前回の記事はXTCの「スカイラーキング」だった訳だが、そのアルバムからシングルカットされたものを採り上げよう。
ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。
Grass
UK盤(1986年)
Virgin
VS 882 12
SideA:VS 88212 A-2U-1-1- CUT WITH A MOWER AT THE TOWNHOUSE
SideB:VS 88212 B-1U-1-1 NO COMMENT
1 1 NO COMMENT
A1. Grass
B1. Extrovert
B2. Dear God
"Grass"の12インチシングル。
「スカイラーキング」のリリース日が1986年10月27日なのに対して、シングルはアルバムに先行して8月16日にリリースされている。
いわゆる先行シングル(リードシングル)と呼ばれるものだ。
7インチシングルは"Grass"と"Dear God"のカップリングだが、この12インチシングルは"Extrovert"が追加収録されている。
前回同様、勝手な印象を含めて、各曲を紹介しよう。
A:アンディ・パートリッジ作曲
C:コリン・モールディング作曲
⭐️の数:個人的に好きな度合い(最高で⭐️5つ)
A1. Grass (C) ⭐️⭐️
XTCの出身地スウィンドンにある公園、コート・ウォーターについて歌ったもの。
何となく東洋風メロディのノスタルジックな曲。
ほんわかした感じでアルバムに収録する分には良いとしても、シングル向きには思えない。
何故先行シングルとして選ばれたのだろう?
アルバムのバージョンと同じだが、45回転の効果から音の密度が濃く、さすがに音が良い。
B1. Extrovert (A) ⭐️⭐️⭐️⭐️
アルバム未収録曲。
社交的な人、外交的性格の人、陽キャ(陽気キャラ)という意味のタイトル。
ひねくれポップ感があって、当たり曲。シングルB面に置くのがもったいない。
ネット記事では「最強のB面曲」と評する方もいるほどに一部XTCファンには人気のある曲。
但し「スカイラーキング」に収録していたら、曲調が浮いていたかも知れない。
B2. Dear God (A) ⭐️⭐️
曰く付きの曲。
飢えや争いが絶えない人の世を嘆き、そんな人間を作った神に対して「Dear God, I can’t believe in you(親愛なる神よ、あなたのことを信じられない)」との手紙が歌詞になっている。
過激な歌詞への反響は大きく、アメリカではフロリダのラジオ局が爆弾脅迫を受けたり、イギリスではこのシングルの取り扱いを拒否する店が出たりした。またアンディ・パートリッジには大量の抗議の手紙が届いたりしたという。
その様な経緯から、当初プロデューサーのトッド・ラングレンはこの曲をアルバムに収録する予定だったが、最終的にVirginとXTC(アンディ)の意向で見送られた。
一方で、シングルB面ながらアメリカの大学ラジオで評判になり、Geffin(アメリカにおける販売元)に問合せが殺到。このためアメリカでは"Mermaid Smiled"を外して "Dear God"を収録した2ndバージョン盤がリリースされた。
トッドのアイデアで、曲の冒頭と最後は8歳の女の子(彼の友人の娘)が歌っている。
以上3曲が収録された12インチシングルなのだが、個人的には"Grass"でも無く、"Dear God"でも無く、一番影が薄い"Extrovert"が好きだ。
「スカイラーキング」ではひねくれ感や毒っ気がマイルドになってしまっているが、"Extrovert"にはXTC(アンディ・パートリッジ)ならではのひねくれポップ感がある。
やっぱりXTCにはひねくれポップバンドでいて欲しいな、と。
ということで、次回の「レコード評議会」もXTCです。