュリンク開封

 

f:id:Custerdome:20231003202601j:image   右下に切れ込みがあるのが分かりますでしょうか ↑

 

カット盤シュリンク開封って、売れなかったアルバムの典型的なパターンではないのか?

 

誰にも聴かれること無く、店先に置かれたままで良いのか?

 

…これは、救い出さねばなるまい。

ということで、速攻で購入した。

 

で、シュリンクを開け、レコード盤をクリーニングして(←新品もクリーニングは必須)、聴いてみた。

 

 

Side1

1. Wake Up My Love

最初から思いっきりシンセが入っている、もろに80年代サウンドのポップな曲。

一瞬「え?ジョージどうした?」と思ったが、彼らしいメロディとスライド・ギターで、素直に聴くと結構良い曲だ。

シングル・カットされている(邦題は"愛に気づいて”、B面は"Greece")

 

2. That's The Way It Goes

繊細なボーカルとスライド・ギターのオブリガードが素晴らしい。

メロディもジョージらしさに溢れていて、これはとても良い曲だ。彼の曲の中でも、上位にあるのではないか?名曲と言っても良いだろう。

 

3. I Really Love You

ボーカル・グループ The Stereos による1961年のドゥ・ワップ・ナンバーのカバー。

アメリカではシングル・カットされている(B面は"Circles")

 

4. Greece

途中でボーカルが少し入るが、基本的にインスト・ナンバー。

普通に歌詞を付けて歌モノにしなかったのは何故?

ビリー・プレストンがキーボードで参加。

 

5. Gone Troppo

ジャケットのイメージそのままに南国っぽい雰囲気の曲。

メロディも、マリンバやパーカッションなどの音使いもカリブっぽい?

 

 

Side2

1. Mystical One

正にジョージの曲。ビートルズ時代に演奏していても違和感が無い。

スライド・ギターも気持ち良い。

エリック・クラプトンに捧げた曲なのだそう。

 

2. Unknown Delight

これもジョージらしさに溢れた曲。

スライド・ギターによるソロ部分で、ほんの一瞬だけ"Something"でのソロのメロディが聴こえる。

ニール・ラーセンがピアノ、ウィリー・ウィークスがベース、ジム・ケルトナーがドラムで参加。

 

3. Baby Don't Run Away

肩の力を抜いたゆったりとした曲。

ジム・ケルトナーがドラム、ビリー・プレストンがバッキング・ボーカルで参加。

 

4. Dream Away

映画「バンデットQテリー・ギリアム監督)の主題歌。

日本ではシングル・カットされている(邦題"オ・ラ・イ・ナ・エ"、B面は"Unknown Delight")

"My Sweet Load"を思い起こすのは、私だけ?

ビリー・プレストンがバッキング・ボーカルで参加。

 

5. Circles

1968年、マハリシのもとで修業をしていた時期に書かれたという「転生」をテーマにした曲。

アルバム中、この1曲だけやや内省的な感じ。

ビリー・プレストンがオルガンとピアノ、ジョン・ロードDeep Purpleジョン・ロード!)がシンセで参加。

 

 

最初は、1曲目での思いっきり入っているシンセと80年代サウンドに「え?どうした?」と正直驚いたが、聴き進めていくと、明るい雰囲気かつジョージらしさに溢れた良い曲が多い。

 

中でも、ジョージらしさが特に感じられる以下の曲がとても素晴らしいと思う。

 

"That's The Way It Goes"

"Unknown Delight"

"Mystical One"

"Dream Away"

"Wake Up My Love"

(↑個人的におすすめの順)

 

 

アルバム全体としても、ジャケット・デザインからの印象もあるのだろうが、リラックスして聴ける、なごむ、明るい気持ちになれる、といった感じ。

ありきたりな表現だが、ハートウォーミングな作品であり、良いアルバムだなぁ、と。

 

B-SELSのご店主がおすすめするアルバムだけあって、やはり間違い無かった!

 

普通にプロモーションをしていれば、セールス的にも成功し、評価も高かっただろうに…

まあ、「業界に嫌気が差したし、何もプロモーションはしないよ」っていうのは、ジョージらしい気もするけど…

 

 

それにしても、シュリンク開封、つまり1982年からずっと封印されていたレコードを41年後に聴くというのは、タイムカプセルを開けるようで、何だか感無量…