レコード評議会

お気に入りのレコードについてのあれこれ

Won't Get Fooled Again / The Who【UK盤】

以前に"Won't Get Fooled Again無法の世界"のUS盤を採り上げた。

 

 

その際、US盤は微妙にエコーが掛かっているが、UK盤はエコーが掛かっていないのではないか?と書いた。

 

ところで、UKシングル盤ならばどうなのだろう?

もしかすると、エコーが掛かっていないのではないだろうか?

 

いつか確かめてみよう。

こうして、レコードの「沼」にハマって行く…

 

そこでDiscogsで探してみたところ、ピクチャースリーヴが無いためかなり安価なUK盤を発見。

…買った。

 

 

ということで、今回の「レコード評議会」は、ザ・フーシングル盤シリーズ最終回、締めの一枚です。

 

 

The Who

Won't Get Fooled Again

UK盤(1971年)

Track Record

2094-009

SideA:2094009 A//4  1 3

SideB:2094009 B▽3  12


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A. Won't Get Fooled Again

B. Don't Know Myself 

 

 

本来UK盤にはこの様なピクチャースリーヴが付いている。

この時代、英国でピクチャースリーヴが付くのは珍しい。

 

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さて音は?という前に、"Won't Get Fooled Again"の「ライフハウス」における位置付けを記しておこう。

 

ライフハウス」のストーリーは、簡単に説明すると以下の通り。

 

気候変動や環境汚染から人々は"ライフ・スーツ"なるものを装着させられ、"グリッド"と呼ばれるシステムに接続されている。 そして睡眠、食事、娯楽に至るまで、生活の全てが"グリッド"により供給されている。

 

その世界では音楽は邪悪なものとして禁止されている。 その中、主人公ボビー・バードは“ライフハウス"と名付けたロック・コンサートを秘密裏に開催している。

 

ボビーがハッキングした"グリッド"を通して呼び掛けたことで "ライフハウス"に多くの人が集まる。 そして音楽の力が人々を抑圧された生活から解放する。

 

この"ライフハウス"コンサートにおいて演奏される一曲が"Won't Get Fooled Again"で、このような内容だ。

 

政治や体制が変わったとしても、スローガンが変わったとしても、左寄りが右寄りになったとしても、どれもほとんど同じようなものさ。二度と騙されるのは御免だ(We don't get fooled again)

 

新しい指導者って言っても、前と同じさ(Meet the new boss Same as the old boss)

 

つまり『システムに管理された社会からの解放、それを可能たらしめる音楽の力』という「ライフハウス」のテーマの中で 『新しい体制や指導者に騙されるな、期待するな(=人に頼るな、自らやるんだ)』と歌われる、非常に重要な位置付けにある曲が"Won't Get Fooled Again"という訳だ。

 

 

さてそれでは音は?

 

まず、US盤UK盤マトリックス・ナンバーが明らかに別のものであり、カッティングが違っている。

 

アルバム「フーズ・ネクス」はUS盤UK盤ダグ・サックスによるマスタリングに基づき米国でカッティングされたものだが (※)、シングル盤は米国と英国それぞれでカッティングされたようだ。

 

※ 「フーズ・ネクス」についてはこちらの記事をご覧ください☟

 

で、US盤UK盤、こうも違うかというほど音の印象が違う。

 

UK盤、エコーが掛かっている感じは全く無い。

そして音が引き締まって、濃密な印象だ。

 

ジョンのよく動くベース、キースの激しいタム回しの輪郭が明瞭で、くっきりとよく聴こえる。

これはなかなかに素晴らしい音だ。

 

 

B面の"Don't Know Myself"US盤では"I Don't Even Know Myself"と表記されている)、これまた鮮度が高く、かなりの良音。と言うか、音そのものが綺麗で、これ以上無いほど良い音だ。

今まであまり気にしたことの無い曲だったが、良い音だと、曲自体も良く思えてくる。

 

 

ということで、"Won't Get Fooled Again無法の世界" のUK盤、良い音で至極満足。

 

 

但し、一点だけ惜しいと思うことがある。

それは、A面"Won't Get Fooled Again"を真っ新な溝の状態で聴いてみたかった、ということ。

 

中古レコードでそのようなことは殆ど無理な相談なのだが、B面"Don't Know Myself"はあまり聴かれていなかったらしく、溝がほぼ真っ新のような感じで、このためこれ以上無いほど良い音がする。

 

それに比べて、A面"Won't Get Fooled Again"は表面に傷は無いものの、かなり聴き込まれていたのだろう、溝の傷みが否めず、音に雑味が入ってしまっている。

もし B面と同じ状態で聴けたらどれほどの音がするのだろうと思うと惜しいな、と。

まあ、無いものねだりではある。

 

 

だがここで、こんな情景が浮かんだ。

ロンドンのレコード店でこのシングル盤を買った青年がいた。

"Won't Get Fooled Again"に感銘を受けた。

ピクチャースリーヴを壁に飾り、毎日のように聴いた。

溝に傷みも出ようというほど繰り返し聴いた。

この青年はその後どのような人生を送ったのだろう。

 

 

と、そんなことを思いながら聴くと、この盤にまつわる歴史が垣間見れるようで、何となく感慨深い。

 

まあ、そんなこんなで、お気に入りの盤である。

 

 


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1段目左から:UK盤、ドイツ盤、ユーゴスラビア

2段目左から:イタリア盤、スカンジナヴィア盤、イスラエル

3段目左から:フランス盤、ベルギー盤、日本盤

 

 


長きにわたって送りしたザ・フーシングル盤シリーズ、これにて終了。

 

 

最後に採り上げたものを記載しておこう。

 

My Generation / Shout And Shimmy

Happy Jack / I've Been Away

Magic Bus / Dr Jekyll & Mr. Hyde / Someone's Coming

Pinball Wizard / Dogs Part Two

The Seeker / Here For More

Summertime Blues / Heaven And Hell

Won't Get Fooled Again / Don't Know Myself 

Let's See Action / When I Was A Boy

Join Together / Baby Don't You Do It

Relay / Waspman

5.15 / Water

The Real Me / Doctor Jimmy

 

 赤字は特に好きな曲。

 青字はもろに捨て曲…