3回続けてきたレッド・ツェッペリンだが、もう1枚持っている。
と言うか、つい最近メルカリに格安で出品されていたので買った。
ということで、今回の「レコード評議会」はこれ。
Led Zeppelin II
日本盤(1969年)
Atlantic / 日本グラモフォン
MT 1091
SideA:〄MT-1091A Ⓗ A-1-7 CBO
SideB:MT-1091B Ⓗ A-1-3
SideA
1. Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)
2. What Is And What Should Never Be(強き二人の愛)
3. The Lemon Song
4. Thank You
SideB
1. Heartbreaker
2. Living Loving Maid (She's Just A Woman)
3. Ramble On
4. Moby Dick
5. Bring It On Home
レッド・ツェッペリンの2枚目アルバム「レッド・ツェッペリンⅡ」の日本盤。
中学生の頃から音楽を聴き始め、学生時代はクラシックとロックとを並行して聴き散らかしていたのだが、このアルバムを初めて聴いたのもこの頃。
レッド・ツェッペリンの中でも最初に聴いたアルバムだった。
ビートルズ、ザ・フー、ストーンズの様に最初からスッと入ってきた訳ではなく、クリムゾン(宮殿)の様に衝撃を受けたと言うのとも違った。
リフがカッコ良い、ボーカルが凄い、とは思ったものの、あまりピンと来なかったと言うのが正直なところで、他のアルバムを聴いてもその印象は変わらなかった。
同じハードロック系なら、ディープ・パープルやレインボーの方が良かった。ジミー・ペイジよりリッチー・ブラックモアの方が好きだった。
だが、その後色々な音楽を聴いて何年も経った後、改めてレッド・ツェッペリンを聴いたところ、あれ、こんなに良かったっけ?と。
今から思うに、最初の頃はブルースやブリティッシュ・フォークの良さが分からずに、ピンと来なかったのだろう。だが、色々な音楽を聴いてからは耳が慣れて受け入れられる様になったのだと思う。
そんな訳でちゃんと聴ける様になったレッド・ツェッペリンなのだが、「Ⅱ」は最初に聴いたアルバムということで思い入れがある。
各曲を簡単に記載しておくと…
A1. Whole Lotta Love(胸いっぱいの愛を)
ギターのパワーコードによる刻みとも言う様なシンプルなリフに乗って、ロバート・プラントが唸る様に歌う。彼のボーカル無しに成り立たない曲。飛び出して来る様なギターソロもカッコ良い。
A2. What Is And What Should Never Be(強き二人の愛)
静と動が交差する良く出来た構成の曲。ロバート・プラントのボーカルが素晴らしい。
A3. The Lemon Song
中間と最後のインスト部分の疾走感が凄い。ハウリン・ウルフの"Killing Floor"が元ネタ。
A4. Thank You
ハモンドオルガンとクリアトーンのギターをバックにロバート・プラントが歌うバラード。曲自体が素晴らしく名曲。後にデュラン・デュランがカバーしている。
B1. Heartbreaker
リフ一発と言った感じのハードロック。アルバム中、A1と並ぶヘビーなナンバー。
B2. Living Loving Maid (She's Just A Woman)
リフがカッコ良いロックンロール。一番分かりやすい曲。
B3. Ramble On
ブリティッシュ・フォークとハードロックからなる、変わった構成の曲。「Ⅲ」や「Ⅳ」に収録されていても似合う。
B4. Moby Dick
ジョン・ボーナムのドラムソロ(素手で演奏)をフィーチュアしたインスト・ナンバー。
B5. Bring It On Home
もろブルース。中間部分はハードロック。ブルースハープが味わい深い。
一般的にレッド・ツェッペリンの最高傑作は「Ⅳ」と言われている。
ChatGPTに聞いてみてもこのような回答だった。
『多くのファンによれば、レッド・ツェッペリンの最高傑作は「Led Zeppelin IV」とされています。』
しかし、以前記事(こちら)にも書いた通り、最高傑作と言われるものの一つ二つ前の作品には昇り詰める一歩手前ゆえの熱量、躍動感、実験精神が溢れていることがある。
または、完璧なものを生み出すためには、良いものを伸ばす一方、余分なものを削ぎ落とす必要がある訳だが、余分なものが混じっているからこそ良い、ということもある。
完璧なものに少し及ばないからこそ素晴らしい、乙なもの(甲では無いが素晴らしいもの)、と言った感覚なのだろうか。
例を挙げると以下の通り(カッコ内は一般的に最高傑作と言われるもの)。
Revolver(Sgt. Pepper's Lonely Hearts Club Band)
Beggars Banquet(Exile on Main St. / Sticky Fingers)
Queen II(A Night At The Opera)
The Royal Scam(Aja)
レッド・ツェッペリンの「Ⅱ」にもこれが当てはまる。
荒々しいまでの勢い、爆発する様なエネルギーは彼らのアルバムの中でも一番だ。
さてこの日本盤なのだが、日本グラモフォンによる初盤(独自カッティング)で、これを買ったのには以下の様な経緯がある。
元々US盤を持っていた。RLカット盤では無く、2ndプレス盤だ。
RLカット盤はマスタリング・エンジニアの巨匠と言われるBob Ludwigがカッティングしたもので、いわゆるラウドカット盤。一番音が良いとされる盤で、ジミー・ペイジも気に入っていたと言われている。但し、当時普及していたレコード・プレイヤーでは音飛びが頻発したと言う。そこでカッティングし直したのが2ndプレス盤という訳だ。
この2ndプレス盤、音飛びを恐れてなのか、少し音が大人しい。もっとガツンと行って欲しいのだが、物足りないのだ。しかも手元の盤はA面の音が右に寄っている感じがして(エラー盤?)、どうにも楽しめない。そこでレコード棚を整理する際にこれを売って、いつかRLカット盤を手に入れようと思った訳だ。しかし、如何せんRLカット盤はなかなか市場に出てこない。また出てきてもかなりの高額だ。
そんな折にとある中古レコ屋に入ったところ、そこのオーナーが「レッド・ツェッペリンⅡの日本初盤である日本グラモフォン盤は音を大きくカッティングしていて、かなりの迫力で鳴るよ」と聴かせてくれた。確かにUS2ndプレス盤に比べてもガツンとした音がする。「これは良いじゃないか」と思い「これっていくらですか?」と聞いてみると、「気に入っている盤なので売り物では無いよ」と言う。そうなんだ… 自慢話だったのか…
ということで、レコ屋に行く度に日本グラモフォン盤をチェックしてきたのだが、これがまた売っていない。なかなか無いものだなと思いつつ、とある時、もしかしてと思い、メルカリで検索してみたら出品されていた、という訳。
早速買って届いた日本グラモフォン盤を聴いてみると、確かにカッティングレベルが高い。あの中古レコ屋で自慢された音と同じ、ガツンとした音がする。
細かい音や響きはUS盤(Atlanticなのでアメリカのテープのジェネレーションが一番若いのだと思われる)の方が良いのかも知れないが、少なくともUS2ndプレス盤よりは日本グラモフォン盤の方がガツンとする音で聴いていて満足度は高い。
鋭い切れ味のギター、確りとした鳴りのベース、力強いアタックのドラム、空間を切り裂く様なボーカル… なかなか良いではないか。
と言うか、荒々しいまでの勢い、爆発する様なエネルギーが肝であるこのアルバムの音として、十分に満足のいく日本グラモフォン盤なのであった。
ということで、4回にわたって採り上げてきたレッド・ツェッペリンだが、「Ⅱ」と「聖なる館」は日本盤が大健闘。
世間では(日本では)US盤やUK盤の音が良いとされ、日本盤は格下(?)とされている風潮があるが(値段も安い)、「良いものもある」んだな、と思った次第。
やっぱりレコードは面白い。
(おまけ)
ジャケットのデザインだが、第一次世界大戦中のドイツ帝国陸軍航空隊、マンフレート・フォン・リヒトホーフェン率いる第11戦闘機中隊の隊員の写真にメンバーの顔を合成したものだ(メンバー以外にも、マネージャーのピーター・グラント、ロードマネージャーのリチャード・コール、女優のデルフィーヌ・セリッグの顔も含まれている)。
その色合いから"Brown Bomber"と呼ばれている。
元の写真はこちら
飛行機に搭乗しているのがマンフレート・フォン・リヒトホーフェン
なお、マンフレート・フォン・リヒトホーフェンはドイツの軍人で、第一次世界大戦参加各国で最高の撃墜機記録(80機、他未公認2)を保持するエース・パイロット。乗機を赤く塗装していたことからレッド・バロン(赤い男爵)やディアブル・ルージュ(赤い悪魔)などの異名で呼ばれた(※)。
※ ドイツでは Der rote Kampfflieger (赤い戦闘機乗り)、敵国のフランスでは Le petit rouge (小さな赤)、Diable Rouge (赤い悪魔)、イギリスでは Red Knight (赤い騎士)、 Red Baron (赤い男爵)と呼ばれた。
赤い彗星のシャア(機動戦士ガンダム)のモデルとなった人である。