今回の「レコード評議会」もレッド・ツェッペリン。
「Ⅳ」「フィジカル・グラフィティ」の間に挟まれたこのアルバムだ。
Houses Of The Holy
日本盤(1976年再発盤)
Atlantic
P-10107A (P-8288A1)
Side1:P-8288A1 5-X 2-B-=8 ( 1 ) 2 3 〄
Side2:P-8288A2 2-A-15 ( 1 ) 2 3 〄
Side1
1. The Song Remains The Same(永遠の詩)
2. The Rain Song
3. Over The Hills And Far Away(丘のむこうに)
4. The Crunge
Side2
1. Dancing Days
2. D'yer Mak'er
3. No Quarter
4. The Ocean
レッド・ツェッペリンの5枚目アルバム「聖なる館」。
まずジャケットだが、イギリスのデザイン・アート・グループ、ヒプノシスが手掛けたもので、北アイルランドのジャイアンツ・コーズウェー(Giant's Causeway、巨人の石道)で撮影された写真に色付けをしたものなのだという。
ジャイアンツ・コーズウェー(1986年に世界遺産に登録されている)
アメリカ検閲局から裸の子供達について指摘を受けたため、US盤などでは帯が付けられている。
ジャケットそのものにはバンド名もアルバム・タイトルも書かれていない。
幻想的で、なかなかに秀逸なジャケット・デザインだ。
で、収録曲だが、前作「Ⅳ」と比べると、よく分からないと言うか、中途半端な印象の曲も多い(変拍子ファンクの"The Crunge"、変なギター・リフの"Dancing Days"、レゲエ風の"D'yer Mak'er")。
その一方で、名曲名演と言えるものも収録している。
The Song Remains The Same
疾走感溢れるロック・チューン。12弦ギターのブライトな響きとよく動くベースが素晴らしくカッコ良い。この手のロック・チューンとしては傑出していると思う。
The Rain Song
アコースティックな響きから始まるバラード。曲が進むにつれてメロトロン、ベース、ドラムが重なって行き、大きな盛り上がりを見せる。優しいメロディで、曲そのものとして名曲だと思う。
No Quarter
キーボードの揺らぐような響きが神秘的な雰囲気の曲。中間部分のピアノとギターのソロがジャズのフレーズで、これが何とも素晴らしく、名演だと思う。
さてこのアルバムは1973年のリリースで、日本盤も初盤(P-8288A1)は同じく1973年だが、この盤(P-10107A)はレコード番号から1976年の再発盤。
日本盤は独自カッティングなのだが、マトを見ると初盤と同じであり、リプレス盤と分かる。つまり初盤と同じカッティングであり、基本的に音は同じということだ。
「聖なる館」の日本盤はネットの情報によると音が大きいらしい(カッティング・レベルが高い)。しかも音が良いらしい。各国盤の中でも日本盤が一番良いのだと言う。
本当に??と思いつつ、聴いてみると、確かに音がデカい。本当にデカい。通常のアンプの音量目盛りでは大きすぎて、思わず目盛りを絞ったほどだ。一般的な音量の1.5倍と言うのは大袈裟としても、1.2倍以上はあるだろう。音圧が高く、エネルギーに溢れている。音の抜けも良い。
しかも音の響きが素晴らしい。高音域はブライトな響きで、かつ中低音域もしっかりと出ている。ボーカルもぐっと前に出ているし、ベースの輪郭も確りとしていてブンブン鳴っている。
これは確かに良い音だ。
各国盤の中でも日本盤が一番良い、という評価も頷ける。
だが、このアルバムはUS盤やUK盤を含め多くの国でデッドワックスには"STERLING"と"RL"の刻印がある。
これはSterling Soundというマスタリング・スタジオでマスタリング・エンジニアの巨匠Bob Ludwigにより手掛けられたものを意味しており、多くの国で共通のマザーが使われていたということだ。
レコードの音が国によって変わることの無いように、このような対応が取られている訳だ。
ならば、"STERLING"と"RL"の刻印があるものがやっぱり一番良い音なのでは?
レーベルのAtlanticはアメリカの会社なのでUSマザーと呼んで差し支え無いと思うが、そのUSマザーということで、ちょっとひねりを入れて手に入れたのがこの盤。
Houses Of The Holy
イスラエル盤(1973年)
Atlantic
K 50014
Side1:ST-A-732783-B AT STERLING RL PR ○
Side2:ST-A-732784-B ○ AT STERLING RL PR
"STERLING"と"RL"の刻印があるUSマザーのイスラエル盤。
ビニールの材質の差からベースがデカいと言われるイスラエル盤を聴いてみたい、と思った訳だ。
(ベースがデカいと言われるイスラエル盤の例)
Abbey Road / The Beatles【イスラエル盤】
The Royal Scam / Steely Dan【US盤、UK盤、イスラエル盤】
まずジャケットだが、左上にバンド名とアルバム・タイトルが書かれている。
US盤やUK盤のように何も書かれていないと誰のアルバムか分からない、ということでイスラエルではこのような処理がされたということなのだろう。
そして、ダブル・ジャケットでは無く、シングル・ジャケット。
ジャケットの内側が無いため、ヒプノシスのアート・ワークの半分が見られないことになるのだが、コスト面からシングル・ジャケットで十分とされてしまったのだろう。
で、肝心の音なのだが、さすが"STERLING"と"RL"の刻印があるだけのことはある。迫力のある音だ。
だが、日本盤の方が音がデカい。1.2倍くらいデカい。
音圧や迫力も日本盤の方が凄い。
決してイスラエル盤(USマザー)が悪いのでは無い。単独で聴いたら迫力のある良い音なのだが、日本盤の音作りがその上を行っているのだ。
よくよく聴いてみると、微妙にUSマザーの方が細かい音が聴こえると言うか、テープのジェネレーションの違いを感じなくも無いが、気の所為レベル。
やっぱり日本盤の方が音のエネルギー、迫力、圧力、響き、抜けの良さ… どれを取っても上に感じる。
マスタリング・エンジニアの巨匠Bob Ludwigに日本のエンジニアが勝ったということか…
うーむ、そんなことがあるのか… と。
(私の耳がそう感じるだけで、あくまでも個人的意見です…)
そして、こんなことを思った。
日本盤の初盤はスタンパーが若いだろうから、もっと良い音がするのだろうか?
US盤やUK盤であればビニールの材質が違うだろうから、もっと良い音がするのだろうか?
こんなことをしていたらキリがないのでやめておくが、やっぱりレコードは色々あって面白いな、と。